彩花の騎士
ストーリー 48

4月から5月にかけての最高の気候、清々しい青空と陽気・・・


絶好の行楽日和の休日。そんな中・・


午前11時過ぎ・・・

【三枝女学園:別館 2階「新聞部 部室」】


1年生の腕章を付けた、ショートカット髪にメガネの生徒が1人、
パソコンのモニターをまじまじと見つめている・・・

マウスに乗せた右手がほのかに汗ばむほどに・・・


 1年生「―――・・お、おぉ・・・!」ゴクリ

 1年生「これはこの前、家の近所で“引ったくり犯を捕まえた”時のだ・・・」


彼女が夢中で見ているものは・・・・・マキの写真の数々。



・・・とそこに


ガチャリと、部室に入ってくる人物が2名・・

ヨシコと、同じく新聞部部員の2年生“レイちゃん”こと『白井レイ』、

アグレッシブなヨシコとは対照的な、色白で淑やかそうな少女だ。


 1年生「あ!、部長、白井先輩!、御疲れ様です!」
 ヨシコ「お疲れ〜」
 レイ「御疲れ様」

ヨシコとレイは、手にしたコンビニ袋を手近な机の上に置く・・


 ヨシコ「増田ちゃん、打ち込み終わった?」
 増田「はい!、バッチリですb」

『増田ちゃん』と呼ばれた1年生は席を立ち、パソコンの前をヨシコに譲る・・


 ヨシコ「どれどれ〜・・・ってマキ先輩の写真じゃないコレ;」
 増田「わわわ;すみませんこっちですね(@@;)」

ヨシコの横からマウスに手を伸ばし、カチカチ操作して
ワードで作った文書を開く・・・


 増田「でも部長!、このマキ先輩の写真って、
    この前の引ったくり事件のですよね!」叶街の【※25話参照】
 ヨシコ「えぇ。よく分かったわね」
 増田「私の家の近所なんですよ!」

 ヨシコ「へ〜・・じゃ、現場にいたの?」まだ入部してない頃よね
 増田「それがその日に限って友達と遊びに行ってて!!」増田一生の不覚!

 増田「部長こそよくあの現場にいましたね!」結構裏道ですよ
 ヨシコ「ま、記者の感・・ってやつ?」フッ
 増田「凄い!、尊敬します!!」(☆▽☆)キラキラ

 ヨシコ「あ、いや・・・;」
    (そんな目で見られたら、偶然だったって言い直せないじゃない;)
 レイ「クスクス・・」


 増田「私、この事件がキッカケで
    “突撃班”のファンクラブに入ったんですよ!(>▽<)」これ会員証!
 ヨシコ「身近なアイドル兼ヒーロー、まさに騎士様って感じねw」


 増田「マキ先輩カッコイイですよね〜(=v=)」
 ヨシコ「まぁ〜マキ先輩、ユミ先輩、王子(カヲル)は
     ウチのアンケートでも人気トップ3だしね・・」

ヨシコは会話しながらも、パソコンの文書をチェックする・・


 増田「・・・そこなんですよね〜;」
 ヨシコ「どした?」急にトーン落ちたわね

 増田「・・いえ、メジャー過ぎるというか・・・王道というか・・・・・
    記者としてはもっと“通”な感性も持ちたいんですよ!」増田的には

 ヨシコ「アハハ、解るわ〜それw」


 レイ「フフ・・」
レイはそんな会話を聞きながら、コンビニ袋から買ってきたジュースと菓子パンを取り出し
ヨシコと増田に手渡す・・・

 ヨシコ「サンキュ♪」
 増田「あ、恐縮です!」ペコリ


 レイ「・・ならトキエちゃんとか取材してみたらどうかな?」丁度、突撃班だし

 ヨシコ「トキエか!」なるほど
声を上げながら、バリッ!とメロンパンの封を開けるヨシコ


 増田「さ、佐伯先輩(トキエ)ですか?
    ちょっと恐い感じじゃありません?;」近づいたら怒られそう


 ヨシコ「ムグムグ・・・。そこよ!、それだわ!。決めた!!」
 レイ「ヨッシー飛んでるよ;」食べカスが・・・

 ヨシコ「あ、ゴメン。
     次号に増田ちゃんのコーナー作る予定だったから・・
     これは良い機会だわ!」

 増田「?」

 ヨシコ「増田ちゃん!、今からトキエの取材に行ってきなさい!b」

 増田「えぇぇぇ!?;」そんな急に

 ヨシコ「そうねぇ・・・“ワル系騎士様の休日”って感じのがいいわね・・・フフ。
     レイちゃん、トキエに連絡できる?」

 レイ「今してるとこ・・」
と、既にケータイ片手に発信中・・・

 増田「ちょ、ちょっと部長?、白井先輩?;」何ですかその手際の良さ・・


 ヨシコ「騎士様との人脈を作るには
     まずこっちから強引に行かないとダメなのよ☆」新聞部の教え1






・・・






 トキエ「―――・・はぁ!?、取材だぁ?」

黒のタンクトップ姿のトキエは、肩に掛けたタオルで汗を拭きながら
ケータイに応対している・・・。

場所はジムのようだ。

 トキエ「―――・・アタシなんかに何聞くってんだよ?」

バシバシドンドンと、何かを叩く回りの音が騒がしいため
声のボリュームも自然と大きくなる・・・




 増田(ほら〜・・・何か怒ってるっぽいし;)
新聞部側からは、トキエの居場所の状況が解らないため、
ケータイから漏れる、荒れた声だけが際立つ・・・




 レイ「―――・・じゃあ、よろしくね。」
ピッと、電話を切る・・・


 ヨシコ「どうだった?」

親指と人差指で丸を作って、OKサインで応えるレイ

 レイ「叶街の『鬼瓦ジム』にいるから好きにしてって・・
    1年生のタツミさんもいるそうよ」

 増田「えぇ!?、あの廃れたジムにですか!?(@□@;)」←地元民

 ヨシコ「な〜に言ってんの、
     あそこは代々の突撃班の騎士様が通ってる伝説のジム、
     “龍の穴”みたいな修行場所よ」昔の格闘アニメの・・

 増田「し、知らなかった・・・;」
 ヨシコ「まぁあの人が寄り付き難い雰囲気を
     逆に利用してるのもあるんだけどねw」行動場所をチェック!新聞部の教え2







・・・・・








叶街。商店街奥の2階店舗にある『鬼瓦ファイティングジム』。


 トキエ「―――・・ったく、騎士様だの何だの、好きだな〜アイツ等も・・」

通話を終えたケータイを、肩に掛けていたタオルと共に
手荷物のバッグの上に置き・・

軽く腕のストレッチから再開するトキエ・・・


 リサ「・・・と言いつつ、ちゃんと承諾をするトッキーであった。」

トキエの手荷物が置かれたすぐ横のベンチで
仰向けに寝そべっているリサが一言・・・

その手には携帯ゲーム機をプレー中。


 トキエ「てか何でお前がここにいるんだよ;」通話中に来たかと思えば・・・

 リサ「だって暇なんだもん。
    サチは“ヴァルオケV”するから家に篭るとか言うし、
    外は連休でどこも混んでるし」グスン・・

 トキエ「でジムまで来てゲームとか意味わかんねぇーし;」



 ゲーム機「う゛わ゛ぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」


リサの携帯ゲーム機の画面上で、筋肉ムキムキのアマゾネス(女戦士)が崩れ落ちる・・・


 リサ「・・あぁ〜・・トッキーのせいで1機やられた・・・」

 トキエ「寝転がってやるからだろ。
     おケイさんがもしここにいたらお前、確実にぶっ飛ばされるぞw」
 リサ「ひぃぃやめてよ!?;」冗談でも

ガバッ!と、ベンチから起き上がるリサ

 トキエ「アハハ!。そうそう、せめて座ってやれw」
そう言いながらストレッチを終え、リングに向かうトキエ・・・

 リサ「ぶ〜〜〜(=3=)」





 トキエ「・・っし!、やるか!!」
先にリングに上がっていたタツミと、拳同士を軽く当て・・

スパーリングを開始する。






その様子を、ベンチの上で三角座りをし、大人しく眺めるリサ・・・

 リサ(・・う〜ん・・2人とも良い腹筋してるにゃ〜・・・♪)(=ω=)眼福眼福



そんなリサの横に・・・

 鬼瓦「・・・フェッフェッフェッ・・・・・」
怪しい笑いをしながら音も無く現れる鬼瓦

 リサ「わぁっ!?、おじいちゃんいたの!?!;」


相変らず、インチキ臭漂う丸いサングラスをかけた小さな老人。


 鬼瓦「フェッフェッフェッ、おったよずっと・・・」
 リサ「全然気付かなかったよ!!」
 鬼瓦「気配を殺すのもこれ、日々の修行の一つじゃ」

 リサ「無の境地ってやつだね!」ニッb
 鬼瓦「じゃな」ニカッ☆


 トキエ(・・・リサとジジィって妙に気が合うんだよな;)
スパーリング中に、チラッっとリング外の2人に目線を向ける・・

その瞬間、タツミの重いパンチが斜め上から振り下ろされる


 トキエ「!?」
反射的に紙一重でそれをかわすトキエ


 トキエ「わりぃっ」
    (お前相手に余所見はなしだな!)
よけた流れをそのまま利用し、上段回し蹴りを繰り出す・・

 タツミ「・・・!!」
そのトキエの蹴りをガードし、腕にビリビリと伝わるダメージに
小さな笑みを浮かべるタツミ・・・



それはまさに、拳で語り合う、熱く純粋で硬派な乙女達の姿。





 リサ「・・やっぱ突撃班はカッコイイよね〜v」
 鬼瓦「フェッフェッフェッ・・・お主も好きじゃの〜」珍しい娘じゃて
 リサ「あっしの格ゲー魂にリアルファイアー点火だよ!♪」


そんなトキエとタツミのスパーリングを眺めつつ・・・


 リサ「・・・でもさ、トッキーって見かけによらず真面目だよね」見た目ヤンキーなのに
 鬼瓦「ありゃマキのお陰かの〜・・・昔は酷いじゃじゃ馬娘じゃったわい;」

 リサ「フウマ先輩の?」
 鬼瓦「そうじゃな・・・何年前だったかの・・・
    あやつが中学生だったか・・・――――――――――」











―――――・・・3年前。

トキエ、中学2年生。

場所は『並川街』、夕日で赤く染まる河川敷・・・・・。


 トキエ「うぉらぁぁぁぁぁーーー!!」


ドゴッ!っとトキエの拳に殴られ吹っ飛ばされる不良少年A。

しかし、トキエを取り囲む不良達の人数はまだ減らない・・・その数、残り7人。




 リサ『ストップ!ストップ!!(>□<;)』
 鬼瓦『なんじゃ?』回想中に・・・

 リサ『何で中学生の不良が鎖鎌振り回してんの!?;』恐すぎるよ!
 鬼瓦『いやそっちの方がより迫力があると思っての・・・』

 リサ『ないない!。てかモヒカン頭で袖なし学ランって何!?
    そんな世紀末な学校この辺にないよ!!』(>□<;)ジタバタ
 鬼瓦『じゃったかの〜・・・』

 トキエ『(賑やかだなアイツ等・・・;)』気が散る

 鬼瓦『まぁ何じゃ、細かい事は置いといて・・・回想を続けるぞい・・・―――』






ジリジリと取り囲む円を縮めてくる不良達・・・

 トキエ「群れねぇと何もできねぇのかよっ!!」

そんな事を叫びながら、前方の不良少年Bを飛び蹴りで倒し
囲まれた状況をすぐさま崩す・・

一人での闘いに慣れた様子のトキエ。







・・・最初はただの、思春期特有の、悪い事にちょっと憧れる程度のことだった・・・

授業にもあまり付いていけなくなり、
小学生から中学生に上がるにしたがって、回りが少しずつ大人ぶり始めた中
その変化に適応できなかっただけの・・・

それを1年も続ければ、学校じゃ立派な爪弾き者となり、煙たがられる存在だ。

まして真面目な校風の学校では、同種の人間もおらず、一匹狼の不良少女が
荒んだ心のまま外をうろつけば、このような状況は容易に出来上がる・・・。






 トキエ「・・・数だけかよ」へっ

 不良C「なっ!?、おい!、先輩達呼べ!」
 不良D「お、おぅ・・」
ケータイ片手に増援を呼ぶ不良D・・


 トキエ(おいおいマジか;、これ以上増えんなよ;)言わなきゃよかった;


 不良D「あ先輩っスか!、今ケンカしてんスけど!・・・先輩?、先輩?・・アレ?」


一瞬、トキエも含めた場の人間が全員、不良Dを見る・・・


 不良D「???」
右手を見ると、握っていたはずのケータイがない・・・


 不良C「何やってんだよ!」エアー通話かよ!
 不良D「あれ?、アレ??;」



 ???「・・・少女一人に男が寄ってたかるとは・・・・・」

不良達の後方から声・・・・・皆がそれに注目する。



そこには・・・スポーツウェアを着、フードを被った何者かが、
不良Dのケータイを握って立っている・・・


 ???「恥を知れっ!!!」
ドバキィッ!!と、右手の握力だけでケータイを握り潰す・・・


 一同「っ!?!!!」
   (えぇぇぇーーーーー!?(@□@;)凄ぉっ!!)

 不良D「お、俺のケータイぃぃぃ!!!!!」かーちゃんに怒られる!(〒□〒川)



 不良C「・・な、何だテメェは!!」

そう叫んだ次の瞬間・・・



不良Cはうねりながら宙を舞い・・そのまま川に、頭から突き刺さるように落下・・・・・
犬●家の殺人現場の完成だ。



 ???「・・頭を冷やすがよい・・・」

“謎のフードマン”がした事であろうが、誰もその攻撃を目で認識できず
次に皆がその存在に気付いた時には

トキエと不良達の間に、ユラリ・・と瞬間移動をした如く立っている。



 不良E「・・や、やべーってコイツ!!;」
その言葉が合図のように、恐怖を覚えた残りの不良達は
蜘蛛の子を散らすように逃げていく・・・



 ???「・・・倒れた仲間を置き去りにするとは・・・」怪しからぬ




 ???「・・・さて、大丈夫だったか?」
トキエを気遣い、近づく謎のフードマン・・・

 トキエ「横から人の獲物とってんじゃねぇーよ!!」
それに対し、相手の顔面スレスレで止める挑発パンチで応えるトキエ


その拳の風圧で、フードマンのフードが脱げる・・・


 トキエ「!?」
    (・・・女?)


てっきり男だと思い込んでいたフードマンの素顔は
切れ長の瞳をした少女・・・・・

当時の『風真マキ』である。


 マキ「・・・ふむ、良い拳をしているな・・・」
 トキエ「んだとぉ?」

 マキ「だが・・・。
    どうやら反省すべき人間はもう一人いたようだ・・・」
 トキエ「?」


 マキ「喧嘩両成敗っ!!」



 トキエ「・・・っ!?!」
トキエが見る景色が一瞬ぐるりと回ると、次には空を見上げていた・・・

目にも止まらぬ早さで、マキに投げ飛ばされたという感覚すら解らぬまま


 トキエ「っ痛・・・」
少し遅れて背中に痛みを感じると、自分の顔を覗き込むマキに視線を向ける・・・


 トキエ「・・・何なんだよ・・お前・・・」
 マキ「風真マキ。私の名だ・・・」
 トキエ「・・素直に名乗ってんじゃねぇよ・・・」


 マキ「先ほどの拳・・・・・貴様は強い。」
 トキエ「・・・」


 マキ「その力をもっと有効に使え。貴様の力は人のために使えるものだ」



 トキエ「っ!?。・・・・・・・・・・くだらねぇ・・・」


ただ敬遠されるだけだった暴力的な力を認めてくれた、はじめての言葉。









―――――――・・・・・







 鬼瓦「―――・・・まぁなんじゃ、それ以来
    マキに再戦を挑むような口実を付けては、ここに通うようになっての・・・」

 リサ「何その激燃えな熱血展開っ!!!!!」(☆▽☆)キュピーン!

 鬼瓦「今は卒業した突撃班の娘達にも、
    三枝に入るための勉強を見てもらっとったの・・・」一時期はここが塾のようじゃったw

 リサ「ヤバイよおじいちゃん!、そんな話聞いたらあっし
    フウマ先輩とトッキーにますます惚れちゃうじゃんか!!」(>▽<)くぅー!

 鬼瓦「フェッフェッフェッw」




・・・




 増田「―――・・・ご、ゴメン下さ〜い・・・・・」そろ〜り・・・

 リサ「・・を!、誰か来たみたいだよ?」

 鬼瓦「フェッフェッフェッ・・今日は満員御礼じゃな」
 リサ「少なっ!?;」4人で満員なの!?




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by: へろ
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