彩花の騎士
ストーリー 53

4月30日。“合宿”のメールを受け取った翌朝。

昨夜、子供の頃の憧れの騎士様『渡瀬マコト』が夢に出て来たこともあり
少し高揚した気分で朝のジョギングを終えたコウ・・・


部屋に戻り、気分良く朝食のトーストを食べながら
適当にテレビのチャンネルを変えていると・・・

ケータイに着信。

 コウ「朝から誰だろ・・・?」


着信表示には【お母さん】。


 コウ「・・・もしもし?」
 コウ母の声『あもしもし、コウ?、おはよう』

 コウ「おはよ」
 コウ母の声『昨日の合宿の件ね、お父さんも行っていいって』

 コウ「ホント!ありがとう!」
 コウ母の声『お母さん達がいないからって、はしゃぎ過ぎないようにね!』

 コウ「大丈夫だよ〜」
 コウ母の声『それとちゃんと食べてる?』

 コウ「食べてるって」
 コウ母の声『本当にぃ〜?、好きな物ばっかり食べてるんじゃないの?・・・―――』

・・・そんな感じから、娘を心配する母の電話が長々15分ほど続き・・・


ピッ。通話終了


 コウ「・・もぉ〜・・・(焼いた)パン冷めて固くなっちゃったじゃん・・・」

この年頃には、親の過度な心配は少々煩わしいものである。



そして冷めたパンを口に入れようとした時・・・
再びケータイに着信


 コウ「もぉ!」
若干怒りぎみに、着信相手を確認せずに電話にでる・・・

 コウ「お母さん!」
 電話の相手『ぇ!?・・・と、その・・・すみません。間違えました』

 コウ「っ!?!!!;」
相手が母でないことに、こちらも驚く・・
と同時に、かかってきた相手の声に聞き覚えあり。

 コウ「・・い、イサミちゃん?;」
 電話の相手『!、美里・・先輩の電話ですか?』

 コウ「う、うん!そぉ!、ゴメンね;、私てっきり・・・」
 イサミの声『い、いえ・・・』

 コウ「・・で、どうしたの?」
 イサミの声『・・・・・・・』

 コウ「・・・?」



沈黙。



 コウ「・・・もしもし?」

 イサミの声『・・・・・・・申し訳ありません。
        ・・・・・気の迷いでした。自分からの電話は忘れて下さい・・・』

 コウ「え!?、どういう・・」
コウが聞き返そうとする途中で、イサミ側から電話が切られる・・・




 コウ「・・・・・わ、忘れて・・・・・?;」


 コウ(・・・イサミちゃんの方から電話をかけてくる事なんて珍しい・・・
    っていうか、はじめてだよね!?)

気になったコウは、直ぐさまこちらから電話をかけるが・・・




 コウ「・・・・・・・・・・電話にでんわ・・・」ボソ・・

 コウ「・・とかくだらないこと言ってる場合じゃない!!(@□@;)」

 コウ「これはただ事じゃないと私のシックスセンス(第六感)が言っている!!=3」

気になりだしたら止まらない!、コウは次の手でコンタクトを試みる・・・・・






・・・・・―――――――






20分ほど前・・・・・。


『石橋 家:庭』

屋敷と呼べるぐらいの、昔ながらの大きく立派な和風の一軒家。

庭師が手入れしたような、美しい松の木々が目を引くこの庭で・・・


 男「・・・フンッ!、・・・ハッ!、・・・ムンッ!」


整えられた紳士な髭が似合う、袴姿のダンディズムな中年男性が
木刀で素振りしている・・・


そこに、縁側にやって来たイサミ。
すぐさま正座し・・・

 イサミ「・・・お呼びでしょうか、父上」


ダンディズムな中年男性こと、イサミの父は
素振りを止めることなく、イサミのことも見ずにそのまま話す・・・

 イサミ父「ムンッ!、・・・イサミよ、5月の2日はしっかり開けておるな・・・、フンッ!」
 イサミ「・・・・・・・そ、その事なのですが・・・」

 イサミ父「ムゥゥン!!、・・・どうした?・・・、フンッ!!、・・・何か・・・あるのかっ!」

 イサミ「・・・あ・・いえ・・・・・」
    (・・・お姉様から合宿の誘いを受けたのだが・・・・・・・)

 イサミ父「・・・はっきり言ってみよ!、・・・ムゥゥンッ!!」
 イサミ「・・・・・」

 イサミ父「・・・ハッ!、・・・ムンッ!、・・・フンッ!」
 イサミ「・・・・・」

圧倒的威圧感と、「フンッフンッ」うるさい状況の前に、
何も言えないまま黙り込むイサミ


 イサミ父「・・・ムンッ!、・・・もうよい、下がれ。」

 イサミ「・・・・・失礼します」
一礼して、縁側を後にするイサミ・・・



・・・



『イサミの部屋』

女子らしい物がほとんどない殺風景な部屋で
畳に仰向けで寝転がる・・・

 イサミ(・・・どうしたものか・・・・・)


しばし呆然と天井を眺める・・・




 イサミ(・・・・・・・・・・)




特に何も答えが出ぬまま、何となくケータイを手に取るイサミ・・・




 イサミ「・・・・・」

アドレス帳を見ていく・・・
騎士様同士の連絡用として、とりあえず登録している団員達の名前・・・

 イサミ「・・・・・」
ユミのアドレスのところで止まる指



 イサミ「・・・・・・・・・・駄目だ・・・」
合宿への断わりを伝えようと思ったが、まだ踏み切れずにいる・・・




 イサミ「・・・・・」
次に、ユミのアドレスの下にある、コウのアドレスに目が行く・・・




 イサミ「・・・・・」




ワンクッションでも入れようと思ったのか、
コウへの発信ボタンを押すイサミ・・・




 コウの声『―――・・お母さん!』
 イサミ「ぇ!?・・・と、その・・・すみません。間違えました」

 コウの声『・・い、イサミちゃん?;』
 イサミ「!、美里・・先輩の電話ですか?」

 コウの声『う、うん!そぉ!、ゴメンね;、私てっきり・・・』
 イサミ「い、いえ・・・」

 コウの声『・・で、どうしたの?』
 イサミ「・・・・・・・」



・・・


 イサミ「・・・・・・・」

結局、何も告げずにコウへの電話を切るイサミ・・・


 イサミ「・・・・・・・何をやっているのだ・・・私は・・・・・・・」

そのまま、ケータイの電源すらも落としてしまう・・・・・。







・・・・・―――――――







 コウ「―――・・・あ、ユミ先輩ですか?」
 ユミの声『アラどうしたの?、コウ』

イサミへの連絡手段を知っていそうなユミへ電話をかけるコウ・・・


 コウ「かくかくしかじか・・・」


 ユミの声『・・そうね・・・御自宅の方の電話番号なら・・・』

 コウ「ありがとうございます!」
 ユミの声『ごめんなさいね・・・本当なら班長の私が・・・』

 コウ「いえ!、ユミ先輩は合宿の準備もありますし!」
 ユミの声『ありがとう。・・・頼りにしてるわよ、コウ』

 コウ「は・・・はいっ!」






・・・・・―――――――






再び『石橋 家』。

鳴っている家の固定電話にでる、和装の美しい女性・・・イサミの母である。

 イサミ母「・・・はい、石橋で御座います。」
 コウの声『!?!、あ、あのわたくし・・
       イサミさんと同じ学校に通っている、美里と申します・・・』

 イサミ母「まぁ・・・(^^)」
 コウの声『イサミさんはごじゃいた・・御在宅でしょうか?;』噛んだ;

 イサミ母「えぇ。少し待って下さいね・・・」
 コウの声『は、はい!』
      (うわ〜・・・家電緊張するぅ〜〜〜〜〜(@w@;)ドギマギ)



イサミ母は上品に、受話器の話す方に手を添え・・・

 イサミ母「イサミさん、お電話ですよ」


・・・


ほどなくして、自室のある2階から降りてくるイサミ・・・

 イサミ「・・・なんでしょうか母上?」
 イサミ母「美里さんという御学友からお電話です」

 イサミ「美里先輩から・・・?」
 イサミ母「あら同級生ではなかったのですね・・・」


 イサミ「・・・もしもし」
 コウの声『あ!イサミちゃん!、急にケータイ繋がらなくなったからさ!』


 イサミ「・・・・・・・・。
     ・・・言ったはずです、先ほどの件はなかったことに・・・と」
 コウの声『無理だよ!、ちゃんと理由を聞かないと!』

 コウの声『気になって眠れないよ!、今は寝ないけど!』
 イサミ(・・・・・何を言っているのだこの人は;)


 イサミ「・・・・・・・・。
     ・・・言えば納得してくれますか?」
 コウの声『するする!』


 イサミ「・・・・・」
家電のある場所から去っていく母の後ろ姿を目で確認し、
父がまだ庭で素振りをしていることを耳で確認する・・・


 イサミ(・・・母上はともかく・・・父上には・・・・・・・)


 イサミ「・・・・・・・あの・・・これから会えませんか?」

 コウの声『えっ!?、私と!?』
 イサミ「・・・・・(ーー;)。・・・今、私は誰と話しているのですか?;」

 コウの声『ご、ゴメン;』意外だったからつい・・・


 イサミ「・・・・・」
    (・・・やはり頼りない・・・・・)







・・・・・―――――――







コウとイサミの唯一の共通の場所、『騎士の館』。


バスで来るイサミに合わせ、今日はあえて徒歩でここまで来たコウだが
思った以上に早く到着してしまい・・・

入口前の道路で、律義に待ちぼうけ・・・


 コウ「・・・」


 コウ(・・・イサミちゃん、どんな話するんだろ・・・・・)

 コウ(張り切って出て来たけど、私の手に負えない話とかだったらどうしよう・・・;)

 コウ(ユミ先輩にも言っちゃった手前、何とかしないとだし・・・・・
    いっつも勢い先行型なんだよね、私・・・・・;)感情任せというか・・・


毎度のように、頭の中でぐるぐる考えを巡らせていると・・・


ふと見た足元のアスファルトの隙間から、タンポポが咲いている・・・



そのタンポポの姿は、健気というよりは力強い印象だ。


 コウ(・・・う、うんっ!。
    ここまで来たらあれこれ考えたって仕方ないよね!!)


そう心を決めた直後、
道路の向こう側から歩いてくるイサミを発見する・・・


 コウ(よし、ここは先輩らしくまず空気をほぐして・・・)
と・・・仁王立ちし、腕を組んで大袈裟に胸を張りスタンバイ・・・



 イサミ「―――――・・・お待たせしました。」

 コウ「フッフッフッ・・・よく来たな・・・・・!」ニヤリ・・・
メガネのレンズに光を反射させ、不敵に笑うコウ・・・


 イサミ「はい。」

 コウ「って乗ってよイサミちゃん!?!Σ(@□@川)」私渾身のボケ!

 イサミ「乗る?・・・とは・・・?」
 コウ「い、いやホラ;、私ボスキャラみたいだったでしょ!?;」塔の最上階にいそうな

 イサミ「?。・・・・・入りましょう」騎士の館に



 コウ「・・・・・う、うん・・・・・そだね・・・・・賛成・・・」(=v=;)白目





早速、噛み合ってない2人である・・・・・――――――――――



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by: へろ
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