彩花の騎士
ストーリー 45
避難訓練&実地訓練を終えた、その日の夜・・・。
『鈴木スズナ 自宅:スズナの部屋』
淡いピンクとクリーム色を基調とした、やわらかく優しい色彩の内装と家具・・
布製の物は主に“うさぎ柄”で統一され、その随所にフリルやリボン・・
腰の高さのタンスの上には、レースの敷物が敷かれ
その上にはビッシリと、ぬいぐるみが並んでいる・・・
戦闘とは無縁のような、このフェミニンすぎる部屋で
これまたバトルスーツとは真逆の、
うさぎのマスコットがあしらわれたパジャマを着た、スズナの姿。
円型の可愛らしいちゃぶ台テーブルの上には、裁縫箱が広げられ・・
なにやら縫っている様子。
スズナ「―――・・・出来た!」
そう言って目の前に広げたのは、小型犬に着せるような小さな服・・フリフリの・・・
スズナ「似合うかなぁ〜・・」
それを、50cmほどの大きなウサギのマスコットのぬいぐるみに着せる・・・
スズナ「キャーーー!!(>▽<)」
着せ替えさせたそのあまりの可愛さに、ぬいぐるみを抱きしめて頬をすりすり・・
彼女、“鈴木スズナ”はこういう少女だ。
そして無類の「うさぎグッズ」好きである・・・
それは室内に留まらず、身の回りの物は大概であり、
学校の鞄に付けているキーホルダー、ケータイのストラップ・・
下敷やシャーペン、筆箱といった文房具類に至るまで・・・
故に、所属する通信班の班長、アリサからは
「ウサ子」というあだ名で呼ばれている。
スズナ「・・わわっ!?、もぅこんな時間;、早く寝ないとぉ・・」
片付けを済ませ、ベッドに入って目を閉じるスズナ・・
その傍らには、先ほど着替えさせたウサギ“ピッピーちゃん”のぬいぐるみ。
机の上に置かれた卓上カレンダーには、翌日の日付に赤丸が付けられている・・・。
・・・・・
翌日、4月29日(木)。
本日より「国民休日週間(ゴールデンウィーク)」に入り、
学校は1週間の連休となる。
朝10時過ぎ・・・
『アパート:コウの部屋』。
まだ閉められたままのカーテン・・・
その隙間から日の光が入り込み、部屋の中は薄っすら明るい・・・
ゴソゴソ・・
ベッドで掛け布団に包り、寝返りをうつコウ・・・
・・ピーンポーン・・・
コウ「・・・ん・・・・・」
チャイムの音に、意識だけが目を覚ます・・・
・・ピーンポーン・・・
コウ(・・・ん〜・・・誰?・・せっかくの休みなのに・・・・・)
・・ピーンポーン・・・
朦朧とする頭で、頭上の目覚し時計に手探りで手を伸ばす・・・
コウ(・・10時・・・・・・・あぁ〜もうこんな時間か・・・・・)
チャイムが止んだと思ったら・・
次にケータイの着信音が鳴り響く・・・
しかしそれを無視し、少し大きな声で言い放つ・・
コウ「・・いませ〜ん・・・!」
ドアの向こうの来客、電話の主が誰だか知ったそぶりで、
その相手に聞こえるように・・
???「いやいるし!」
ドアの外で聞き覚えのある声がツッコんでいる・・・・・タエコだ。
コウ「プフフw」
掛け布団を抱き枕のようにし、それに顔を埋めて笑う・・
タエコの声「美里さ〜ん、お届け物で〜す」
コウ「いませ〜ん・・!」
タエコの声「いやいるし!、バカやってないで早く開けなさいよ!」
コウ「プフフw」
(仕方ない、起きるか・・・)
・・・
玄関のドアを開けると
私服姿のタエコが、「アンタねぇ〜」と言わんばかりの表情で立っている・・
コウ「おはよ〜」
コウの寝癖でボサボサな頭と、
片方の袖だけ捲れ上がった寝間着兼ルームウェア姿を見て
タエコ「・・・」(==;)
言葉を失うタエコ
タエコ「アタシ10時に行くって言ったよね?」
コウ「うん、言った」
タエコ「・・おばさん(コウの母)いないとこの様ですか;」
コウ「いいでしょ、せっかくの連休なんだし」
開き直るようにそう言いながら、振り返り部屋に戻っていくコウ・・
タエコ「後頭部(寝癖で)爆発してんじゃんw」お邪魔しま〜す
靴を脱ぎ、コウに付いて部屋に入る・・
タエコ「・・部屋暗っ!!」
コウ「ふぁ〜〜〜あ・・」
大きなあくびをして、背伸びをするコウ
コウ「タエチー、カーテン開けといて。顔洗ってくる・・」
タエコ「一応アタシお客よ?;」まったく・・
とは言うものの、しっかりカーテンを開け、窓も開けて換気する手際。
タエコ「・・そいや、ここ(アパート)のコウの部屋に入るの
ほとんどはじめてじゃない?」
一人暮らし用の小さい冷蔵庫を、勝手に開けるタエコ・・
コウの声「そうだっけ?」
洗面所から応対
タエコ「・・・お、PPレモン発見」
黄色い炭酸飲料、1.5リットルサイズのペットボトルに目が止まる・・
コウの声「転校から騎士様のことでずっとバタバタしてたからねw」
タエコ「あぁ〜。前に約束なしで来て、行き違いとかもあったわね」
コウの声「ふぉうだね〜(そうだね〜)」
タオルで顔を拭きながら応える
タエコ「PPレモン飲むよ〜、コップどれでもいい?」
コウの声「うん〜・・。うわホントだ、後ろ(寝癖で)爆発してる;」
タエコはコップに入れたジュースをグビグビ飲みながら
部屋の中を見渡す・・・
タエコ(・・意外と片付いてるわね・・・)
洗面所から、プシィ!プシィ!・・と
寝癖直しのミストをかける音が聞こえてくる・・
コウの声「・・スミちゃんは?」
タエコ「ん?、あ〜先に叶街で用事済ませるって・・」
コウの声「用事?」
タエコ「“ヴァルオケV”、今日発売っしょ?」
洗面所から戻ってくるコウ・・
コウ「あ、“ヴァルキリーオーケストラV”って今日だったんだ」
タエコ「スミ、あのロープレ好きだからさw」
コウ「そうだったそうだった(^^)
私も中学の頃、スミちゃんの隣でずっと見てた・・w」
そんな話をしながら、コウは台所でコップを取り
浄水機の水を入れる・・・
タエコ「朝ご飯はどーすn・・ってコウ、アホ毛まだ残ってるわよ」
と、後頭部から一束、強情な寝癖を見て指摘
コウ「う゛っ・・・;。
タエチー髪といて(=v=;)」
タエコ「はいはい、世話のかかるお嬢さんね・・・」
・・・・・
その頃、『叶街』。
開店直後のゲームショップには、
レジから続く行列が、店の外まで延びている・・・
あまり大きな店舗ではないため、人数にして30人ぐらいだが・・
皆、メジャー大作RPG“ヴァルキリーオーケストラ”の新作目当てのお客達だ。
その列、まだお店の外で並ぶ中に、スミの姿もあった・・・。
スミ「・・クスクス(^^)」
ケータイを見て小さく笑っている・・
タエコから送られた、コウの寝癖写メを見ている様子。
・・・・・
少し溯る事、約1時間前・・・
『鈴木スズナ 自宅:スズナの部屋』
スズナ(――・・・う、うん!、これで大丈夫っ!!・・・・・・・かなぁ?;)
全身を映すスタンドミラーの前で、念入りに身だしなみをチェック・・・
フェミニンファッションの優等生・・といった、ガーリーな服装に対し
顔は、少し大きめのマスクで口と鼻を隠し、
伊達メガネをかけ、キャスケット帽を深々と被る・・
どうにもちぐはぐな格好だ・・・。
スズナ(・・・だ、大丈夫!、開店すぐに行けば人も少ないはず!)
そう意気込むスズナは、机の上に置いてある小さな商品チラシを確認する・・・
頭巾を被ったウサギのキャラクターが愛想を振りまいているチラシ・・
『うさずきんちゃんと魔法の国 ちょっぴりちょこっと大冒険の巻♪
4月29日(木)発売予定。メーカー希望小売価格:4800円(税別)』。
所謂、“小学生低学年・女児向けのゲーム”のそれである。
このキャラクターが大好きなスズナは、この日を心待ちにしていた・・・
しかし!、“女児向けキャラクターゲーム”と決定付けられたそれは
ゲームを少なからず嗜む者の・・それも年頃の、思春期の、
他人の目が特に気になる高校1年生にとって・・
ある種、最も触れるのが恐ろしいジャンル!!
スズナもそれを理解している。
同キャラクターのグッズや雑貨、お菓子やぬいぐるみを買う時には感じない
言いようのない謎の恥ずかしさ・・・
知り合いに出会うリスクが含まれる日常生活圏の、普通の街の、
普通のゲームショップで、小心者の彼女がこれを買う・・・
これは屈強な軍人も裸足で逃げ出す、ハードミッションに相当するのだ!!。
故にスズナのこの格好・・・いや、変装。
・・・・・
時間を今に戻し・・・
『叶街』。
スズナ(・・・待っててね、うさずきんちゃん!!)
ザッザッザッザッ・・・
ゲームショップへ向かう道中のスズナ・・・
普段、何もない所で転ぶようなドジっ娘の足取りは勇ましく・・
顔は劇画のようになっている・・・。
・・・
・・・しかし次の瞬間、ゲームショップ目前で彼女が目にしたものは・・・
スズナ(・・え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!(@□@川))
店の外にまで連なる行列。
スズナ(なんでなんでなんでぇぇぇ〜!?)ガビーーーーーン;
本日は、ミリオン超えメジャー大作RPGの発売日。もろ被り日。
その光景を見て、スズナは呆然と立ち尽くす・・・
・・そして気付く・・
行列の中に見知った人物・・いや、そんな他人行儀な人ではない・・・
スズナにとって憧れの先輩である、スミの姿。
スズナ(・・ど、どうしてスミ先輩が・・・・・;)
ただ単に、自分が好きな物を買いに来た・・
本当にただそれだけの事なのに
今、彼女と顔を会わせるのが恥ずかしくて仕方なかった。
そう思うと、自然と体は来た道を振り返り、歩みをはじm・・
スズナ「・・ふにゅっ!;」
見事、足がもつれ盛大に転倒。
その拍子に帽子は脱げ、後ろ姿はスズナそのもの・・
スミ(・・・あれ?・・・・・スズちゃん・・?)
それを見て、並んでいる途中の列を抜けるスミ・・・。
スズナ「・・いたたたぁ・・・;」
むくりと起き上がるスズナに、手が差し伸べられる・・
スミ「大丈夫?、スズちゃん(^^)」
スズナ「あ、はいぃ・・すみません〜・・・」
と、その手に手を重ねる・・
スズナ「っわひぃっ!?!」
タイムラグで気付く
スズナ「あぅ;、す、スミ先輩ぃ・・」
スミ「どうしたの?(^^)、そんなに驚いてw」
スズナ「あのえっとぉ・・」
スミ「うん、とりあえずここ道の真ん中だから、起きよ(^^)」
・・・・・
・・・・・ゲームショップから出てくるスミとスズナ・・
それぞれお目当ての商品を購入し、ホクホク顔の2人・・・。
歩きながらする雑談も、自然と弾む・・
スミ「・・うん、遊ぶゲームなくなったらいつでも言って
1作目貸してあげるから・・」(^^)私のオススメ
スズナ「はいぃ、ありがとうございますぅ(^^)」
スズナは、買ったばかりの“うさずきんちゃんのゲーム”を
小さなショルダーバッグの上からその膨らみを感じ取り、改めて御満悦
スズナ(・・スミ先輩が横にいてくれたから、全然買うの恥ずかしくなかった・・)
チラッとスミの方を見、小さく微笑む
スミ「・・?」
スズナ「・・・(^^)」ニコニコ
スミ(・・やっぱりスズちゃんって可愛いな〜・・ホントにうさぎみたいで・・。
アリサ先輩じゃないけど・・ハグしたくなるの解るかもw)
スミ「・・でも良かったね
予約してなかったけど予約特典も貰えて(^^)」もこもこストラップ
スズナ「はい!、宝物がまた増えました♪」
スズナ(“うさずきんちゃん”というだけじゃなくて・・・
スミ先輩と・・一緒に買ったっていう・・・♪)
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へろ
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