彩花の騎士
ストーリー 36

日曜日(休日)。お昼前。


彩花街の隣街、『叶街』の駅前ビル内・・

レコード店にて、CDを物色している少女・・・


支援班の1年、イチルである。


 イチル「・・・」

黒ずくめのゴスパンクファッションで
破けた長袖シャツに、パッツンパッツンのショートパンツ・・
黒タイツと、丈の短いブーツ。

そして複数のピアス、メリケンサックばりの指輪の数々、真っ黒なマニキュア・・

学校でもよくしているのを目にする、ヘッドホンからは
シャカシャカと激しい音楽が漏れており・・

とにもかくにも、一般人が近寄り難いオーラをバンバンに出している。



そんな彼女が手に取ったCD・・
薔薇の花に包まれたドクロが、血の涙を流しているジャケット・・・。

 イチル「・・・」
    (・・・クール・・)





 ???「・・・あら素敵なジャケットだこと・・・」


そう言って、イチルの背後に気配なく現れた人影は
スッ・・とイチルのヘッドホンを取り外す・・・

 イチル「!?」ビクッ!?

驚いたと同時に、素早く振り返るイチル・・


・・と、そこには
同支援班の3年、ナギサが
いつもの表情が分かり難い糸目で微笑んでいる・・・。



 イチル「・・く、黒百合の君;(←ナギサのこと)」あせあせドキドキ


 ナギサ「ウフフ・・ごきげんよう」
こちらも負けじと全身黒ずくめの私服・・

タートルネックのプルオーバーに、ロングスカート・・
一見すると、白い部分のない修道服のようにも見えるが

首から下げているペンダントが、骸骨であったり
ブーツのヒールが凶器のように鋭かったりと・・

彼女のミステリアスな雰囲気も相俟って
妙な凶凶しさと、Sっ気がにじみ出ている・・・



 イチル(・・・お、堕ちた聖女(シスター)!!)(☆0☆)キラキラ


 ナギサ「・・こんなところで会うなんて、奇遇ね」
 イチル「・・・」コクリ・・

 ナギサ「1人・・?」

 イチル「・・・孤独の哀しみを知らない道化(ピエロ)・・」
 ナギサ「そう・・貴方は1人でも満喫できちゃうタイプなのよね」

“ぬらり・・”という表現のような、しっとりねっとりした指使いで
手にしたヘッドホンをイチルの首に掛けるナギサ・・

そして、イチルの顎に手を添え
クイッ・・と、自分の顔を見上げさせる・・・。

 ナギサ「・・でも・・・フフ・・」ニッ・・
 イチル「・・・・・」ポッ・・


瞬間、ただのレコード店の一角に、少し異様な空間が生まれる。


あれだけ一般人が近寄り難いオーラを出していたイチルが
まるで手懐けられた犬のようである。


 店員(・・な、なんだあの2人は!?;)ガタッ
 客A(ドキドキ)
 客B(あの恐そうな娘、受けの方だったのぉー!?)
 客C(こ、こんな公衆の面前で!・・け、けけけけしからん!!)
 客D(ドキドキ)

 女子高生A「(ちょ、ちょっとあの2人!!)」
 女子高生B「(騎士様の!、支援班の!!)」
 女子高生A「(そうよ!、ナギサお姉様とイチルさんよ!!)」
 女子高生B「(キャーーー!!、するの!キス!ってかして!!)」
 女子高生A&B(キース!、キース!、キース!、キース!)いっけぇー!!








 ???「―――・・こらナギサっ!!」

そんな2人の異空間に、ズカズカと躊躇なく入ってきた人物・・

 ナギサ「あらシイナ・・」イイところだったのに・・
 シイナ「“あらシイナ”じゃないわよ!」

 シイナ「まったく自分の本、人に探させておいて・・」プンスカ
 ナギサ「だって貴方の方が詳しいでしょ?、そういうの」
 シイナ「そーゆー問題じゃ・・って、ん?」

ようやくナギサの横にいるイチルに気付く・・

 シイナ「アンタんところの音楽少女じゃない」
 ナギサ「イチルって言いなさい」

 イチル「・・・」
ペコリと会釈

 シイナ「あぁそうね、イチルイチル」



 女子高生A&B(シーナたまぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜・・)(T□T)間の悪い・・






・・・






とりあえずレコード店を出る3人・・・。


 シイナ「・・はい、ちゃんと買ったわよ!」
レコード店の隣にある本屋にて買ったものを、少し強い口調でナギサに渡す

 ナギサ「ありがと♪」
 シイナ「後でアタシにも見せてよね」
 ナギサ「えぇ、もちろん」

 イチル「・・・?」

 ナギサ「イチルも見る?、“オカルトパーフェクトファイル UMA黄金時代編”」


 イチル「・・・・・閉ざされた瞳」

 ナギサ「アラ残念」
 シイナ「は?;」閉ざされた瞳?

 ナギサ「イチルは意外とこっち系じゃないのよね〜・・」

 イチル「黒の夢、静寂の世界に心の波紋は呑み込まれ・・」
 ナギサ「まぁヴィジュアル系にUMAとかUFOは基本出てこないものねw」

 イチル「私のセカイからは見えない、遥か彼方に咲く秘密の花園・・」

 シイナ「ストップストーップ!、何何?何言ってるのイチル?;」





 イチル「・・・・・」





 イチル「・・・失われた聖書」
 シイナ「・・・・・」(=v=;)


 ナギサ「クフフ・・おもしろいでしょ?、ウチの娘w」
 シイナ「ってか内容理解できてるアンタも凄いわ・・・;」

 イチル「それこそが運命の黒百合たる証。輪廻により・・」
 シイナ「了解了解!、解った解った;」

 シイナ「あんまり喋らない娘だと思ってたら
     予想以上に饒舌で驚いたわ・・・;」



 シイナ「普通に話せばもっと取っ付き易くなるのに・・・」損だよ?


 イチル「・・・・・・・」





 シイナ&ナギサ「・・・?」






 イチル「・・・ん・・・・・ます・・」ボソ・・

 シイナ&ナギサ「?」


 イチル「・・が・・・ります・・」ボソ・・


 シイナ「(えっと・・・頑張ります・・って言ったの?)」
 ナギサ「(みたいね・・)」


イチルは顔をみるみる真っ赤にして下を向く・・・


 シイナ(・・あ、あぁ〜!、この娘すごい口下手で恥ずかしがりやなんだ!!
     だからあんな言葉遣いでカバーを・・)
と、イチルの事を少し理解したシイナが
確認を取ろうとナギサの方を見ると・・・


 シイナ「!?」ビクッ!?


 ナギサ「・・・」
出した手をプルプルと振るわせ、頬を赤く染め、高揚し
ハァハァと荒い息遣いのナギサの姿・・・。



 ナギサ「ちょっ・・イチル・・・そんな・・ピュアソウル見せちゃダメよ・・。ハァハァ
     お姉さん貴方の事、ペロペロしたくなっちゃうじゃない・・・!!!」


 シイナ「・・・変態の本性出てるわよ;」舌をしまいなさい・・






・・・・・






そんなこんなで、
2人で買物に来ていたシイナとナギサに、イチルが加わり・・

駅前ビル内の、飲食店フロアを散策・・・。


 ナギサ「―――・・お昼なにがいいかしらね・・?」
 イチル「・・・私のすべてを黒百合の君に委ねる・・」
 ナギサ「じゃあイチルを食べちゃおうかしら・・フフv」

 シイナ「アンタが言うと色々冗談に聞こえないのよ・・」

 ナギサ「アラ?、それは人肉を食す的な意味?・・
     それともリビドーがほとばしる的な意味?」
 シイナ「どっちもよ;」人肉って・・・;

 イチル「甘美な背徳・・・」ポッ・・
 シイナ「有りなのっ!?」

 ナギサ「ウフフ・・」ニタァ〜・・

 シイナ「支援班恐いんですけど・・・(=v=;)」




 シイナ「・・アンタ達見てると
     ちょっとミヨ(もう1人の支援班)が心配になってきたわ・・・」

 イチル「汚れなき聖者の行進、無垢なる鼓動は鳴り止まない・・・ジーザス」


 シイナ「・・・・・訳して;」

 ナギサ「私達みたいなダークサイドには堕ちないのよ、あの娘は」
 シイナ「ならいいんだけど・・」


 ナギサ「でもあの白さがいいわぁ〜・・・vvv」ゾクゾク・・
両腕を交差し、自分で自分を強く抱きしめるナギサ

 イチル「翼をもがれる天使の慟哭・・・」

 シイナ(今確実にミヨの背筋に寒気走ったわね・・・)(==;)ごめんミヨ







・・・・・







 ミヨ「っ!?!?」((((@w@川))))ブルブル
 チカ「・・どったの?」

 ミヨ「いや、急に寒気が・・」
 チカ「風邪?、修行が足りないんじゃない!!、ドリャー!!!=3」

どこかの道場で2人・・
空手衣姿のミヨとチカが組み合っている。

 ミヨ「ちょっ!、そこ心配するとこでしょ!!」何で飛び蹴りしてくるの!?


 チカ「チェスト!、チェスト!、チェストぉーーー!!」
続けて左正拳突き、右正拳突き、上段回し蹴りの連続攻撃

 ミヨ「タイム!タイム!!」
そう言いながらも、チカの全ての攻撃をいなすミヨ・・

 チカ「ハッハー!、時間停止能力などとうに見切ったわぁー!!」
しつこく攻め続けるチカ・・


 ミヨ(イラッ!)


・・ミヨは、チカの繰り出した拳をかわしつつ、間合いを詰めて懐に入り・・
相手の勢いを利用しての、背負い投げ!!


・・・ズっっっデーーーーーンっ!!


 チカ「ってぇーーー!!!!!」
叩き付けられ叫ぶチカ


続けて・・

 ミヨ「タイムって言ってるでしょ!!、バカチカ!!」
怒鳴る言葉に加え、ガイン!とチカの脳天にゲンコツ

 チカ「っ痛ててててて・・・;」やっぱミヨ強ぇ〜・・


 ミヨ「まったく・・」
プンスカしながら、頭を抱えるチカを放置して、道場の端に向うミヨ・・

そこに置いてある、綺麗にたたまれたタオルで
汗ばんだ顔を拭き・・・、外していたメガネをかける。


 ミヨ「・・今日はもう終わるよ!」

 チカ「えぇ〜・・・リアルに風邪ぇ?」

 ミヨ「じゃないけど・・。いい加減、朝からずっとなんだし・・お昼食べよ」
壁に掛けられた時計に目線を向ける・・


 チカ「そーいやお腹減ったな〜・・・今日なに?」
先程の痛みなどなかったかのように、ケロリと立ち上がるチカ

 ミヨ「さーね、お母さんに聞いて」ってかウチで食べる気満々なのね・・

ミヨはそう応えながら、道場の隅にある用具入れに向い・・
中からモップと雑巾を取り出す。



 ミヨ「・・せーの!」

その掛け声と同時に、チカがミヨの元にダッシュ・・

 チカ「最初はグー!」
 ミヨ&チカ「ジャンケン、ポンッ!!」

パーを出すチカに対し、チョキのミヨ・・

 チカ「Noーーーーー!!」(>皿<)

 ミヨ「はい雑巾w」



・・・



道場の床半分を、スイスイとモップ掛けするミヨ・・

もう半分の床を、バタバタと慌ただしく雑巾掛けするチカ・・・

 チカ「爆烈ダッシュハイパー!」

 ミヨ「↑それ好きね・・・」





・・・ここは『此花流護身空手道場』。

ミヨの実家が営む道場である。


日曜日は門下生も来ないため、
ミヨとチカは子供の頃から、この道場を遊び場代わりによく使っている。

“遊び”と言っても、2人の感覚がそれなだけであり
端から見れば、やっている事は修練に他ならない・・・。

ゆえに2人の身体能力は、並の女子高生より遥かに高い。



チカの暑苦しい性格が形成された一つに、この道場があるとすれば、
ミヨの常識的かつ柔軟性のある性格は、自由奔放なチカと共にいたからに違いない・・・。



 ミヨ「――・・よしっ!、掃除終わり!」
 チカ「ミヨ早くご飯食べよ!!」

 ミヨ「それさっき私が言ったよね;」

ミヨの言葉などまったく聞かず、早々に道場を出て行くチカ・・

 ミヨ「あコラ!待ちなさい!!、神棚に礼してから行きなさい!!」

 チカ「おばさーーーん!、お昼ー!!」



凸凹で対照的な2人は、休日も息ピッタリ(?)である。








・・・・・








場所は叶街・駅前ビル内に戻り・・・

とあるパン屋の店内奥、イートインスペースで
出来たてのパンを食べるシイナ、ナギサ、イチル。


 シイナ「―――・・いやちょっと・・その食べ方やめてくれる・・・(=v=;)」


ナギサのトレイの上には、
先程までラブリーな愛嬌を振りまいていた“動物パン”達の、見るも無残な姿・・・

目だけくり貫かれたパンダちゃん、耳を引き千切れれたウサギちゃん
首をもがれたカメさん・・・それらにボタボタとかけられた真っ赤なジャム・・・・・


 ナギサ「このドライフルーツが美味しいのよ・・♪」
頬杖をつき、パンダちゃんの目玉だったパーツを、口に含んで舌で転がす・・

 シイナ「わざとだよね?;」その惨劇現場も

 ナギサ「・・ん?、欲しいの?」
と、長い舌を出し・・唾液まみれのドライフルーツを見せる

 シイナ「・・・・・ゴメン;、
     アンタの性質忘れて一緒にランチ来たアタシの落ち度だorz」




そんな2人の会話を余所に、粉砂糖をたっぷり塗したねじりドーナツを
ちびちび食べているイチル・・



 ナギサ(・・・それにしても・・・・)
糸目が小さく開き、視線は隣に座るイチルへ・・・

 ナギサ(その刺々しい格好に反しての甘党なパンと
     小動物のような可愛らしい食べ方・・・・・)ゴゴゴゴゴゴ・・


 シイナ「!?」
ナギサのただならぬ気配を感じ取るシイナ・・


 シイナ「・・い、イチル?」
 イチル「?」
 シイナ「頬っぺたに砂糖・・ついてるよ(^v^;)」

 イチル「・・・」
その言葉で気付き、指で拭った後に・・小さく頭を下げるイチル

 シイナ「うん(^^;)」


 ナギサ「チッ・・」
舌打ちをしたナギサが、シイナを見る・・


 シイナ「今完全に舐める気だったでしょ・・;」イチルの口元を
 ナギサ「当たり前でしょ・・・」

 シイナ「いやいやいや、返答おかしいから!」
 ナギサ「?。女の子の頬に食べ残しがついてたら、普通舐めるでしょ・・」

 シイナ「なに“そこに山があるから・・”みたいな口振りで言ってるの!?
     ただの変態じゃん!?、いやアンタ変態だけど!」

 ナギサ「やれやれ・・シイナも私に舐めてほしいわけね・・・」そう言えばいいのに

 シイナ「はい出ました!、博愛変態主義!!」




 イチル(・・これ・・美味しい・・・・・)もぐもぐ・・

 イチル(・・・・・・・今日は・・黒百合の君と秋津先輩に出会えて良かった・・・。
     当初の予定とは全然違ったけど・・・こういうのも・・)

 イチル(空虚な心に照らされた月と太陽の光・・
     うん、良い詩が書けそう・・・。)



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by: へろ
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