彩花の騎士
ストーリー 47

同日、午後3時40分頃・・・


『ニコニコライフ』。

彩花街で最も賑わっていると思われる場所・・

総合スーパーとテナントが合わさった
3階建ての郊外型“大型ショッピング施設”だ。



「♪品質ニッコニコ、お値段ニッコニコ、みんなの暮らしもニッコニコ〜
   ニッコニ〜コ〜ラ〜イフ、ニッコニ〜コ〜ラぁ〜〜〜イフ♪」



軽快なBGMに合わせ、脳内に刷り込まれるような単純な歌詞の歌が流れる店内・・・



食料品コーナーにて、いくつかの野菜と肉が入ったカゴを持って歩くスミと
それに同行するタエコとスズナ・・

 タエコ「・・ニッコニ〜コ〜ラ〜イフ♪」
店内ソングにノって、サビを口ずさむ

 スズナ「フフ、つい歌っちゃいますよね(^^)」
 タエコ「サブリミナル的なのが混ざってたら恐いわね!、コレ!w」ガハハ

 スズナ「(タエコ先輩、声大きいです・・;)」店員さんこっち見てますよ;
 タエコ「アハハ!、そぉ?w」


と、会話に入っていなかった先頭を行くスミが振り返り・・

 スミ「・・ねぇ?、シチューだけだと絶対お腹空くよね・・・?」

 タエコ「って当ったり前じゃない!、2000%確定よ!!=3」

 スミ「・・・(==;)」そんな全力で・・今さっきゴキゲンだったのに;


 スミ「でもコウの部屋の調理道具の少なさを考えると・・・」もう一品は・・・
 タエコ「逆に大きい鍋を持ってたフミコも凄いけどねw」一人暮らしで

 スズナ「・・あの、パーティー用のお惣菜セットとかどうですかぁ?」

 タエコ「お!、い〜ねぇ〜」
 スミ「そうね、それなら予算範囲内でいけそう♪」

 タエコ「でかしたスズナ!」
 スミ「うん(^^)」

 スズナ「テヘヘ・・」照れ



本日はコウのアパートに、スミとタエコが遊びに・・・というだけの予定だったが・・

午前中の“ゲームショップの件”でスズナが加わり・・・

その後、夕食もついでに・・という流れから、
コウの部屋の隣に住む、フミコに鍋を借りに行った事から、彼女も加わり・・・


現在、5人は『ニコニコライフ』に買い出しに来ている。




・・・




エスカレーターに乗って、上のフロアへ向かうコウとフミコ・・・

 フミコ「・・・あの先輩・・」
 コウ「ん?」
 フミコ「私達は行かなくてもよかったんですか?」
 コウ「大丈夫大丈夫(^^)
    ホラ、あんまりゾロゾロみんなで歩いてもさ・・w」
 フミコ「・・なるほど」

 コウ(料理下手な私が行っても役に立たないというのは・・・言わないでおこう;。
    ・・付き合わせてゴメンね、フミコちゃん・・・(=v=;))




『ニコニコライフ:3F』

主に雑貨や家電、本屋、玩具、ペット、キッズゲームコーナーなど
食品以外の物を取り扱っているフロア。


特にあてもなくブラブラ歩くコウとフミコ・・・


 コウ「――・・あそうだ、シャーペンの芯買っとかないと・・」

そんな感じで文具コーナーをうろうろ・・・




 コウ「――・・このお菓子のクレーンゲームやるんだったら、
    下で買った方が絶対安いよね・・・(^^;)」
 フミコ「ですね;」

キッズゲームコーナーをうろうろ・・・




 フミコ「――・・先輩、お鍋売ってますよ」
 コウ「フミコちゃんのいじわる〜w」バシバシ
 フミコ「クスクスw」痛いです;

キッチン用品コーナーをうろうろ・・・




・・次に向かったのは、本屋コーナー・・・。

入口付近に平積みされた、漫画雑誌の数々を眺める2人・・

 コウ「・・・」

手に取ったのは・・
通称“乙女のバイブル”、少女向けの月刊漫画雑誌『ディアオトメ』。


しかし立読みしようにも、付録が多い雑誌のため
紐で縛られている・・・


 フミコ「・・・買うんですか?」
 コウ「う〜ん・・・・・(==;)」悩む・・付録、私の好きな漫画のだ・・・




・・・そんな2人を見る視線・・・・・


漫画雑誌コーナーの先、こ洒落たファッション雑誌コーナーで
立読みをしつつも、集中できずにこちらをチラチラ気にする素振りの少女・・・


 フミコ「・・あ・・・」
 コウ「・・ん?」

 少女「!?」

その少女に気付いたコウとフミコ・・



 コウ「・・・カナコちゃん?」



 カナコ「・・・あら、奇遇ね・・」
まるで「アナタ達の事なんて気付かなかったわ」的な余裕のリアクション・・


 コウ「うん!、ホント!」奇遇だね
 フミコ「・・・・・」
    (桐原先輩の方が先に気付いてた気が・・・;)


ファッション雑誌を棚に戻し、こちらに歩いてくるカナコ・・

 カナコ「・・相変らず仲が御宜しい事で、お二人さん」
少し皮肉を込めるも・・

 コウ「へへw」

 カナコ「いや素直に受け取り過ぎだから;」へへ・・って

 コウ「?」(・v・)ぱちくり
 フミコ「ブフッ!ww」


 カナコ「こらフミコ;」
 フミコ「す、すみません;」

 カナコ「まったく・・・で?、2人して何見てるわけ?」
そう言いながら、コウが手に持つディアオトメを見る・・


 カナコ「はぁ?、まだそんなの読んでるの?、ガキねぇ〜」やれやれ
 コウ「い、いいでしょ別に!」ムッ


 カナコ「アタシなんて“ヒミツの花園荘”終わってとっくに卒業したし」
お決まりの上からドヤ顔



 コウ「・・・ぇ?(・▽・;)」

 カナコ「・・何よ?」その顔


 コウ「いや・・その・・・・・」
 カナコ「・・・?」



 コウ「・・ヒミツの花園荘って・・先月連載終わったばっかり・・・だよね?」

 カナコ「うぐっ・・;」しまった墓穴を・・



 コウ「・・カナコちゃん!!」(☆v☆)bキュピーン
目を輝かせ、親指を立ててグッドサインを全開で向ける

 カナコ「やめなさい、それ;」同士よ!みたいな・・・


 コウ「な〜んだ〜、カナコちゃんも読んでたんだ〜♪」
 カナコ「い、今は卒業したのよ」


 コウ「花園荘おもしろかったよね〜(^^)」
 カナコ「別に。まぁまぁなんじゃないの」プイッ


 コウ「でも小春と千夏の話がさ・・」
 カナコ「うっさい!;」こんな人目が多い場所でグイグイ来過ぎよ


 フミコ(・・ダメだ・・私、このお二人の噛み合わない感じ・・・凄い好きだ・・ww)
顔を背け、肩を振るわせ声を殺して笑うフミコ・・




・・と、そこに・・・・・




ピロリロリン♪、ピロリロリン♪

ケータイの着信音・・


 コウ「・・あ、ちょっと待ってね」電話だ

 カナコ「別に何も待ってないわよ;」アンタが一方的に喋ってただけでしょ


手にしたままのディアオトメを戻し、ケータイに出るコウ・・

 コウ「もしもし・・?」

 タエコの声『200円足りない!』

 コウ「え???」
 タエコの声『唐揚げ超欲しいんだけど予算オーバーなのよ!』

 コウ「そ、そう?」
   (タエチー声大きい・・・;)
ケータイを少しだけ耳から離す・・

 タエコの声『どうする!、唐揚げは外せないよね!』
 コウ「う、う〜ん・・」
   (よっぽど食べたいんだね・・・)



 カナコ「タエコね・・・;」ここまで声聞こえてるんだけど

カナコはフミコに視線を移し、現状説明をしろ・・という合図を送る

 フミコ「・・今、下で夕飯の買い出しをしてもらっています」
 カナコ「で、アンタ達はここにいるわけね」
 フミコ「はい」コクリ

それで大体を把握したカナコ・・。
1ヶ月とはいえ、日々の狙撃班での訓練で
この2人の間には、感覚的なやり取りが出来上がりつつある。



 コウ「――・・そうだ!。
    カナコちゃん!、ウチで晩ご飯一緒に食べようよ!」
 タエコの声『え?何?、カナコそこにいるの??』

 カナコ「はぁ!?」





・・・





『ニコニコライフ:1F』

食料品コーナーの一角、お惣菜売り場。


スミ、タエコ、スズナが
他のお客の邪魔にならない程度に立ち話中・・

 タエコ「――・・お!、来た来た」


そこにやって来たのはコウ、カナコ、フミコ・・


 タエコ「待ってたわよ、唐揚げの女b」
 カナコ「誰が唐揚げの女よっ!!」くわっ!

 フミコ「ゴホッゴホッ!w」
笑いを誤魔化す咳・・

 コウ「大丈夫?」
 フミコ「は、はい;」
    (先輩のグループと絡む桐原先輩が面白カワイイ・・・;)



 タエコ「1人500円よ」割り勘

 カナコ「まったく・・」
ブツブツ言いながらも財布の小銭入れを覗くカナコ・・

 カナコ「・・お釣ある?」小銭ないわ
 タエコ「あるよ」


 コウ「・・そういえば前にもこのメンバーでご飯食べたよね?」
 スミ「コウとカナコさんがもめた後にね(^^;)」学校の食堂で

 コウ「そうだった・・・(=v=;)」あの時はお騒がせしました・・

 スズナ「でも今日は石橋さん(イサミ)がいませんね・・」

 コウ「そっか・・
    今度また誘ってみなきゃ(^^)」
 フミコ「・・・」










・・・・・・・










『アパート:コウの部屋』


 カナコ「――・・このテーブルで6人は無理でしょ!;」

明らかに部屋の許容人数を超えているうえ
小さいテーブルに少々御立腹のカナコ

 フミコ「私、部屋からテーブル持ってきましょうか?」
 カナコ「そうしなさい」
 コウ「ありがとうフミコちゃん」

 スズナ「あ、私も手伝いますぅ」

コウの部屋を後にするフミコとスズナ・・


 タエコ「ほいじゃ〜アタシ達はシチューの準備に取り掛かりますか」
 スミ「そうね。コウとカナコさんは出来上がってるの(お惣菜)並べておいて」

 コウ「うん」
 カナコ「はいはい」



・・・



準備をしながら適当な雑談・・

 カナコ「―――・・へ〜・・。
     じゃあアンタ達3人、小5(小学5年)からの付き合いか」もっと早いと思ってた

 コウ「そう・・あれは運命的な出会いだった・・・」(=▽=)うっとり

 タエコ「いやいや全然だし;」
 スミ「うっとりする場面なんて一つもなかった気が・・・(^^;)」








・・・・・――――――――








・・・・・それは溯ること、6年前の出来事・・・。


 コウ:(=v=)oO○(ポワンポワンポワンポワンポワワワワワ〜〜〜ン・・・・・)
 カナコ「え!?、何?、今から回想入るの!?;」






コウ、“小学5年生”の春。


2年に一度のクラス替え・・

今度こそと期待していた幼馴染のヨシコとは、また違うクラスになり・・・

それ以外の、前学年で仲が良かったクラスメイトとも離れ離れ・・・

知っている子はいたが、知っている程度・・・



ほとんど真っ白な状態での新学年・・・。




そんな頃に行われた体育の授業・・

内容は「キックベースボール」

野球のルールに“蹴り”をねじ込んだ・・
ピッチャー役がサッカーボールなどの大きな球を手で転がし
バッター役がそれを足で蹴り飛ばす・・・子供向けのスポーツ。





 投手の少年(・・よし、次はヘボそうなメガネ女子だな、ちょろいぜ!)ニヤリ

赤白帽子を目深にかぶった投手の少年・・
いわゆる体育の授業だけやけに張り切る類のヤツだ。


 投手の少年(俺の魔球ぅっ!!)
         「ふんっ!!」
ボウリングのような流れるフォームで、勢いよく転がされたサッカーボール・・



 コウ「キエェェェェェーーーーー!!!」



ドムッ!!!=3


 投手の少年「なにぃっ!?!;」


誰もの予想に反し、その地味な少女が雄叫びを上げて蹴り上げたボールは
偶然にもクリーンヒットし、空に上がっていく・・・・・



昨晩、アクション漫画を読んだコウの妄想憑依度は全開だ。



 ユエ(へ〜・・やるじゃんあの子)
打順を待っているチームメイトの中には、まだ面識すらほとんどないユエの姿もある・・。




皆がその行方を見守るボールは、ぐんぐんと距離を伸ばし・・・



 守備の少女「伊倉さんいったよー!!」凄っ;


 タエコ「なんでアタシのとこくるかなー!!」

宙を舞うボールを、外野守備に付いていた“ぽっちゃり”タエコが必死に追いかける・・・



 タエコ「ぜぇはぁ・・ぜぇはぁ・・」



しかし追い付くだけで精一杯で、キャッチする余裕などはまったくなく・・・



 タエコ「げふっ・・」



着弾。顔面ヒット。



・・バターン・・・・・






・・・






コウと、学級委員の少女は、タエコに肩を貸して保健室に向う・・・

 コウ「ご、ごめんなさい・・伊倉さん」

 タエコ「大丈夫大丈夫w・・・っと、うあ鼻血;」
ニハハと笑ったタエコの鼻から、ツーっと鼻血が流れ出る・・

慌ててポケットからティッシュを取り出す学級委員の少女の
用意の良さ、手際の良さ・・




・・・




 保健の先生「――・・はい、これでOK」

 3人「ありがとうございました」

 保健の先生「は〜い。気を付けるのよ〜」





保健室でタエコの手当を終え、グランドに戻る・・


その道中・・・


校舎内、授業中で静まりかえった廊下を歩くコウ達3人・・・

 コウ「・・・ホントにごめんなさい!(><)」

 タエコ「もういいってw」
 コウ「でも・・」

 タエコ「誰が蹴ってもアタシこーなってた自信あるしww」
 コウ「・・・」

 タエコ「えっと、美里さん・・だっけ?
     あんまり気を使われると逆にアレなんだけど・・・;」


 コウ「・・・」
 タエコ「・・・」


ほんの少しの沈黙の後・・・




突如、変顔をするタエコ

 コウ「ぶふーーーーーっ!?!!」(;@3@)∴∴
 タエコ「アハハ!、イイ噴きっぷり!ww」

 学級委員の少女「クスクス・・w」

 タエコ「お!、こっちもイケる口だねw」


続けてタエコは、鼻に詰めていたティッシュを、鼻息だけで勢いよく吹き飛ばす・・

 2人「っ!?!www」

小学生特有のちょっとおバカで行儀の悪い笑い・・
それが余程ツボだったのか、ゲラゲラと大声で笑うコウと学級委員の少女。


 どこかの先生「誰だ!、今授業中だぞ!!」
と、近くの職員室からお叱りの声・・


 タエコ「やっば!;」

3人は慌ててその場から走り去り、突き当たりの角に身を隠す・・



コウとタエコ、そして学級委員の少女・・・スミ。



 タエコ「・・・あ、鼻血ティッシュ(廊下に)落としたままだ;」
 コウ「プクク!ww」
 スミ「もぉ!、伊倉さんやめてよお腹痛いww」



これを機に、3人の付き合いがはじまった・・・・・。









・・・・・――――――――









 カナコ「――・・なるほど、タエコは最初っからバカだったのね」うんうん
 タエコ「なんですってぇ!!」

 スミ「もぉ〜・・(^^;)」
 コウ「あははw」


ピンポーン・・


 コウ「あ、フミコちゃん達かな?。は〜い・・・―――――」




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by: へろ
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