彩花の騎士
ストーリー 26

日曜日。

まだ寒さが残る早朝・・・

桜祭が行われる『北門公園』に通じる、山道のふもとにあるバス停。


 リサ「・・ふぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜あ・・・さぶさぶ・・;」
これでもかと大きなあくびをした後、
手を交差して二の腕を摩りながら、バタバタ足踏みをするリサ・・・。

眠気と寒気のダブルパンチ。

対照的に、ベンチに座り
携帯ゲーム機を黙々とプレーするサチ。


 リサ「オイラもマフラーしてこりゃよかった〜」(=□=;)
 サチ「防寒。」

サチのトレードマークともいえる、ニット帽・マフラー・タイツの3点セットは
私服時でも健在だ。


 リサ「・・んで、今どこ?」
そう言いながら、サチの携帯ゲーム機を覗き込む・・・

少女のアバターが、大剣で敵を次々と薙ぎ倒していくアクションRPGだ。

サチの手捌きは凄まじく、ほぼ全てのボタンを素早く駆使し
近未来風のダンジョンを一騎当千で突き進んでいる・・・。

 サチ「プラントB9。」
 リサ「早朝にラスダン最下層行っちゃったコレ!?」

 サチ「寝落ち。再開。」
 リサ「なるなる。ウシシw、サチもまだまだだね〜」

リサはベンチの後に回り込み・・
サチの肩に顔を乗せて、ゲーム画面を見る。

 サチ「重い。」

 リサ「サチはつおいから、オイラが邪魔するのだ!」
サチの頬を突ついたりと、リアル妨害をするリサ・・・

 サチ「良いハンデ。」
それでも黙々とゲームを続け、ボスを圧倒するサチ。



・・・そうこうしていると・・・・・。




 ???「おーーーい!」

 リサ「んにゃ?」
聞き覚えのある声がリサとサチを呼ぶ・・

声がした方を見ると・・
バス停の反対車線に、軽トラックが停車している。

そして運転席の窓から、ケイが手を大きく振っている・・・


 リサ「お迎え来たよ!」
 サチ「了解。」
サチはゲーム画面にエンディングが流れていても、躊躇なくスリープモードにし、
携帯ゲーム機をポーチに締まって、鞄に入れる。



2人は左右を確認し、車道を渡って軽トラックの元へ向う・・

 ケイ「おはよう!」
 リサ&サチ「おはようございます」

 タエコ「おはよー」
軽トラックの助手席に座っていたタエコも顔を覗かせる。



 ケイ「ちゃんと時間通りに来たね!」
 リサ「チッチッチ・・言っときますけど、あっしも車両班ですよ!☆」
   (ホントはおケイ先輩が恐いからなんだけどね〜・・(=v=;))
 サチ「時間厳守。」

 ケイ「感心感心w」


・・パシャ!


その瞬間だ、車の窓枠に肘をのせ笑うケイの姿を
リサが自前のデジタルカメラで激写する。

 ケイ「あ、コラ!、なに撮ってんだい!」
 リサ「ニヒヒ・・記念ですよ記念♪。『桜祭いざ出陣!』ってね」

 リサ「いや違うな〜・・・」
 サチ「軽トラック。」
 リサ「そう!それ!、タイトルは・・う〜ん・・・
    『世界一軽トラが似合う女子高生』!。
    よっ!、世界一軽トラが似合う女子高生!!」

 タエコ「ハハ・・;」
 ケイ「全然嬉しくないわ、そんな称号」何故2回言った・・

 ケイ「朝からバカ言ってないでさっさと荷台に乗りな」車道でダベってないで
親指でクイクイっと荷台を指す

 リサ「ちぇ〜・・」


この世界(日本)では、緊急時はもちろんだが
通常時でも徐行速度に限り、荷台に人を乗せる事が許されている。


 リサ「・・2人共乗りましたよ〜」
 ケイ「はいよ。んじゃ出発〜」





緩やかなカーブが続く山道を、まったり登る軽トラック・・・。





少しずつ陽の暖かさが実感できるようになり
程よい車の振動が、リサの眠気を誘う・・・

 リサ「・・・ふぁ〜〜〜あ・・・・・・・ハッ!?」

 リサ「・・ヤバイヤバイ、こんなところで寝たら落ちて死ぬよ;」
 サチ「御名答。」

 リサ「これがホントの“寝落ち”だね!」
 サチ「0点。」

 リサ「ダメか;。
    じゃ歌でも歌って眠気飛ばすかな〜〜〜!」


 リサ「♪ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪」
結構大きめの声で歌うリサ


 タエコ(荷台に乗ってその選曲はベタ過ぎでしょ・・・;)
 ケイ「・・あんのバカ」朝から大声で・・

 ケイ「タエコちょっとリサに止めろって言って」
 タエコ「はい(^^;)」


窓を開け、身を少し乗り出して・・荷台のリサに注意するタエコ


 リサ「・・やっぱしw」
 サチ「班長。御立腹。」

 リサ「ひぃ〜止めてよー(><;)」


・・・すると、サチが急にリサの手を握る。

 リサ「!?。どしたの?」あらま大胆

 サチ「落下防止。仮眠可能。」
 リサ「うきゃー!サチ優しいvvv」(>▽<)ノ

 サチ「沈黙を要求。」

 リサ「んじゃお言葉に甘えて〜♪」
そう言って、サチの肩にもたれ掛かり目を瞑る・・・。



無表情なサチだが、握る手をギュッと・・少し強めた・・・・・・・。







・・・・・








 ケイ「―――・・きな・・・起きな・・」

 リサ「・・・・・ふにゃ・・?」
寝ぼけ眼で、右目だけを小さく開けるリサ・・

 ケイ「もぉ着いてるよ」

 リサ「・・・・・」
状況が分からず沈黙・・

の後、辺りの騒がしさに眠気も引いてくる・・・


軽トラックの荷台で仮眠を取っていた事を思い出したリサ。


 ケイ「大丈夫かい?、ほらコレ」

そう言ってケイが手渡したのは、水滴が付いた冷たいペットボトルのお茶


 リサ「あ、どもです」
早速開け、一口飲んでリフレッシュ・・

回りを見渡すと、砂利・・より少し大きめの石が敷き詰められた駐車場だ。

桜祭の関係者と思しき“淡いピンクのはっぴ”を着た人達が
慌ただしく、止めてある車から荷物を運んでいる・・・。


 ケイ「行けるかい?」
 リサ「・・キュピーン!、お任せ下さい!☆」
テヘペロ顔で敬礼をするリサ

 ケイ「スイッチ入ったねw。
    じゃあ広場にアタイの地区のテントあるから
    そこでタエコを手伝っとくれ」
 リサ「ラジャ!☆」




・・・




1人広場に向う道中・・

 リサ「・・うんうん♪、春だね〜♪」(=ω=)

人工物とはいえ、小川のせせらぎが耳を楽しませ
名前もよく分からない小さな花が、目を楽しませる。


すると前から歩いてくる人影が・・

 リサ「お!・・サチー!」

ダンボール箱を抱えたサチだ。


手をブンブン振るリサに気付いたサチは、少し歩くスピードを早める・・

 リサ「やぁやぁご苦労ご苦労」
 サチ「重役出勤。」

 リサ「テヘヘw、起こしてくれればよかったのに〜」
 サチ「した。熟睡。」

 リサ「あれま、昨日の夜更かしきいちゃったかな?。
    それより手伝うにょん♪」
 サチ「いい。テントにて合流。」

 リサ「?。あっしには他の仕事があるってわけね?」

コクリと頷いたサチは、そのまま駐車場へ向っていった・・・。



・・・



リサがテントに着くと、
エプロンをしたタエコが、大きな鍋の用意をしている・・・。

その横で、下準備済みであろう材料の入ったケースを並べる
エプロン姿に微妙な違和感がある・・スラッとした長身の女性・・・・・

 リサ「・・え、え、えぇーーー!?
    “フウマ”先輩がお手伝いの最後の一人だったのぉ!?」Σ(@□@;)マジ・・


突撃班の班長、3年の風真マキである。

常日頃から“武人”のような振る舞いのマキが、この場にいる意外性・・
防衛団に1年間もいれば、自然とリサのようなリアクションになるのは至極当然。


 タエコ「・・ん?、リサ遅い!」
驚いたままのポーズで固まっていたリサに気付いて一言・・

 リサ「いやだってフウマ先輩が!?・・・あ、おはようございます。」ペコリ
 マキ「おはよう」

 リサ「いやだってフウマ先輩が!?」
 タエコ「同じリアクション2回しなくていいから先手伝いなよ!」

 リサ「いやだってフウマ先輩が!!」
 タエコ「3回目!」イラッ

 マキ「・・すまない。自覚はしていたが・・
    私は場違いのようだな」

 リサ&タエコ「違います違います違いますっ!!」
慌ててマキに詰め寄って誤解を解く2人

 リサ「ちょっと意外だっただけで、全然そういうのじゃないですから!!」
 タエコ「そうです!、リサがうるさかっただけでっ!!」

 マキ「・・そ、そうか?」

 リサ&タエコ「はい!、はい!!」

マキは少し照れくさそうに、人差指で頬を掻く・・


 リサ&タエコ(うおぉぉぉー!!、今凄いレアなもの見た気がっ!!!)


リサは電光石火の早さで、ポケットからデジカメを取り出し
そんなエプロン姿のマキを連射モードで激写しまくる・・



 リサ「ハァ・・ハァ・・・・・」
   (こ、こいつぁスゲーぜ・・・・・)ゴクリ



 ???「リサっ!!!」

 リサ「ひっ!?」ビクッ

テントの前で、カメラを握ってハァハァ言っていたリサの後ろから
いつもの“喝”の声が飛んでくる・・

振り返ると、ケイが両手を腰に当てて仁王立ちしている。


 リサ「・・そろそろオイラも本気出しちゃおっかな〜・・
    出るよ〜、お手伝いの鬼に出るよコレ〜」(;・3・)〜♪







・・・・・








一方その頃、『騎士の館』では・・・

ロッカールームでジャージに着替えるコウ。
そしてフミコ。

 コウ「――・・フミコちゃんホントに良かったの?」せっかくの日曜なのに・・
 フミコ「はい」
    (先輩が頑張っているのに、夕方まで家でゴロゴロなんて出来ません)


・・・


そんなコウ達を待つ、スミがいる『シミュレータールーム』・・

 スズナ「――・・えぇっと・・これがこぉで・・・こうですねぇ」
 スミ「うん、バッチリ(^^)」

こちらでは、通信班の1年・・スズナが特訓メンバーに加わっている。








・・・・・








午前10時半頃・・・

『北門公園』には、家族連れやお年寄りの花見客が集まり出す・・・。

あちこちに桜があるため、公園全体が花見場だが
一応のメイン会場として、グラウンドより一回り小さな広場に
出店のテントが集められている。


広場をぐるりと囲うように並ぶテントの中の一つ・・
ケイの地区から出すのは・・おしるこ。

 ケイ「――・・そ、一杯の量はそれぐらい」
店番をするタエコとリサに、手ほどきをするケイ・・・

 リサ「えっと白玉オンリーが250円で・・
    栗2個プラスが300円・・・・・うっわ“姫U”6回もできんじゃん!?」もったいな!
 タエコ「はぁ!?、喫茶店だともっと取られるわよ!
     しかもおケイ先輩クオリティーなら1000円はガチ取れるし!!」

 ケイ「ホラもめない」

 タエコ「だっておケイ先輩、リサが・・」
 ケイ「人それぞれ価値観が違うんだから」やれやれ

 リサ「そーそ、価値観が違うんだな〜これが」
リサは試しに入れたおしるこを一口啜る・・・


 リサ「!?!?・・・こ、これは・・・っ!?」
頭上を走る稲妻・・


そのまま食べ進め、無言で2杯目を入れる・・


 タエコ「コラコラコラコラコラ!何やってんのアンタ!!」
 リサ「こ、これがおケイ先輩クオリティー・・・
    洋菓子派のあっしが一撃で・・・ば、バカなっ!?」(@△@川)
ブツブツ言いながら2杯目も完食し・・


3杯目を入れようと、おたまに手をかけたところで
ケイとタエコに腕を掴まれ・・

テント裏に放り出される・・・。


 マキ&サチ「?」
テント裏で作業をしていたマキとサチが、何事かとリサを見る・・

 リサ「・・危うくおしるこジャンキーになるところだったぜ・・・へへへ・・」
1人つぶやきながら、頬の汗を手の甲で拭うジェスチャーをする・・


 マキ「どうしたのだ?リサは・・・」

 サチ「解雇。」



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by: へろ
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