彩花の騎士
ストーリー 30

昼休み。

騎士の館『シミュレータールーム』。


コウとカナコの勝負・・・

2人以外にも、事の発端となった現場にいた・・
イサミとフミコ。通信班のスミ、タエコ、スズナも集まっている。


 スミ「――・・じゃあ1人ずつ中に入っての、スコア勝負でいい?」

コクリと頷くコウ。

 カナコ「アタシは何だっていいわ・・」
首筋の髪を得意気にかき上げる・・

 スミ「順番はどっちから?」

 カナコ「お先にどうぞ」フフン
 タエコ(うわ〜・・イイ感じにやな奴だな;)

 コウ「・・じゃあ・・・」



大部屋に入っていくコウ・・・。




 イサミ「・・・・・」
そんなコウを見つめるというより、睨むと言った方がいい鋭い視線のイサミ・・・

 カナコ「・・・・・」
腕を組み、不敵な笑みを浮かべるカナコ

 フミコ「・・・・・」

 スズナ「・・・」あわあわ;

 タエコ「・・・」
場の空気などお構いなしに、ジャムパンをむしゃむしゃ食べるタエコ・・・。






・・ヘルメットをかぶり、訓練用UEサブマシンガンを手に持ったコウが
大部屋の中央に立つ・・・。

 コウ(・・スミちゃん、タエチー・・
    フミコちゃん、スズちゃんが付き合ってくれた特訓の成果を見せるんだ・・!)

 コウ(アユミ先生のお手本動画を思い出せ・・・
    ユミ先輩の言っていた平常心・・頭は常に冷静に・・)

目を閉じ、小さく深呼吸・・・


 コウ(私はやれる!!)カッ!


スッ・・と銃を構える。

それは特訓前後とは明らかに違う、スムーズ且つしっかりとした構え・・




 カナコ(・・ふ〜ん、思ったよりは様になってるじゃない)

 イサミ「・・・」
    (!・・・先週までの腰の引けた構えと違う・・・)



 コウ「スミちゃん、お願い!」
 スミ「了解」


それを受け、スミがコンピューターのスタートキーを押すと
コウのバイザー内や、観覧側のモニターに「READY」と表示された後・・

「GO」の文字と開始音が鳴る。

ランダムで現れるゴブリの立体映像を倒すスコアアタック。



 コウ(・・レーダーで敵の数と大まかな位置、距離を確認・・
    後ろはまだ異常なし、前だけ)

 コウ(3体・・一番前のゴブリにロックオン・・・オレンジ(射程外)。回り異常なし)

引き鉄にじわりと力を込めはじめる・・

 コウ(確実に・・・赤い二重円で・・・・・)
ロックオンモード時に表示される、相手との距離数値が減っていく・・



ダダダッ!、ダダダッ!!



射程内に敵が入った瞬間、引き鉄を引く・・

 カナコ(まだ早い・・)
 イサミ(あの距離では当たってもダメージは見込めない・・)

そんな2人の予想に反し、ヒットしたゴブリが仰け反る・・
これはクリティカルダメージ時の演出だ。

 カナコ&イサミ「!」


続けざまに追い撃ち・・


ダダダッ!、ダダダッ!!


・・1体目のゴブリが消滅

 コウ(よしっ、次!)






 カナコ「・・・・・・・なるほど、フルオート(連射)じゃなくて
     3点バースト(3発だけ発射)にすれば、弾数を減らした分
     エネルギー弾の密度が上がって、威力と射程が少し延びるものね」

 カナコ「誰の入れ知恵かしら?」

 スミ「・・・」
 タエコ「さぁ〜・・」ジャムパンむしゃむしゃ

 スミ(・・入れ知恵も何も・・・
    元はコウの撃ち過ぎる癖を直そうと、3点バーストに切り替えたら
    たまたま見つかった方法なのよね・・・(^^;))



 タエコ(でもその方法だけじゃ
     あの距離であのダメージを与えるのは普通無理・・)

 タエコ(“Aランク適合者”で、“妄想馬鹿”のコウだからこそ出来る、威力と射程)

 スミ(濃密なエネルギーに、貫くイメージの鮮明さ・・・。
    高い魔法力、イメージトレースとの相性の良さ、そして3点バースト・・・
    この3つが重なって完成した、サポート武器を主力として使うスタイル)

 タエコ(まだUEサブマシンガンしか使えないから・・って
     たった2日の付け焼き刃にしては上出来すぎでしょ)ジャムパンむしゃむしゃ


 スミ(それにしても・・普段の“妄想”で培ったイメージ力と集中力が
    こんな形で発揮されるなんてね・・・)(^^;)コウミラクル




そうこうしている間にも・・コウは2体目、3体目とゴブリを倒していく・・


 スミ(・・うん、良い感じ。
    早い段階で敵を倒して、次の狙いをしっかり定める・・)
 タエコ(ちゃんと余裕作って、テンパるのを防いでるわね)特訓の成果でてるわよ

 カナコ「このスコア勝負に特化した戦法か・・。
     フフン・・新人のくせに面白い事してくれるじゃない」
腕を組み、満足そうにモニターを見つめるカナコ・・

 タエコ「・・でしょ?」
 カナコ「まだまだ全然だけどね」ニヤリ







前方のゴブリを倒しきると、レーダーをチラッと確認し・・
体を反転させ、次に出現したゴブリに照準を合わせるコウ

 コウ(確実に狙って・・撃つ!!)

ダダダッ!、ダダダッ!!




 イサミ「・・・・・」
観覧モニターの横に表示されているコウのスコアが上がるに連れ、
イサミの握った拳に力が入る・・

 イサミ(・・・・・美里先輩・・・貴方は一体何なんですか!!)


 イサミ(先週までのヘラヘラしていた貴方は・・!!)

コウの真剣な姿と、基本に忠実で整ったフォーム・・
そしてそれに見合うスコアをはじき出す様を見て、

イサミの中に言い知れぬ苛立ちと、妙な高揚感が駆け巡る・・・。






 カナコ「・・・土日にコソコソやってたみたいね?、あの娘」

 タエコ「そーよ。誤解されたままじゃシャクだから、言わせてもらうけど・・
     コウはちゃんと努力するし、いつだって真剣な娘よ」
 カナコ「・・・」

 タエコ「まぁ・・抜けてたり空回りする事もたまに・・・いや、かなりか?」
 スミ「タエチー・・」(^^;)そこは・・

 タエコ「悪い悪い;。それはご愛嬌・・ってとこだけどw」

 フミコ「・・ッ」
顔を背け、誰にも悟られないよう・・小さく肩を震わせ笑うフミコ・・


 タエコ「・・とにかく、
     はじめてたかだか1週間で、この仕上がり見れば
     アンタも分かるでしょ?」コウの性分

 カナコ「フフ・・。みたいね・・・」
小さく笑った後・・
組んでいた腕を解き、右手を腰に当てて大部屋のコウを見る・・・。

明らかにカナコのその眼差しは、今までのものとは違う・・・

それが合図のように、何となく場に張り詰めていたピリピリした空気が
和らいでいくのが分かる・・・。


 フミコ「・・・」
ほぼ無表情だったフミコの口元も、どこか柔らかい・・

 スズナ(よかったですぅ〜・・・)ほっ
終始落ち着きのなかったスズナも、胸の痞えが取れたような顔。

 スミ&タエコ「・・・」
お互い顔を見合わせ、ニコリと笑う2人・・

 イサミ「・・・・・」







ビーーーーーーー!


電子音が鳴り、スコアアタックの終了を告げる・・・。

 コウ「・・・」
しばし立ち尽くした後・・銃を下ろし、ヘルメットを脱ぐ・・・


 スミ「御疲れ様。上がってちょうだい」
と、マイク越しの声・・




髪が顔に張り付くほどの汗をかいたコウが
大部屋からコンピューター部屋に戻ってくると・・・


・・パフッ


 コウ「わっぷ!?」

顔にタオルが飛んでくる・・

 コウ「・・?」


 カナコ「・・そんななりじゃ食堂行けないでしょ」
 コウ「え・・・?」

 カナコ「お昼ご飯、食べないと放課後もたないわよ」

 コウ「・・え?・・え??・・・あの、勝負は・・・?」

 カナコ「もぉ終わりよ、そんな事」
 コウ「へ?・・・え?、終わりって・・??;」


 カナコ「・・・」

 タエコ「カナコの不戦敗ってこと♪」
 カナコ「はぁー!!、アタシが負けるわけないじゃない!!
     アタシの平均スコア3万よ3万!!、3倍よっ!!!」
 タエコ「いやそんな全力で来なくても・・;」

 スミ(カナコさん、負けって言葉一番嫌いなのに・・)(^^;)地雷を・・・


 コウ「・・・・・???(・v・;)???」






 カナコ「――・・・と・に・か・く!
     さっさと汗拭いてお昼行くわよ!、“美里コウ”!!」
 コウ「!!。・・・・・き、桐原さん?、今・・」

 タエコ「いやもぉこの流れなら、お互い名前で呼び合えばいいじゃんw」


 コウ「・・えっと・・・桐原さんがいいのなら・・・・・」照れチラ・・
 カナコ「別に。好きにすれば?」プイッ

 コウ「・・じゃ、じゃあ・・・・・・・カナコちゃん!」

 カナコ「ちゃんーーー!?!?!?」(@□@川)思わず2度見ぃー!


 カナコ(・・うっわ・・何か凄い恥ずかしいんだけど・・・)(=v=;)小学生以来・・
 イサミ(桐原先輩・・・貴方のお気持ち、よく解りますよ・・・)

 タエコ「返事してやんなよ、カナコ“ちゃん”」ニッヒッヒ
 カナコ「ッ〜〜〜・・」


 スズナ「ツンデレさんですぅ〜」(^^)
 カナコ「聞こえてるわよそこっ!!」ビシッ!

 スズナ「ひぃ・・」
サッ・・とスミの背中に隠れる

 スミ「ホラもうみんな、お昼行くんでしょ?」(^^;)時間なくなるわよ


 カナコ「分かってるわよ!。
     ・・じゃ〜・・こ、コウ・・」
 コウ「・・・?」(^^)ニコニコ

 カナコ「今度はスコアアタック用じゃなくて、
     ちゃんと実戦向けの訓練を積みなさいよ!」
 コウ「うん!、任せて!!」(☆v☆)bシャキーン!

 カナコ「・・・;」ホントに大丈夫なの・・?シャキーンて・・・;


 タエコ「・・よっしゃ一件落着!、さぁ食堂が待ってるわよー!!!」
バシバシとカナコのお尻を叩くタエコ

 カナコ「ちょっ!?・・やめなさいっ!!!///」

 コウ「ニハハ(^▽^)」
 カナコ「コウはまだ笑うんじゃないわよっ!」
 コウ「ニハハ(^▽^)」←聞いてない


 フミコ(・・・・・桐原先輩ってこんな振り回される感じだったっけ・・・;
     先輩(コウ)達を通して見てるからかな・・・?)フフ・・

 イサミ(・・・・・ぬるい・・。
     だが何だ・・この感じは・・・。
     美里先輩・・・貴方は本当に何なんですか・・・・・)


笑っているコウの姿を、複雑な表情で見ているイサミ・・・・・。



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by: へろ
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