彩花の騎士
ストーリー 60

同4月30日(祝日)、午前中。

【学校:陸上部 部室】


それほど広くない室内で、ワイワイと雑談しながら
ユニフォームに着替える、十数名の陸上部の部員達・・・


 陸上部部長「―――・・・明後日?、随分急な話ね」
 ユエ「すみません」

早々に着替えを済ませたユエが、着替え途中の部長と話をしている・・・


陸上部 部長『早野 キヨミ』、3年生。
赤茶色の短めのポニーテールに、小麦色の肌、
大袈裟過ぎない引き締まった筋肉と、170cm近いスレンダーな長身は
絵に描いたような美人アスリートだ。


 早野「別に月見(ユエ)が謝る事じゃないでしょ(^^;)。
    防衛団あってこそ、アタシらは走れるんだし」
 ユエ「部長・・・」

 早野「それに風真さん(マキ)直々のトレーニングなら
    アタシが受けたいぐらいよw」あの俊敏性・・・惚れ惚れするわ・・・

 3年生部員「なになに?何の話?」

2人の会話に、隣で着替えていた3年生部員が入ってくる・・・

 早野「ん?、月見が明後日から少し休むって話」
 3年生部員「え何?旅行?」GWだし

 ユエ「防衛団で合宿をする事になって・・」

 3年生部員「マジ!?、私も行きたいんだけど!」ユミさんとお近付きになりたい!v
 早野「言うと思ったw」
 3年生部員「そりゃ騎士様の合宿って聞けば!」


 2年生部員達「騎士様の合宿!?」ざわ・・・
 1年生部員達「騎士様の合宿!?」ざわざわ・・・


狭い部室内、声を張ればほぼ筒抜け、一瞬で広まる・・・
「騎士様」というワードに色めく部員達。

この学園での、騎士様というステータスが現す自然な光景。




・・・




ゾロゾロわいわいと、部室からグランドに出てくる陸上部の部員達・・・

その中心には、盛り上がった熱気にまとわりつかれ、苦笑いのユエの姿


 早野「ホラ1、2年!、もぉ月見を解放してやれ!。
    アップはじめるわよっ!!」

 1、2年生部員達「は〜い・・・」
 ユエ「・・・」

早野部長の声に、ユエを騒がしく取り巻いていた1、2年生部員達が
しぶしぶ散らばる・・・


 ユエ「・・・・・」

ホッとした表情のユエが、早野部長に目線を向けて
小さく頭を下げると

軽く頷いて返す早野部長・・・



 ユエ(・・・・・・・・・・うぅ〜まただ・・・・・こういう時、この後・・・
    次に部長の顔を見る時・・・変に意識しちゃう・・・・・///;)


準備運動をしながら、どこか顔が赤いユエ・・・


 ユエ(このドキドキ・・・ホント厄介だよ;)



騎士様だからといって、過剰に特別扱いしない早野部長の対応やフォロー・・・

それは純粋に陸上が好きでこの部に入ったユエにとって
とても救われるものだった。

それでいて陸上選手としても目標である憧れの先輩・・・
ユエの中に、彼女に対して特別な気持ちが芽生えても不思議ではなかった。







・・・・・







 早野「―――――・・・じゃあラスト一本終わったら、お昼休憩ね!」
 部員達「はい!」


 ユエ(ダメだダメだ!集中集中!、午前中ろくなタイムしか出してない!!)
気合いを入れてスタートラインに付くユエ


 早野「月見!、最後ぐらい良いタイム出しなよ!」

 ユエ「っ!?///;、は、はい!!;」
急激に押し寄せる緊張感・・・


本来ならポジティブに受け入れられるその激も

今の、過剰に早野部長を意識しているユエには
自らの不甲斐無さを恥じる言葉に聞こえてしまう・・・。







・・・







昼:2時30分過ぎ・・・【陸上部 部室】。

本日の練習を終え、制服に着替える部員達・・・・・


 ユエ「・・・はぁ・・・・・」
小さく溜め息

 早野「月見、今日は随分と調子悪かったな?」
 ユエ「すみません・・・;」

 早野「最近時々あるよな?、前に比べて斑が出たというか・・・」
 ユエ「うっ・・・;」
   (それ、部長にドキドキしてる日の練習です・・・・・;)


 2年生部員「騎士様もやってますから仕方ありませんよ!」
 1年生部員「そうですよ!、ユエ様!気にしちゃダメですよ!」
 ユエ「さ、様はちょっと・・・;」

 早野「ホントお前達は月見に甘いよな・・・」

 ユエ(その甘くない部長の、当たり前の態度に
    アタシのメンタルは揺さ振られてるんですけど・・・;)



 3年生部員「―――・・・いや、あの斑は・・・・・・・ズバリ恋煩いね!」ニヤリ☆

 部員達「えぇぇぇぇぇっ!?!?!!!!!」
 ユエ「えぇぇぇぇぇっ!?!?!!!!!;」


 3年生部員「って本人が回りと一緒のリアクションで驚いてる時点でないかw」ハハ

 早野「アハハないないw
    月見はアタシと一緒で、恋愛にうつつ抜かしてる暇あるなら
    0.1秒でもタイム縮めたいような陸上馬鹿よw」アホらしい

 3年生部員「よね〜w」


 ユエ「・・・・・そ・・・そうですよ・・・(^^;)」







・・・・・







まだ陽も落ちていない3時前、朝からの部活の練習を終え
あえて一人で歩く帰り道・・・・・


 ユエ(―――――・・・・・・・・
    ・・・部長の口から直に聞くと・・・結構くるな・・・・・;)


 ユエ(・・・恋愛にうつつ・・・か。ホントその通りですよ・・・
    練習に影響でてちゃ、部長もガッカリですよね・・・・・)




立ち止まり空を見上げ、思い出す
先程の部室での、その後の会話・・・


 早野『―――・・・月見には早く本調子に戻ってもらわないと。
    ライバル不在じゃ張り合い出ないわ!』

 ユエ『アタシがライバル!?・・・ですか?』
 早野『そうよ!』何を今更

 3年生部員『キヨミのタイムが急に上がったの
        ユエが入部してからだもんねw』負けず嫌いめ
 早野『アンタは他人事ね;』

 2年生部員『あ!、私もユエさんに少しでも追い付きたいと頑張ったら
        タイム上がりましたよ!』
 早野『分かる?。何かこぉ・・・月見にはそういうのがあるのよ!』

 ユエ『は、はぁ・・・;』

 早野『そんなわけだから月見!
    悩みあるなら相談乗るし。またいつもの走り、頼むわよ!!(^^)』







―――――・・・ユエは視線を空から前に戻す・・・

早野部長の笑顔が強く印象に残っている・・・

 ユエ(・・・・・相談って部長;。・・・無自覚って結構・・・罪なのね(=v=;))

 ユエ(アタシもコウに対して昔、そういう感じだったと思うと申し訳ない;)







・・・・・・・・少し間を置き、ユエの口元が小さく微笑む・・・・・。






 ユエ(―――――・・・・・・・うん・・・でも何となく分かってた・・・
    アタシの初恋はこうなるって・・・・・。)

 ユエ(コウと仲直りした時、どこかで感じてた後ろめたさ・・・・・)



目線の先に広がるのは、
連休中で人通りも車通りもない、静かな開けた道・・・・・



 ユエ(・・・・・部長へのこの気持ちは・・・・・今は持ってても、告げても
    お互いの、走る事への、重荷になるだけだと思う・・・・・)



ユエは肩掛けしているバッグを
タスキ掛けに持ち替え、紐の長さを短く調整する・・・



・・・そして、クラウチングスタートの体勢に入る・・・・・



 ユエ(・・・・・やっぱり恋とかアタシにはまだ早いや(^^;))



誰もいない直線の道を走り出すユエ・・・



 ユエ(・・・・・この気持ちは・・・今は置いて行こう!!)



どこか吹っ切れた表情のユエは、
ぐんぐんとスピードを上げる・・・・・




 ユエ(だってアタシは!、走ることが何よりも好きだから!!)











・・・・・そんなユエの姿を、
道なりにある公園で遊んでいたキッズ達が目撃する・・・

 少女A「・・・み、見た?;、今のお姉ちゃん・・・・・」
 少女B「うん、めちゃめちゃ速かったね;」風になってた・・・

 少女C「私の計算だと、時速120kmは出てたわね・・・アレは」フフッ
 少女A&B「そんなバカなっ!?(@□@;)」計算し直せ!

 少女A「てか超カッコ良くない?」
 少女B「うんうん!!」
 少女C「あの制服・・・やっぱり通うなら三枝ね!b」
 少女A&B「ね!!」


【小学生 豆知識:足が速いと何故かモテる。】



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by: へろ
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