彩花の騎士
ストーリー 37

それぞれの日曜日(休日)を過ごす騎士様達・・・


ここは彩花街のもう一つの隣街、『並川街』。

大戦後、山を切り開いて作られた彩花街に比べ、歴史はかなり古く
昔からの住宅が多く建ち並ぶ下町。

大小いくつかの神社が集まっている事も特色である。

並川街の名の由来にもなっている、とても穏やかな川が流れており
その周辺の河川敷は、地元の人達の憩いの場になっている。




そんな河川敷に通る、整備された道・・・

春の心地良い陽気と風に、いくつもの小さな野花が揺れ
川がキラキラと光を反射している。

犬の散歩をしているお姉さん、川辺に座り愛を語らうカップル、
足だけ浅瀬に浸かって水遊びをする小学生達・・・

平和な休日を絵に描いたような光景。



そこを、スポーツウェアを着てジョギングする4人の少女達・・・

先頭をユエ、少し遅れてカナコ、その2人から離れてコウとフミコ・・

 コウ「・・うひ〜・・ユエちゃんが遥か彼方に;」
 フミコ「それさっき聞きました」周回遅れですよ私達

 コウ「ペースアップぅー!(>□<;)」

並んで走っていたコウが、30cmだけフミコの前を行く・・

 フミコ「・・・」
    (お、遅い・・・;)

すぐさま、コウの横に追い付くフミコ

 コウ「だよねー!w」
 フミコ「はい」

 コウ「あははw」
 フミコ「フフ」



 カナコ「こらアンタ達ー!、真面目に走りなさいよー!!」
少し離れて前を走るカナコが振り向き、叫ぶ


 コウ&フミコ「はーい」


 カナコ「・・まったく・・・」


そうこうしてる間に、折り返し地点に着いたユエが
こちらに進路を変えて走ってくる・・・

 ユエ「あと5分走ったら休憩ねー」
カナコにすれ違いざまに

 カナコ「オッケー」



 ユエ「あと5分走ったら休憩だよ、ファイト!」
コウ、フミコとすれ違いざまに

 コウ「うん!」
 フミコ「はい」



先日の件で、コウとユエの間にあったモヤモヤは晴れ、
今は“騎士様”“前線組”という新たな共通点を持つ2人・・

少しでも基礎体力諸々を付けたいコウと、
娯楽に疎く、体を動かすことしか休日の過ごし方を知らないユエの

2人の目的が一致した結果、今日のジョギングに至る。

カナコはユエに、フミコはコウに誘われる形での参加だ。







時間は午前11時55分・・・

 タエコ「―――・・・お!、やってますねぇ〜」

河川敷を見下ろせる土手の上に現れたのは
私服姿のタエコ、スミ、スズナ・・・

コウ達がジョギングを終える時間を知っていて、やって来た様子。

 タエコ「・・にしても、コウも変わっちまったねぃ」
 スミ「ね(^^)、もうこれ見たら普通にスポーツ少女だもん」
走るコウを目で追うタエコとスミ

 タエコ「輝け青春!!って感じだね」
 スミ「フフ」

 スミ「・・・そういえば中学のこの頃って、私達何してたっけ?」

 タエコ「何って・・そりゃ〜・・・・・・・春でしょ?・・・」



 タエコ「・・え〜・・っと・・・・・・・アレだ!、アレ!、“コロカー”!!」
 スミ「あぁ〜“コロちゃんカート”ね、そうそう(^^;)」
 タエコ「あれのコロシアムモードを延々3人でやってたわww」バカみたいに

 スズナ「それって“Nii”のゲームですよねぇ?」
 タエコ「そうそうw、
     カートに大砲とかチェーンソー付いてて
     端から真面目なレースする気ないバカゲーw」

 スミ「ひどいゲームだったよね・・・(^^;)」
 タエコ「スタートと同時に前の車ぶっ飛ばしたりw」バズーカで

 スミ「撃たれたCPUが黒焦げになりながら目の前転がっていくのよね;」
 タエコ「アハハハハハ!w
     3周目ぐらいになると、みんな頭からプスプス煙り出てたわねww」

 スズナ「えぇっ!?、そんな物騒なゲームだったんですかぁ!?(@@;)」
 スミ「絵はポップなんだけどね・・・(^^;)」コロちゃん可愛いのに・・

 スズナ(よかった〜・・昔お店で“ほのぼの村”と迷ってやめてぇ・・・)ほっ


 タエコ「あれコウのだっけ?」コロカー
 スミ「うん」

 タエコ「コウって、たまにエッジの利いたのぶっ込んでくるよねw」
 スミ「ハハ・・(^^;)」


 タエコ「ホラ、“メリーの工房”の素材集めやったじゃん!、3人で」
 スミ「あ〜・・竜の谷!」
 タエコ「そ!、あの時もさ・・」


・・・そんな内輪ネタすぎる会話から、タエコの大きな笑い声がもれ

ジョギングをするコウ達も、彼女達の来訪に気付く・・・


 カナコ「タエコめ・・相変らず大きな声でバカ笑いして・・・」

 コウ(今まで大体一緒にいたからあんまり気付かなかったけど・・
    タエチーの笑い声のボリューム凄い;)




 タエコ「あれサイコー!!ww、アァーーーハッハッハッハッ!!!」




 カナコ(どこの魔王よ・・・(ー_ー;))その笑い方・・







・・・・・







 タエコ「――・・お疲れさん!」
 スミ「御疲れ様(^^)」
 スズナ「御疲れ様ですぅ」

走り終えたユエ、カナコ、コウ、フミコのもとにやって来る3人・・

 カナコ「アンタの笑い声、ホントうるさいわねー」
 タエコ「そぉ?」
 カナコ「・・・・・;」

特に気にとめる事なく応えるタエコに、何も言い返す気力がなくなったカナコ。


 スミ「じゃ〜お弁当持って来たし、みんなで食べよっか(^^)」

 コウ「スミちゃん流石!」(>▽<)イェイ
 ユエ「お!、いいね〜♪」
左手を腰に当てペットボトルの水を飲んでいたユエも、爽やかに賛同




・・・




レジャーシートを2枚敷き、円になって座る一同・・
その中央には、スミが持って来た3つの大きな容器のお弁当。


ぱかっ・・と、その1つ目をオープン


 コウ&スズナ「キャーーーーー!!」(≧▽≦)
 カナコ「おぉ!、手が込んでるわね!!」
 ユエ「ちょっと食べるの勿体無いかも;」
 フミコ「・・・」コクリ

そこに敷き詰められたおにぎりは、
海苔を使ってペンギンやウサギに可愛くデコられている・・

 スミ「ニコニコライフ(地元の大型ショッピング施設)の1階広場でさ
    少し前にデコ弁グッズの特設コーナーあったでしょ?、そこで・・」

 一同「・・・・・」
   (あったっけ・・・?)(知らない・・)(行ってない・・)(ずっと走ってた・・)



 スミ「・・・・・;」



 スズナ「あわわ;、あぁはい!、ありましたぁ!!」焦々;
 スミ「うぅ・・(TT)、ありがとうスズちゃん;」
   (どうして私の回りってこういう話題に疎い娘ばっかりなの・・・orz)

 タエコ「じゃ、とりあえずアタシはこのペンギン太郎くんを・・」
 スミ(タエチーは食欲最優先だし・・・・・太郎くんって誰?)

そんなスミを余所に、それぞれおにぎりを手にした一同・・

 一同「いただきまーす!」





 タエコ「美味いっ!!」テーレッテレー!
 他一同「うん!」

 カナコ「中々おいしいわね、合格点あげるわ」
 タエコ「姑かよ!、ってかスミはアタシの嫁だし!」
 スズナ「えぇぇえぇっ!?!」(@△@川)ガーーーン!!

 コウ「じゃあカナコちゃんはタエチーのお母さんだね」
 カナコ&タエコ「それはないっ!!」

 ユエ「あはは、ハモったw」仲が良いのか悪いのか・・

 フミコ(さすが先輩、真面目に乗っかった・・・;)もぐもぐ

 スミ「・・・お、おかずもあるからね(^_^;)」








・・・・・・・








・・・一方。

どこかの地下室と思われる、広い空間・・・

 イサミ「でぇーーーい!!」

刀身がウルズマイトエネルギーで出力された武器“UEブレード(刀)”を振り、
立体映像のゴブリを斬り裂く、紺色の剣道衣に袴姿のイサミ。

 イサミ「はぁっ!!」

 イサミ「ふんっ!!」

銃を使う時以上に、流れるような動作で次々とゴブリの映像を一刀両断していく・・




・・・




 イサミ「・・・ふぅーー・・・・・」
全てのゴブリを斬り終えると、エネルギー刃を収め
深く一回、呼吸をつく・・・。



 イサミ(・・・・・ジョギングなど日々の鍛練の1つに過ぎない・・・何を今更・・)

呼吸を整えつつ、イサミが思い出しているのは・・
今朝、コウにジョギングを電話で誘われ、それを断ったこと・・・


 イサミ(そうだ、もっと有意義に時間を・・実戦的な訓練を私はしている・・・)
まるで言い聞かせるように、コウの誘いを断った事が正しい判断だと・・
自分の訓練を優先させた事が正しいのだと・・・頭の中でそれを繰り返す・・・。






と、そこに・・
階段からこの地下室に下りてくる人物・・

長すぎず短すぎずのナチュラルな黒髪に、整った白いYシャツを着た・・
まさに“THE 好青年”な男性。

 男性「――・・イサミ、お昼できているぞ・・上がってこい」

 イサミ「兄上・・」



 イサミ「・・・いえ、私は結構です・・・・・」
どこか含みのある間の返答・・

 イサミ「それよりも兄上!、一つ私に稽古を付けてくれませんか!」



 兄「・・・ふむ、昼食の後でなら構わんが・・まずは・・」
 イサミ「では後ほど!、私はここで続きをしておりますので」

 兄「上がって来いと言っている」

 イサミ「しかし修練の合間に食事は・・」


 兄「・・・どうしたイサミ?」

 イサミ「?」

 兄「お前はイライラすると意外と表面に出るからな・・」
 イサミ「なっ!?」


 兄「修練は大切だが、
   そんな我武者羅に余裕なくやっても、あまり意味はないと思うぞ」

 イサミ「兄上!、お言葉ですが・・」


つかつかとイサミの元に歩み寄る兄・・


 兄「感情の捌け口に刀を振るうな」

 イサミ「っ!!」
痛烈に本心をつかれたイサミは、言葉を続ける事ができない・・



 兄「・・そんなに体力が有り余っているのなら、外でも走ってこい」
 イサミ「!」

 兄「幸い、外は最高のジョギング日和だぞ・・こんな地下室に篭ってないで・・」




 イサミ「・・ジョ・・・?」ゴゴゴゴゴ・・・


 兄「・・?」




 イサミ「・・・兄上までジョギングですかっ!!!!!」くわっ
突如感情を爆発させるイサミ


 兄(ビクッ!?)えぇ!?急にどうした?;




“ジョギング”・・・それは今のイサミにとってのNGワード。地雷。




 イサミ「わかりましたっ!!
     兄上の御命令とあらば、今すぐ走って参ります!!!」

完全に八つ当たりのような状態で、イサミは手にしたUEブレードを兄に押し付け
そのまま階段を足早に、足音をわざとらしくたてながら上っていく・・・

 兄「お、おい・・・昼食は・・・・・;」




地下室に取り残された兄は、手にしたUEブレードを静かに見つめる・・・


 兄(・・・これが噂の・・年頃の妹というやつか・・・・・)(TーT)キラーン☆



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by: へろ
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