彩花の騎士
ストーリー 35

休日の土曜日・・

『トレーニングルーム』にて、偶然出くわしたタツミと共に
自主トレに励んでいたコウ・・

2人の間に会話こそほとんどなかったものの、
自分を鍛える・・という同じ目的で、
何となく打ち解けた雰囲気になりつつあった・・・。


 ユエ「―――・・あれ?、意外な組み合わせ」


そこにやって来たのは・・ユエ。



 コウ「!!」
   (ユエちゃん!?)

少し前まで、ユエとの“過去の事”を思い出していたコウは
彼女の登場に、少なからず動揺する。



そんなコウをよそに、タツミはウエイトマシンからサッと下り・・

 タツミ「・・・」
ユエに対して頭を深く下げる・・

突撃班の、直系の先輩であるユエに対しての礼儀であろう。


 ユエ「いいよタツミ、もう少し楽にして(^^;)」

 ユエ「・・で、2人して休みの日に自主トレ?」
 コウ「う、うん。偶然会って・・」

 ユエ「なるほど。
    タツミはいるだろうと思って
    部活上がりにちょっと覗いてみたんだけど・・」
と、目線をコウに向ける・・

 コウ「!?、?、??」焦々;

 ユエ(カナコが今のコウ見たら、
    またケチ付けながらも喜ぶんだろうな〜(^^;))

 コウ「・・・」
   (うわどうしよう;、何話せばいいのか分かんない(@w@;)
    何何その目線の意味?えーとえーーーと;)

 ユエ「・・あ!、そうそう・・
    2人共まだ続けるの?、もし終わりだったら一緒に帰ろうと思ってさ」

コウはヘルプの意味も込め、タツミの方を見て
先に返事を求めようとする・・

 タツミ「・・・上がります」

 コウ「じゃ、じゃ〜私も上がろっかな;」ハハ
明らかに言葉が詰まってぎこちないコウ

 ユエ「うん」
   (・・・・・)





・・・・・





帰路。

まだ余裕のある時間帯・・
昼食を済ませていない3人は、途中コンビニで適当な軽食を買い

近所の少し大きい公園にやって来た・・・。



小学生達が、滑り台の付いたジャングルジムの回りで
何やらゴッコ遊びをしているが

3人は気にせず、ベンチに座る。

 ユエ「・・えーっと・・コウがカレーまんで、タツミが肉まんだったよね?」
 コウ「うん」
 タツミ「・・・」コクッ

コンビニ袋からガサゴソとそれらを取り出し、手渡していく・・





・・・もぐもぐもぐ・・・・・





会話がない。





 ユエ「・・そ、そーだ!。2人共ゴールデンウィークは何か予定あるの?;」
沈黙にたまらず、話題をふる・・

 タツミ「・・・」
首を振るタツミ

 コウ「う、う〜ん・・特には・・・ハハ;。ユエちゃんは?」
 ユエ「アタシは部活かな(^^;)」
 コウ「あ、そうだよね」
膨らまない会話、ぎこちない空気・・・




そんな事など我関せずで、タツミは早々に肉まんを食べ終わり
自分の迷彩柄のリュックから

キャップの付いたコップを取り出す・・

 コウ「?」

キャップを開けると、コップの中には粉のようなものが入っている・・

 コウ「・・タツミちゃんそれ何?」

 タツミ「・・・プロテイン」
そう言うと、ペットボトルのスポーツドリンクをコップに注ぎ
キャップを締め直して、それをシャカシャカと振る・・・


完成したものを改めてコウに見せ・・
 タツミ「・・・プロテインドリンク」

 コウ「う、うん・・」(・v・;)さっき聞いた

 ユエ「ハハ・・(^^;)」



お手製のプロテインドリンクを飲み干したタツミは
スッ・・と立ち上がり・・

 タツミ「・・・カバン、お願いします」

リュックをベンチに置いたまま、どこかへ歩いて行く・・


 コウ「?。どうしたんだろ・・?、トイレかな?」


タツミの行き先を目で追うコウとユエ・・


 コウ「・・・え?、鉄棒?」


鉄棒の前で立ち止まったタツミは、
それを使って腕立て懸垂をはじめる・・・


 コウ「・・・・・」ぽか〜ん・・


 ユエ「ハハw、驚いた?」
 コウ「う、うん・・・凄いね、タツミちゃん;」
 ユエ「ほんと感心しちゃうわ」







 コウ「・・・」
 ユエ「・・・」







 コウ「・・・・」
 ユエ「・・・・」







 コウ「・・・・・」
 ユエ「・・・・・」








 コウ「・・・・・・・」
 ユエ「・・・・・・・」








 コウ(・・な、何話そう・・・;)
 ユエ「・・・」






 ユエ「・・・・・あ、あのさ!」
 コウ「う、うん・・・」ドキッ!?


 ユエ「こ、ここってさ・・・その・・・・・・・」


 コウ「・・・・・?」
言葉に詰まったユエを不思議そうに見ると・・

 ユエ「・・・」
ユエは照れくさそうに視線を空に向け
少し頬を赤らめて、鼻の頭をポリポリかいている・・・


 コウ「・・・?」
辺りを見回すコウ・・・






 コウ「!?・・/////」
ユエの言いたかった事にようやく気付き、コウはボッっと赤面する・・


そう・・ここは中学3年の冬、コウがユエに告白した場所だ。



2人共ここにやって来たのは意識せずの、まったくの偶然なのだが
逆にそれが気恥ずかしさを倍増する結果となってしまった。




 コウ(ななななななんでぇーーー!?(@◇@;)
    なんでここにユエちゃんとまた2人っきりでぇーーー!?/////)




 ユエ「・・・・・あ、アタシさ!」
声が微妙に上擦る

 コウ「う、うん!!」
必要以上に大きな返事


 ユエ「ここでコウにさ!・・その・・・
    こ、こ、こ・・こく・・告白されたじゃん?」
 コウ「う、うん!、した!!/////」(@w@;)ぐるぐる

 ユエ「ね!、ね!」
 コウ「うん!、うん!」
2人の色恋沙汰への免疫のなさが、極度の緊張状態を作り
会話のテンションがおかしな事になっている・・


 ユエ「で、でね!」
 コウ「・・・」コクコク!

 ユエ「・・アタシは・・その、気持ちは嬉しかった・・けど
    あの時は本当に・・えっと、そういう気持ちが解んなくて・・」
全くコウの方を見れず、ぎこちなく話すユエ

 コウ「/////」
赤面して下を向いたまま、膝の上に置いた手をギュッと握って
ユエの話に耳を傾けては、コクコク頷くコウ・・



 ユエ「・・・・・」
沈黙の間・・


 コウ「・・・?」チラリ




 ユエ「・・・コウにこんな話するの・・す、凄く失礼なんだけど・・・」
 コウ「う、うん・・?」

 ユエ「・・・・・その、三枝に入ってね」
 コウ「・・・」

 ユエ「そーゆー感情がアタシにもあったって・・・わ、解ったの」
 コウ「・・・え・・」

 ユエ「だから・・その・・・・・」



 ユエ「・・・・・・・・出来た・・・。す、好きな人・・・・・」
頬を染め、視線をめーいっぱい横に外し
口を尖らせて、小声で言い放つ・・


 コウ「!?!?」
 ユエ「あぁダメ!!、無し無し無し!!、やっぱ無し!!(>□<;)」

 ユエ「こんな話アタシの柄じゃないわ!!、全部忘れて!!(>□<;)」
顔を真っ赤にして、目を瞑ってバシバシ張り手をするユエ

 コウ「ちょちょちょユエちゃん痛い;」
 ユエ「ご、ゴメン;」


 コウ「・・・」
 ユエ「・・・」



 コウ「・・そ、そっか・・・」


この瞬間、コウは自分の中で、
ユエに対する未練が完全に消えた事を理解した。

既に気持ちの整理は付いていた事であったが
改めてそれを自然に受け入れられる自分が、何だかとても寂しかった・・・。




そして・・
緊張でパンパンになった頭が、ゆっくり整理されていく・・・


 コウ「・・・・・あ!、だからか!!」
 ユエ「・・・?」

 コウ「前にユエちゃん、騎士様の班分けの時・・
    私の告白の気持ちが少し解る気がするって・・・」
 ユエ「う、うん・・・・・。
    ・・コウが凄い勇気を出してくれたの、今更だけど・・少しだけ・・・」もじもじ




コウは寂しさと同時に、何故か満たされていく気持ちを感じていた・・・。
そう、何か大切なものを取り戻したような・・・。




 コウ「フフ・・(^^)」
 ユエ「ちょ、今笑ったでしょ!」
 コウ「うんw」
 ユエ「なっ!?」

 コウ「だってユエちゃんがだよ?」
 ユエ「わ、解ってるわよ!自分でも!!(>□<;)」
 コウ「違うの・・」
 ユエ「?」

 コウ「ユエちゃんが・・私にそういう話してくれた事が・・
    何か嬉しくて・・・」
 ユエ「・・・・・・・だ、だって・・
    コウぐらいしかいないじゃない・・」色恋の覚醒切っ掛け作ったブツブツ



フラれた相手にこんな話をされているのにだ・・・。



それは、ただ純粋に友達だった頃の気持ち。

その会話は、自分が信頼に足り得る存在だという証。




 ユエ「ほ、他の人には言わないでよ!!」
 コウ「言っちゃおうかな〜」ムフフ
 ユエ「コウ!!」
 コウ「ウソウソw」

 ユエ「約束だよ!、破ったら・・」
と、脇腹をくすぐりにかかるユエ

 コウ「はぎゃっ!?」
 ユエ「駄目だかんね!!」コチョコチョ

 コウ「言わないよー!!」(>▽<)
 ユエ「絶対!!」コチョコチョ

 コウ「うん絶対!wギブギブ!!」ひー


中学2年の3学期・・前後の席順になった時
よく2人でやったくすぐり合い・・・





 コウ「・・・!」
 ユエ「あれ・・?」



ユエのくすぐっていた手が止まる・・

 コウ「ハハ・・なんでだろ・・・」
 ユエ「なんでだろうねw」

笑顔の2人の目からは、いつの間にか涙が零れていた・・・。


恥ずかしさ、緊張からの開放・・
初恋が本当に終わったのだという実感、寂しさ・・

そして、また昔の仲に戻れたような懐かしさ・・・
色々な感情が一気に溢れたに違いない。













 小学生「―――・・行けぇぇぇーーー!!」

そんな中、先程までジャングルジムで遊んでいた小学生達の声が
違う場所から聞こえてくる・・・

声のする方見ると、
1人の小学生を肩車したタツミが、それ以外の小学生達を追っている・・

 ユエ「・・た、タツミ・・・?;」
 コウ「馴染んでるね・・・;」新手の鬼ごっこかな?



 コウ&ユエ「・・クスッw」
思わず2人同時に吹き出し笑いをする・・



 コウ「ハハハw」
 ユエ「アハハw」
本人達も何に対して可笑しいのかよく分からないが
とにかく込み上げてくる感情に素直に従った・・



 コウ&ユエ「アハハハハw」
お互いもたれ合って、肩をくっ付けて笑うコウとユエ・・

そこに、ぎこちない壁はもう存在しない・・・。




 コウ&ユエ(また・・)




 コウ&ユエ(友達として・・・・・)





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by: へろ
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