彩花の騎士
ストーリー 23

土曜日(休日)、朝 8時50分頃。


 コウ「――・・ふー!、終わった〜!」
自室のベランダで、両手を腰に当ててやりきった顔。

快晴の下、溜まった洗濯物を干し終えたコウ。
まだ少し残る肌寒さも、この空の下では心地良いものだ・・・


 TVの声「――・・悪い子には天のお仕置きです!!
     必殺必中!天罰天誅!愛のラブシャワー!!」
 TVの声「ギャラクティカラブメテオスマッーーーシュ!!!」
 TVの声「ぎょえぇぇぇぇぇーーーっ!?」


 コウ(・・あ!、ボーッとしてる場合じゃなかった;)
ガラス窓越しに聞こえてきた、点けたままのテレビの声にハッとする・・

ベランダから空の洗濯カゴを持ち、部屋に入ると・・
テレビの中では、魔法少女が怪人をやっつけ一件落着していた。

 TVの声「愛銀河の使者、プリズムシャイニースターにお任せ♪」シャキーン!☆
 TVの声「今日もソラちゃんデラギャラクシーだキラッ!」(☆□☆)カッ

 コウ(ハハw今のシリーズこんななんだ・・)(^^;)デラギャラクシー?


テレビをチラ見した後、洗濯カゴを洗濯機の上に戻し・・
食パンをオーブントースターに入れる。

パンが焼けるまでの少しの時間、
コーンスープの素を入れたマグカップを混ぜながら、
立ったままテレビの続きを見る・・

魔法少女アニメの軽快なエンディングが流れている・・・

 コウ(・・昔に比べて凄いキラキラ度増してるな〜・・・w。
    あ、この紫の娘かわいいかも)


・・チーン!


そんな事を思っていると、オーブントースターのタイマーが鳴る。

 コウ「パンパンパっン、焼けた〜〜〜よ〜♪」
今聞いたエンディングのリズムに、適当な歌詞を入れて口ずさむ・・




・・・




制服に着替え、出かける仕度を済ませたコウ。

 コウ「・・戸締まりよし!、ガスの元栓よし!、鍵持ったよし!」
しっかり声に出して、指をビシビシ指しながらオーバーアクションで再確認。


ローファーのつま先をトントンとし、靴を馴らして出発。




部屋の鍵をかけていると・・・


・・ガチャ


隣の部屋のシイナが、同じく制服姿で出てきた・・

 コウ「あ、おはようございます」
 シイナ「あ、おはよー。コウもガッコ行くの?」

 コウ「はい!」
 シイナ「ん〜?、朝からテンション高いわね〜」

 コウ「そ、そうですか?」
 シイナ「お姉さんにもその元気分けなさい!」
そう言いながら、コウの横腹を揉む・・

 コウ「ひぃっ!?!?!?」ビクビクゥッ!?
思わず腰が砕ける

 シイナ「あははははw」

 コウ「し、シーナ先輩・・・;」
 シイナ「んじゃお先〜☆」

 コウ(・・う、ウィンクが眩しい・・・!)






・・・・・





騎士の館『休憩室』。

 タエコ「お待たせ!」
 コウ&スミ「おはよー」

ジャージ姿のコウに、制服のままのスミとタエコ。

 スミ「じゃあ早速はじめよっか(^^)」
 コウ「うん!、お願いします」
 タエコ「任せなさい!」フンッ
 コウ&スミ「ハハw」

そんな会話をしながら、3人はシミュレータールームに向う・・
コウの“土日特訓”のはじまりだ・・・。




・・・




一方その頃・・
ロッカールームでは、整備班が着替えをしていた・・・。

 アカネ「ふぁ〜〜〜〜〜あ・・・」
大きなあくびをしながら、スカートを脱ぐアカネ・・

 シノブ「ちょっとアカネさん!」
 アカネ「・・はぁ?」
 シノブ「はしたないにも程があります!!」
 アカネ「土曜の朝からキャイキャイ言いなや・・」
 シノブ「貴方がだらしないからでしょう!」
 アカネ「へいへい・・・」

 シイナ「もぉベテラン夫婦みたいなやり取りね・・・w」
 モトコ「(^^;)」


・・そんなこんなで・・

背中に“三枝女学園”と刺繍された、オレンジ色のツナギに着替えた
シイナ、アカネ、シノブ。

 アカネ「・・やっぱしモトコのだけ可愛いすぎやろ!」
 モトコ「そ、そうでしょうか?」

モトコは自身が着る、キッズサイズのピンク色のツナギを見る・・

 モトコ「アタシもみなさんと同じ色がよかったのですが・・」
 シイナ「キリア先生?」
 モトコ「はい・・先生がこれを着ろと・・;」

 アカネ「キリアせんせ、どんだけモトコお気に入りやねん!」
 モトコ「あいや、たぶんサイズがなかったからだと思いますよ(^^;)」

 シイナ(そう思ってるのはモトコだけだと思うけど・・・・・。)


 アカネ「・・せやけど、やっぱジャージよりこっちのが気合入りますねw」
 シイナ「そうね(^^)、アタシ達の戦闘服って感じかしら?」

 アカネ「どやシノブ?・・ウチ、デキる女みたいやろ?」アッハ〜ンv
 シノブ「・・・・・」

 アカネ「何か言えやっ!!!」(◎□◎川)ブォーン!


 シイナ「はいはい。ほいじゃま、行きますか!」
 シノブ&モトコ「はい」
 アカネ「・・・」ツーン

 シイナ「不て腐れないの(^^;)」


新しい年度という事もあり
土日の休日返上で、武具の一斉点検を行なう整備班・・・。

彼女達もまた、裏方で防衛団を支えている立派な騎士様だ。





・・・・・





『シミュレータールーム』。


 スミ「・・コウの場合、無駄に撃ち過ぎてると思うの」

コンピューター部屋のスミとタエコが、大部屋のコウにアドバイスをする。

 タエコ「魔法力が高いから、他の人より疲れは感じ難いだろうけど・・
     実際はシミュレーターと違って、走ったりするし
     1つの敵に集中し過ぎて回りがちょっと疎かね」
 コウ「う、うん・・
    でもなんか・・必要以上に撃たないと、落ち着かなくて・・;」

 タエコ「既に死んでる“ゴキ”に、念を押して殺虫剤かけまくりたくなる衝動ね」
 コウ「ハハ;。近いかも、それ・・・」

 スミ「もぉ〜2人共・・(^^;)。
    じゃあコウ、一回こっちに来て・・。アユミ先生のお手本動画あるから
    時間もあるし、これ見ながら順々にやってこ」
 コウ「うん!」

気の知れた友人だけで、回りに優秀な1年生もいない事で、
“先輩として”の妙な焦りや小さなプライド、気張りは消え
基礎の基礎からじっくり訓練に没頭するコウ。






・・・約3時間後。






ぶっ通しの訓練に、ひとまず休憩を入れる。

丁度昼食時・・
コウ、スミ、タエコは『休憩室』に向う・・・。


 タエコ「――・・最初に比べて大分様になってきたわね」
 コウ「そ、そう?」
タオルで頬を拭きながら、ほのかに微笑むコウ

 スミ「うん、良くなってきたと思うよ(^^)
    私達は通信班だから、実際の戦場には出ないけど・・
    色んな人達の戦いは後ろで見てるから・・」
 タエコ「こぉ・・ズッシリした感じ?、アレ出てきた」
 スミ「そうそう」

 コウ「???」

 スミ「腰が入った・・って言うのかな?」
 コウ「よく解らないけど・・2人とアユミ先生の動画に感謝だね!!」



休憩室。

スミが大きなバスケットと水筒をローテーブルの上に置き、
それを囲んで3人がソファーに座る。

 タエコ「いや〜お腹減ったお腹減った・・」
使い捨てのお手拭きで手を拭く・・

 コウ「スミちゃんゴメンね、お昼まで作ってもらっちゃって・・」
 スミ「気にしないの(^^)」

バスケットの中には、色とりどりのサンドウィッチがギッシリ。
水筒から紙コップに注がれたのは、熱々のスープ。

 タエコ「うほ〜!、おいしそっ!!」
 スミ「じゃ〜・・」

 3人「いただきます!」


・・・


 タエコ「隠し味の黒コショウ・・やるわねスミ」キラーン☆
 スミ「ど〜も(^^;)」
 コウ「うん!、凄くおいしい!」

 コウ「ムグムグ・・。・・・ねぇ」
 スミ「ん?」
 コウ「今更だけど・・桐原さんってどんな娘なの?」

 タエコ「カナコね〜・・・キッツイ性格だからよく誤解されるけど・・」
 スミ「そんな悪い娘じゃないよ(^^)」
 コウ「・・・」

 タエコ「うん。若干、度が過ぎちゃう事もあるけど・・(^^;)」
 スミ「根が真面目だから・・」
 コウ「そっか〜・・・」


そんな話をしていると・・・

 シイナ「――・・およ?、お昼ご飯?」

整備班の4人も一息入れに、休憩室に入ってきた・・・。

 コウ「あ、どもです」


 アカネ「・・お!、えぇもん食べとるやんけ!!」
アカネは入室早々、バスケットの中のサンドウィッチを1つ拝借

 タエコ「アカネぇー!、それアタシのキープしてたミックスじゃん!!!」
 アカネ「へぇはなひほふふらい(えぇがな1つぐらい)」
食べながら話すアカネ

 シノブ「アカネさん!、行儀悪いですわよっ!!」

 スミ「タエチーもホラ、まだ下の段にあるから;」

 シイナ「賑やかねぇ・・w」
シイナは持参した“30秒でエネルギー鬼チャージ!”がキャッチコピーの
ゼリー飲料を飲みながら、壁にもたれ掛かる・・

 コウ&モトコ「・・・(^^;)」



 モトコ「・・整備班の皆さんもキリア先生からお昼ご飯もらってますんで・・」
そう言って、ローテーブルの上にコンビニ袋を置く・・

アカネはその袋をひっくり返し、机の上に中身を全て出す・・

大量のコンビニおにぎり。

 アカネ「この差な!、この差!!。手作り求めるだけムダっちゅー話」
 シノブ「せっかく買って下さったのに贅沢言わない!」

 アカネ「わかっとるわ。言うてみただけやん・・
     ほなウチは〜・・・・・タラコと昆布で!」
 シノブ「シーナ先輩とモトコさんは何にします?」

 シイナ「アタシは残ったのでいいよ♪」
 モトコ「シノブ先輩、先選んで下さい(^^)」

 シノブ「そう?。では・・・梅を2つ・・」
 アカネ「お婆ちゃんやな、カッカッカw」
 シノブ「んなっ!?」

 タエコ「うわヤバイ・・急にお米食べたくなってきた・・・」(=□=;)

 スミ&コウ「食欲魔神・・・;」


そんなワイワイとした昼食の時間が過ぎていった・・・・・。





・・・





空になったバスケットと水筒を、ロッカールームに置きに行っているスミ。
トイレに行っているタエコ。

続いてモトコ、アカネと・・整備班の面々も順に退室していく中・・


 シイナ「――・・・ん?」

部屋を出ようとしたシイナの足が止まる。

 シノブ「どうしました?」

休憩室の角に置かれた棚に向うシイナ・・

そのまま手に取ったのは、
先日、チカが悪ふざけで壊したディアースのアクションフィギュア・・

 シイナ「・・また“ハイドラオン改”の腕、取れてるわねw」

 コウ「あ・・・;」

 シノブ「もぉ・・またそのおもちゃですか?」
やれやれといった表情のシノブ


 コウ「・・あ、あの!、シーナ先輩!」
 シイナ「ん?」

 コウ「す、すみません・・・。
    それ、ディアース班でちょっと・・その・・・壊しちゃって・・・」
 シイナ「?・・・あ〜大丈夫よ」
 コウ「え?」
 シイナ「壊れてない壊れてないw
     コレ元々、腕がすぐ取れるのよ・・・ホラw」

 シノブ「そんなおもちゃ置いているから
     美里さんに余計な気を使わせたんじゃありません?」

 シイナ「ゴメンねコウ(^^;)」
 コウ「あ、いえ・・・」
   (良かった〜・・・)ホッ・・

 シイナ「・・にしてもシノブは堅いな〜
     整備班ならこのフォルムのカッコ良さが解るでしょ?」
 シノブ「いいえ。その機体は無駄が多すぎます。
     どうしてそんな攻撃に関係の無い尖ったパーツばかりなのか・・
     理解不能です。」

 シイナ「そこがイイのよ♪」
 シノブ「そもそもハイドラオンというのは、
     あの問題ばかり起こしている“ライトニング社”の機体ですよね?」
 シイナ「だからのフィギュアなのw」

 シノブ「・・だといいんですけど・・・
     我が校の“コスモス”には、く・れ・ぐ・れ・も!
     妙な気を起こさないで下さいよ」
 シイナ「はいはいw」

 コウ「・・・・・」ポカ〜ン・・
   (整備班の人達の話って全然わかんないけど・・
    “コスモス”って、三枝女子のディアースの事だよね?)

 シイナ「コウ、もし帰り時間あるんだったら・・格納庫寄ってきなさいよ」
 コウ「?」
 シイナ「アナタが後々乗る“コスモス”
     どんなものか、ちゃんと見てた方がいいでしょ?」
 コウ「あ、そうですね!、はい、よろしくお願いします!」

 シノブ「できれば5時がいいですわね」キリッ
 コウ「?、えっとじゃあ5時で・・・」
 シイナ「悪いわねコウ、
     この娘スケジュール通りじゃないと落ち着かないのよw」
 シノブ「余計な事は言わないで下さい。」

 コウ「いえ・・私も5時まで訓練する予定だったので・・(^^;)」
 シノブ「貴方とは気が合いそうね、美里さん」

 コウ「そ、そう?・・ありがとう;。
    あと私の事は名前でいいから・・」
 シノブ「解りました。では5時に格納庫で・・
     さぁシーナ先輩、そんなおもちゃは置いて・・点検の続きに戻りましょう」

 シイナ「ちょっち待って、ポーズ決めるから」
馴れた手つきでアクションフィギュアのポーズを作っていく・・

 シノブ「先行きますよ」
 シイナ「ういうい」

やれやれといった表情でドアに手をかけたシノブは、振り返り・・
 シノブ「じゃあミs・・コウさん、後で」

 コウ「うん(^^)」



シノブが部屋を後にし、休憩室に残るのはコウとシイナだけ・・

 シイナ「・・・シノブに気に入られちゃったみたいねw」
 コウ「そうでしょうか・・・?」

 シイナ「良い事よ。
     ディアースの操縦はパイロットの癖も影響するから・・・・・っうし」
会話しながらフィギュアのポーズを完成させる。

 シイナ「メカニックとパイロットの関係って大事なの・・・・・これでOKっと♪」
棚にフィギュアを飾り直し、御満悦の表情・・

 コウ「ユミ先輩とシーナ先輩もですか?」
 シイナ「そうよ〜ん♪、ユミの全身のホクロの数まで把握してるわ、アタシw」

 コウ「えぇぇぇっ!?!?!?!」Σ(@□@;)

 シイナ「冗談よ冗談w。ほいじゃまた後でね☆」
    (この娘のリアクション面白いわホントw)

 コウ「あ、あ!?、はいっ!」アタフタ


休憩室から出ていくシイナを見送りながら・・・

 コウ(・・・・・カヲル先輩とアリサ先輩の“アレ”じゃないけど・・
    一瞬、ユミ先輩とシーナ先輩の変な妄想しちゃったよ・・・・・;)ドキドキ




 スミ「・・・どうしたの?、顔真っ赤だよ?」
戻って来ていたスミが、コウの顔を覗き込む・・


 コウ「わぁぁぁーーー!?!?!?」Σ(@□@川)いつのまに!?


 タエコ「どしたどした!?」
廊下にまで聞こえてきたコウの声に、タエコも慌てて帰ってくる・・

 コウ「ななな何でもないよっ!!」(>△<;)

 スミ「?・・・」
 タエコ「?・・・」


1人妙なテンションで恥ずかしがっているコウ・・

スミとタエコはお互い顔を見合わせ、状況を理解した。


 スミ&タエコ(あぁ・・妄想モード入ってたのか・・・・・;)



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by: へろ
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