彩花の騎士
ストーリー 25

時間を少しだけ戻し・・・

コウが騎士の館の『シミュレータールーム』で特訓をしていた
土曜日のお昼前・・・。




彩花街の隣街、『叶街』。

駅とバスターミナルを中心に、
そこそこの繁華街が広がる、七日市で最も賑やかな場所。

若者が中心の駅前ビル周辺・・
高齢者が中心の、駅から少し歩いた所にある商店街・・・


土曜日という事もあって、どちらも多くの人々で賑わっている。


しかしそれはお店がある周辺だけの事であり・・

特に商店街の方面は、少し路地に入ると
一変して静かな下町が広がっている・・・。



人通りが途端に減る、下町特有の一方通行の狭い道・・
そこを20代ぐらいの女性が歩いている最中、事件は起こった・・・。

原付バイクに乗ったフルフェイス男による引ったくりだ。



無理矢理ショルダーバッグを引っ張られた女性は転倒し、
突然の出来事と恐怖が相俟って、叫ぶ事すら出来ないでいる・・・。



走り去っていく原付バイクをただただ見る事しかできない女性の横を
物凄いスピードで駆け抜けていく人影・・・

 マキ「・・・」

偶然現場に居合わせた
突撃班の班長、3年の風真マキだ。


その走る姿は、漫画やアニメなどで見る“忍者”そのもの。
前傾姿勢で両腕を左右に広げるは、風を切る翼の如く・・

みるみる原付バイクに追い付くやいなや・・・


 マキ「・・・」

何一つ躊躇なく、窃盗犯の背中に飛び蹴り!!!


 犯人「っげふぅっ!?!?!?!」(;@3@)∴

犯人はダイナミックに吹っ飛び・・
原付バイクは地面を擦り、小さな火花を散らしながら転がっていく・・・

奪われたショルダーバッグは、勢いで空を舞う・・

マキは蹴った反動を利用し、そのままバッグを空中キャッチ・・・の後
シュタッ・・と、華麗に着地。



続けて、倒れた犯人の元に向い・・フルフェイスを脱がす

 マキ「・・・・・やり過ぎたか・・」

白目をむいて気絶している犯人・・・。

しかし言葉とは逆に、容赦なく手にしたフルフェイスを犯人の足にねじ込む・・
気が付いても容易に逃走させないためだ。

最後にケータイで警察に通報。

あまりの手際の良さ・・・。




・・・少しし、被害にあった女性がヒールの折れた靴を手にして
フラフラとやって来た・・・。

 マキ「・・大丈夫ですか?」
 女性「・・・・・」
マキが手にするバッグを見る・・・

スッとバッグを手渡す・・

 女性「あ、ありがとうございます!!」
受け取った瞬間の顔を見るに、余程大事な物が入っていたのだろう・・・。


よく見ると、女性のストッキングは破れ、血が出るほど擦りむいている・・
痛みと、先程の恐怖もあってか、震えてもいる・・・

それでもここまで追いかけて来た・・・。


そんな女性に対しマキは・・・

 マキ「・・・失礼」
 女性「え!?」

無表情のまま、女性を軽々とお姫様抱っこで抱え上げる・・

 女性「!?・・/////」

そのまま近くの腰を下ろせそうな場所まで運び、そっ・・と座らせる

 マキ「・・・少しすれば警察が来ます」
そう言って、女性の横に座る



 女性「・・・・・」
 マキ「・・・・・」
お互い何も話さないが
安堵感か、女性の震えは止んでいた・・・。



突撃班班長、風真(カザマ)マキ。
その常人離れした身体能力と、
名字を“忍者 風魔小太郎”にかけて・・“フウマ”というあだ名がある。

クールな態度に秘められた、熱い正義感と優しさ・・・
「三枝女子 憧れのお姉様ランキング」、現トップ3の1人だ(新聞部調べ)。






・・・・・





同、叶街。商店街奥の2階店舗『鬼瓦ファイティングジム』。

格闘技全般を扱っている・・らしいスポーツジムだ。
リングやサンドバッグなどの一通りの設備は揃っているが

立地条件と、オーナー兼コーチである鬼瓦氏の“胡散臭さ”から
あまり人が寄りつかない、廃れたジム。


そんなガランとしたジム内に少女・・にしては大柄;、タツミと・・

見るからに恐持てな、虎の刺繍が入ったスカジャンを羽織るトキエの2人が、
ベンチでボー・・ッと座っている。

 トキエ「――・・・姐さん遅いな」

それにコクリと頷くタツミ

 ???「フェッフェッフェッ・・また仕出かしたようじゃの・・」
怪しい笑いをしながら、窓から外を見るは・・
腰の曲がった小さな老人。

ツルツルの坊主頭に対しての、長く白い髭・・
室内にも関わらず、インチキ臭漂う丸いサングラス・・・彼が鬼瓦だ。


 トキエ「は?」
鬼瓦の見る窓から、トキエが外の様子を覗う・・

パトカーと人だかりが見える。


 トキエ「あそこに姐さんがいるのかい?」
 鬼瓦「うむ。迎えに行ってやるがよい」





・・・





引ったくり犯が捕えられた現場。

警察官と被害にあった女性、そしてマキが何かを話している・・・。

 トキエ「・・・お!、いたいた!。
     ホントにあのジジィ、何でもお見通しだなw」

トキエとタツミの姿に気付いたマキ。


 マキ「・・では私はこれで」
 警察官「御協力感謝します」

 女性「あの!」
 マキ「?」
 女性「ありがとうございました!!」
深々と頭を下げる女性

 マキ「いえ、当然の事をしたまでです。」
 女性「はうっ!」(V▽V)vvVズキューン!=3

 警察官(い、言ってみたーい!私もそんな事、さらっと言ってみたーいっ!!)



・・・



 トキエ「・・姐さん遅いと思ったら・・何してたんですか?」
 マキ「不逞の輩を成敗していた」

 タツミ「・・・」
表情には出ていないが、興味有りげな視線のタツミ

 トキエ「せ、成敗・・?;」
トキエが現場の方を振り返ると、女性がまだ深々と頭を下げていた・・・

 マキ「・・・」

マキはそれ以上何も語らない。


そんなマキの背中を見るトキエの目は、キラッキラに輝いている・・


 トキエ(くぅ〜〜〜!、姐さんやっぱカッケぇなぁー!!
     この人見てると、こぉ胸の辺りが・・・熱くなるんだよ!!!)ぐっ


 マキ「・・どうした?」

 トキエ「いや、何でも!」
ニシシと・・はにかんだ笑いで返すトキエ

 マキ「そうか・・・。」



 トキエ「・・あそうだ!、ユエのやつ少し遅れるって言ってましたよ。
     陸上部の練習延びるとかで・・」
 マキ「ふむ・・。では私達もユエが来るまで
    老師(鬼瓦ジム)のところで稽古といこうか・・」

 トキエ「やったなタツミ!、
     念願の姐さんとのスパー(スパーリング)できるな!!」

コクリと頷くタツミ・・その目は熱い。




マキの背中に付いて歩くトキエとタツミ・・


その後ろ姿を見るギャラリー達・・
 野次馬「今時の女子高生は凄いわね〜・・」
 野次馬「捕まえたのって、回覧板に書いてた引ったくり犯でしょ?」
 野次馬「そうそう、助かるわ〜」


 ???(おほー!!、スクープ来たわよー!!!♪♪♪)(☆▽☆)φ

人だかりの中には・・ちゃっかり新聞部部長、ヨシコの姿もあった・・・。



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by: へろ
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