彩花の騎士
ストーリー 28

午後3時過ぎ・・・

騎士の館・1階『シャワールーム』。


 コウ「――・・でも連携訓練って面白かったねw」
シャワーを浴び終わり、蛇口を締めながら・・隣の個室のフミコに話し掛ける

 フミコ「はい」
 コウ「私が敵の足を止めてるところを、フミコちゃんがバキューン!!」

 コウ「・・ね!」
そう言って個室から身を乗り出し、隣のフミコを覗く

 フミコ「!?、ちょ、ちょっと先輩!」
 コウ「ん?」
 フミコ「覗かないで下さい;」

 コウ「えー・・入ってくる時もぉ見てるんだし、別にいいじゃない」
 フミコ「それとこれとはまた違うんです」

 コウ「そぉいうものかな〜・・・?」
身を乗り出すのをすんなりやめ、上がる仕度をする・・・

 フミコ「・・・・・」



 コウ「・・じゃあ先に上がってるね〜♪」

 フミコ「あ、はい」

コウはシャワールームを後にする・・・。





・・・キュッ

フミコもシャワーを止める。

 フミコ「・・・・・・・」
蛇口に手を置いたまま、しばし静止・・・

 フミコ(・・・・・なんだろ・・・・さっき先輩に覗かれた時・・・・・・)

 フミコ(・・・凄い緊張した・・・・・。)






 コウの声「・・あぁぁしまった!!、替えの下着忘れたぁっ!!!;」


脱衣所からコウの叫び声が聞こえてくる・・


 フミコ「・・ぷっ!」
自分の気持ちとの落差が激しすぎるその声に、思わず吹いてしまう

 フミコ「もぉ・・!」
考えるのも馬鹿らしくなり・・


シャワールームをさっさと出ると・・・


 コウ「フミコちゃん下着忘れた〜(T△T)」
 フミコ「聞こえてました」この人は・・

 フミコ「そればかりは貸せませんので、我慢して履いてたのを履いて下さい」
 コウ「ふひぃ〜ん・・・」汗がいや〜んな感じ;



・・・



このまま桜祭に向うコウとフミコは
ロッカールームで私服に着替え、その上に学校のジャージを軽く羽織る・・

校内を出るまでの処置だ。

 コウ「・・スミちゃん達も後から来るって言ってたし・・・」家で着替えてから

 コウ「・・よしっ!、じゃあ先に行こっか!☆」
 フミコ「はい」



・・・



バス停に向う2人・・・

学園の外周、通学路に植えられた桜並木を見上げながら歩く・・・

 コウ「・・この辺の桜はもぉ殆ど散っちゃったね・・・」
 フミコ「はい・・」

 コウ「上は咲いてるといいな〜・・・」
 フミコ「・・・」

 コウ「何だか懐かしいね、こうやって2人で桜見ながら歩くのw」散ってるけど;
 フミコ「フフ、そうですね」
 コウ「ってそんなに経ってないかw・・・よっと」
そう言ってコウは、
桜の根に持ち上げられた、地面のでっぱりを飛び越える・・

 コウ「でもあの夜のお花見会がなかったら・・
    こんな風に一緒に歩いてなかったかも?」
 フミコ「そうかもしれませんね・・・」

 コウ「シーナ先輩達、アパートのみんなに感謝だね!」
 フミコ「フフ(^^)」

 コウ「・・あ!、バス来てる!!」
通学路の坂の下に到着しているバスが目に入る

 フミコ「急ぎましょう」







・・・・・







『北門公園』。

日も徐々に傾き出し、桜祭の賑わいは
花見よりも宴会の様相が強くなってきている・・・。

園内のあちこちにある桜の回りには、ビニールシートが敷かれ
アルコールの回った大人達もちらほら・・

屋台が集められた広場、その一角に設けられたイベントスペースでは
子供会などの出し物も一通り終了し、飛び入りカラオケ大会がはじまっている・・・。


 ミヨ「・・・昔(小学生の頃)遠足で来た時とは随分違ってるね」雰囲気が
 チカ「こんなお祭りやってたんだ!」(☆▽☆)

 ミヨ「とりあえず海道先輩達がやってるテント探そ」
 チカ「ちょっと待ってラムネだけ買う!!」あれ飲まなきゃ祭はじまんねー!





・・・





人の出入が激しい、『北門公園の入口』。

 コウ「・・思ったより賑やかだね」着いた〜
 フミコ「・・・ですね」

 コウ「山奥の公園だと侮ってたよ・・」

 コウ「えっとじゃあまず・・飲物でも買って、少し静かなところ探してみる?」

 フミコ「・・はい(^^)」
あくまで花見、そしてお互い人ごみにそれほど強くないのを理解してかの発言に
フミコの返事にも自然と笑顔が混じる・・




・・・




この時間帯になると、純粋に花見をしに来た人の方が少ないのか

山(園内)の散策路に入ると、思いのほか空いている・・・


 コウ「・・・確かこの上登ったら、開けた場所があったはず・・」

子供の頃に来た記憶を頼りに、人の手が加わった綺麗な山道を進む・・・。






・・・・・





一方、テントが集まる広場・・・ケイの地区のテント前。

 チカ「二階堂チカ、及び此花ミヨ、只今到着っス!」敬礼ビシッ!
 リサ「うむ、御苦労!」敬礼ビシッ!

 ケイ「バカやるならテント裏でやりな、お客さんの邪魔だよ」

 ミヨ「すみません海道先輩(^^;)」
と、敬礼したままのチカの首根っこを掴んで、ズルズル引きずる・・

 ケイ「おぅ!、あとアタイの事は“おケイ”でいいからね」名字だとくすぐったい



テント裏にて改めて・・

ゲームセンターで貰った、コスチュームコードが書かれたカードを
財布から取り出すチカ・・

 チカ「・・ではこの伝説のカードを授けましょう!」
 ミヨ「参加賞ね」

 チカ「ミヨうるさい!(>□<)」

 チカ「・・ではこの伝説のカードを授けましょう!」
 ミヨ(またそこからやるんだ・・・;)

 リサ「ははー!!」ペコリ
片膝を地面につけ、両手を前に差し出すリサ

 ミヨ(リサ先輩も好きだな〜・・・(^^;))



カードは無事手渡され・・

 リサ「よっしゃ春巻ちゃんの赤チャイナGETキタコレーーーーー!!!」デデデー!


 チカ「ニシシ!」
リサのはしゃぎっぷりに、渡したチカも満足気な笑顔。

そんなチカを見て、妙に嬉しい気持ちになるミヨ
 ミヨ「・・・フフ(^^)」

 リサ「ありがとね!、チカ!!、ありがとぉーーー!!」
チカの手を両手で取って、ブンブン揺する

 リサ「おーいサチーーー!、貰ったよぉーーー!!」
奥で作業をしているサチに向って、カードを持った手を振る・・


 サチ「グッジョブ。」キラリーン☆b


 チカ「なんて言ったの?」
 ミヨ「良い仕事したって・・」
ポンポンとチカの頭を軽くなでるようにたたく・・

 チカ「まぁーね!、ニッシッシ!」
人差指で鼻の下を擦って、得意気にはにかむチカ

 ミヨ「ふふふ、良かったね(^^)」







・・・・・







 コウ「――・・小学校の遠足でお弁当食べたのここだ!」

散策路の先・・小さな丘の上、芝生一面のちょっとした広場に到着。

いくつかの家族連れが帰り支度をしている以外、人はまばらだ・・・


 フミコ「人も少なくていいですね」
 コウ「うん、桜もバッチリ見下ろせるよ!」
登ってきた方を見ると、なかなかに良い景色が広がっている・・・。


 コウ「じゃあここで・・」
と、ゴソゴソ鞄を漁る

 フミコ「?」
 コウ「ババーン!、レジャーシ〜トぉ〜!!」

取り出したレジャーシートを広げると、
御世辞にも可愛いとは言えないカエルのキャラクターが画かれている・・・

 フミコ「・・随分とブサイクなキャラクターですね;」
 コウ「でしょー!!w、前に住んでたところの商店街で貰ったんだけど・・
    “ゲロリンゲコッピ”ってゆるキャラ」
 フミコ「全然知らないです・・・」
 コウ「うん、私も」(^^;)自分で言っててだけど・・

それを敷き・・・

 コウ「ふ〜〜〜・・・」
靴を脱ぎ、足を伸ばして座る


 コウ「夕方のお花見もなかなかいいね♪」
 フミコ「そうですね・・」
フミコも靴を脱ぎ、コウの隣に座る。

コウは道中で買ったジュースと、持参したお菓子を広げながら・・

 コウ「とりあえずこれで・・。晩ご飯はあそこの屋台で済ませよっか」
 フミコ「はい」




・・・




・・・桜の事、今日の特訓の事、買ってきた新発売のお菓子の事・・・・・
普段と大して変わらない、他愛ない会話をしながら時は過ぎていく・・・

ただ2人は知っている・・

気の合う人と、同じ場所で、同じ物を見て、同じ時間を共有する
その心地良さを・・・。




・・・





・・・陽もかなり落ち、夕暮れが迫る中
屋台広場や、その近辺の桜は夜桜用のライトアップがはじまる・・・・・・

コウ達のいる場所には街灯が数本・・

下の賑わいとは違う静けさと、明るすぎない光・・・。


そんな状況と・・

 コウ「・・・うん、・・・うん・・」
週末の特訓で、流石に疲れが溜まったのもあってか
コウの目は虚ろになり、話の受け答えもズレはじめている・・・。


何より隣にフミコがいるという安心感・・・



 フミコ「・・・・・」

それを見たフミコは、自分のジャージを丸め・・枕の代わりを作る

 フミコ「先輩、枕ありますよ」

 コウ「ふにゃ〜〜〜・・・」
もはや寝ぼけた状態でそれを受け取り、レジャーシートに寝転ぶ

続けてフミコは、コウのジャージを彼女の上にかける・・・




 コウ「・・・ZZZ・・・・・」




 フミコ(・・相変らず先輩は無防備なんだから・・・・・)

しかしそれは誰に対してもという訳ではない・・・。




 フミコ「・・・」
そっ・・と、コウのメガネを取り、折り畳む・・
自分の指紋がレンズにつかないよう、優しくそれを持ったまま、

おそらく今年最後であろう桜を、1人静かに眺める・・・。





 コウ「・・・・・さくら・・きれ〜らね・・・・・」寝言


 フミコ「・・・フフ、そうですね・・・・・。」




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by: へろ
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