彩花の騎士
ストーリー 20
すっかり陽も落ちた、下校道中。
シャーーーーーーー!
・・っと、軽快に自転車で下り坂を下るコウ・・。
頬をなでる風は
春の柔らかい空気と、夜のひんやりとした空気とが混ざり合い
とても心地良い・・・。
コウ(♪〜・・)
濃厚で充実した1日を終えれた事もあり、自然と鼻歌も出る・・・
下り坂から平坦な道に出、自転車をしばらく漕ぐと・・
見覚えのある後ろ姿が視界に入る。
コウ「あ!・・・」
急ぎ、その人物のところまで走り、近づく・・
コウ「フミコちゃん!」
フミコ「・・!、あ、先輩」
コウはフミコの横につくと、自転車から下り、押して歩く・・
コウ「今帰り?」
フミコ「一緒の防衛団じゃないですか」
コウ「アハハ、知ってるよ〜ん♪」
フミコ「もぉ・・何ですかそのキャラ」
自然と微笑む2人
コウ「・・あ!、そうだ!!」
フミコ「?」
コウ「さっきフミコちゃんのところの班長さんに会ったよ」
フミコ「・・カヲル先輩ですか?」
コウ「何かこぉ・・・凄いよね」
フミコ「?」
コウ「なんていうか・・・我が道を行ってるー・・って感じ?」
フミコ「そうですか?」
フミコ「私はよく解りませんが・・
クラスの人達が凄い羨ましがってるのと関係あるんでしょうか?」
コウ「あぁ〜何となく解るかも・・」
フミコ「・・・・・」
フミコ「・・・先輩も・・」
コウ「ん?」
フミコ「いえ・・」
(先輩も・・カヲル先輩みたいな人が・・いいんだろうか・・・・・?)
コウ「ね!、今日の晩ご飯なに食べるの?」
フミコ「えっ?」
(急に?;)
コウ「私は流石に今日は疲れたから、
ランチパックで済ませようと思ってるけど・・・お肉のやつ」
フミコ「・・私も残り物ですね・・・」
コウ「じゃさ、また一緒に食べようよ!」
フミコ「・・べ、別に・・・・・いいですけど・・」
何故か妙に照れくさそうに語尾が小さくなるフミコ
コウ「ん?」
声が聞き取れず、フミコの顔を覗き込む・・
フミコ「か、顔近いです;」
コウ「アハ、ごめっ・・!?!?」
言葉の途中で、道の段差に自転車を引っ掛けるコウ・・・
コウ「いちちちち・・;、何でこんな所に段差が・・・」
フミコ「ぷふっ!」
コウ「ハハハ・・・」(^^;)
フミコ「もぉ!じゃあ7時に先輩の部屋行きますからね!!」
コウ「うん」
気が付けば、アパートの目前・・
フミコはコウを置いて、先に入って行く・・・その足取りは軽い。
―――・・・
午後7時過ぎ。コウの部屋
フミコ「・・・お邪魔します」
コウ「はいはい上がって〜」
コウ「適当に座っててね」
フミコ「はい」
コウ「え〜っと・・
水とお茶と紅茶とジュース・・何がいい?」
フミコ「お任せします」
コウ「じゃあ〜・・あったかいお茶でまったりしますか〜w」
台所の引き出しから、プラスチック容器を取り出すコウ・・
その中には、ドリンクバーから持ち帰ったのでは?と思しき
統一感の全くない、お茶や紅茶のパックが散乱している・・・
コウ「・・え〜っと・・・」
フミコ「・・・せめて緑茶と紅茶ぐらいは分けましょうよ、先輩」
ぬっ・・とコウの背後から顔を出すフミコ
コウ「わぁっ!?」(@□@;)ビクッ
フミコ「それにしても沢山ありますね・・・」
コウ「う、うん・・タエチーがこういうのいっぱい取ってくるからさ・・
色々くれるんだけど、普段(浄水機の)お水だし・・・」
フミコ「この『至高の玉露』って凄そうですね・・」
コウ「ハハw、じゃあフミコちゃんはそれで
私は・・・・・コレでいっか・・・。
あ、他に気になるのあったら持って帰ってね(^^)」
フミコ「いいんですか?」
コウ「ウチにあっても、あんまり飲まないからw」
フミコ「・・じゃあ遠慮なく・・。ありがとうございます」
・・・・・
夕食を終え、適当なテレビ番組を流し見しながら話す2人・・
コウ「――・・え!、フミコちゃんも筋肉痛だったの?」
フミコ「少し痛いぐらいですが・・」
コウ「そっか〜・・フフフ」
フミコ「なんで嬉しそうなんですか?;」
コウ「私悪い先輩だよ〜」ニンマリ
言葉と表情が全く合っていない・・・
フミコ「・・・??」
コウ「じゃあ揉み揉みっこしよっか〜♪」
フミコ「も、もみもみ?;
それを言うなら、揉み合いっこじゃないんですか・・」
コウ「それそれ」
10本の指をウニウニと・・まるで蜘蛛が這うように動かすコウ
フミコ「あの、手つきが凄いイヤラシイんですけど・・・;」
コウ「うりうり〜!」
フミコ「ちょっ!、やめてくださいっ!?」
コウ「コチョコチョ〜w」
フミコ「あぁっ!」
コウ「コチョコチョ〜w」
フミコ「うぅっ!」
コウ「コチョコチョ〜w」
フミコ「く、くすぐったっ・・!」
コウ「コチョコチョ〜w」
・・バフッ!!!!!=3
たまらず、フミコはベッドの上の枕でコウの頭を叩く・・
フミコ「・・・・・・・す、すみません;」
コウ「・・アハ!w」
フミコ「プッ!」
コウ&フミコ「・・アハハハハハハハハ!!www」
フミコ(・・・なんだろう・・・・・
・・やっぱり先輩といると・・・・・・・)
―――――・・・
翌日・・・
昼休み。食堂の横の『購買』。
レジのお姉さん「230円丁度、ありがとね〜」
コウは小さくお辞儀をして、パンの入ったビニール袋を受け取る。
購買を後に、人だかりを抜けると・・
???「・・・ふむふむ、本日の騎士様の昼食メニューは・・
コロッケパンと、さつまいもデニッシュ・・・・・芋ばっかかよっ!!」
聞き覚えのある声がツッコんできた・・・
コウ「ちょっ!、そんな大きい声で言わないでよ!、“ヨッシー”!!」
新聞部のヨシコだ。
そんなコウとヨシコのやり取りは、
その場に偶然居合わせた一般生徒達の注目と笑いを集める・・・
生徒達「クスクス・・」
生徒A「・・でも何か可愛いw」
生徒B「アタシ今日は騎士様と一緒のコロッケパンにしよ〜v」
生徒A「じゃあ私は、さつまいもデニッシュ♪w」
コウは顔を赤くして、ヨシコの腕を掴んでその場を後にした・・・。
・・・
階段を下りがてら・・
コウ「ちょっとヨッシー!!」
ヨシコ「失敬失敬、こりゃまた失敬」
コウ「全然謝ってない・・・;」
ヨシコ「超庶民的騎士様でマニアックな人気がある
美里コウの番記者としてはだね・・」
コウ「何でもいいから、声に出して・・・・・って、え?、に、人気???」
ヨシコ「そうだよ〜♪
騎士様っていうのは、そういうステータスがあるって知ってるでしょ?」
コウ「・・あ、うん・・・何というか・・・・・」
ヨシコ「ムフフ・・おやおや?急に実感出て来た?」
コウ「・・・ど、どうしよう!!!」
ヨシコ「ん?」
コウ「ぱ、パスタとか食べるべきだったかな!、葉っぱとか乗ってるような!」
ヨシコ「アハハ!w
駄目だよ、コウのファンはそんな事求めてないからw」
(葉っぱって・・・;)
コウ「ちょっ!ファンとか止めてよ!;
・・はぁ〜・・そうだった!自分が騎士様見てた感覚・・・
そういうのだった!!」(@@;)
ヨシコ「大丈夫大丈夫、いつものままのコウが良いんだから。
騎士様フィルターの強力さはアンタが一番知ってるでしょ?w」
コウ「う、うん・・・・・・・って、そうじゃなくて!
それもだけど、そうじゃなくて!!」(@□@;)
ヨシコ「はいはい、テンパらないテンパらない。
昼食を大声で言わない、騎士様についても煽らない・・ね?」
コウ「そ、そう!それ!!」
ヨシコ「アハハw」
コウ「アハハじゃないよ!」
ヨシコ「コウのそーゆうとこ、やっぱ好きだわw」
コウ「からかわないでっ!」(>□<)
・・・
ガタコンッ!
『体育系部室』に隣接する自販機でジュースを買うコウとヨシコ。
そのまま『裏庭』のベンチに座る・・・
プツッ・・と、パック式ジュースにストローを挿し、会話は続く・・・
ヨシコ「―――・・あそっか!、コウは知らないんだよね」
コウ「うん」
チュー・・とジュースを一口飲み、
ビニール袋から昼食のコロッケパンを取り出す・・
ヨシコ「ファンはもちろん、一般生徒の間でも、
宝塚カヲル先輩って“王子”って呼ばれてんのよ」
コウ「お、王子・・・・・。何か凄い納得・・・;」
ヨシコ「ウチ(新聞部)の人気アンケートでもず〜っとトップ3入りでさ・・」
ヨシコ「そんで、日高アリサ先輩は“姫”って呼ばれてて
この御二人は・・まぁ〜『三枝の友』のお得意様ねw」
パンを頬張るコウ
コウ「むぐむぐ・・・・・例えば?」
ヨシコ「去年の夏頃、御二人はちょっと間だけど交際されてて・・」
コウ「ゲホッゲホッ!?」
思わず咽るコウ
ヨシコ「大丈夫?」
コウ「う、うん・・・」
ジュースで喉を整える
ヨシコ「でさ、ウチ(新聞部)としては“王子と姫の交際発覚!”
・・なんてすっぱ抜いちゃったりしたわけよ」
コウ「何か凄いね・・ホントに学園の芸能界みたい;」
ヨシコ「そ〜よ〜。・・ま結局、センスの方向性がどーので
円満な破局に終わったんだけど・・」
コウ「そこまで調べたのっ!?」
ヨシコ「インタビューしたのよ、先代の部長が。
御二人とも気さくで、当時そこに居合わせたアタシも憧れたわ」
コウ「・・・そうやって見ると・・・・・
カヲル先輩とアリサ先輩の妄想、なんか膨らんじゃうな〜w」
ヨシコ「アハハ、やっぱコウもそっち系なのねw」
コウ「?」
ヨシコ「いや、漫研部にそーゆー娘いてさ
『カヲル王子×アリサ姫』の同人誌作るからとかで
ウチ(新聞部)に資料借りに来るのよw」
コウ「は、ハハ・・;」
(同人誌っていうと・・・やっぱりそういうアレ・・・だよね?)
顔が赤くなるコウ
ヨシコ「結構多いのよ、御二人のカップリング推しw。
去年の文化祭なんて、破局後なのに完全にファンサービスで
王子役と姫役でクラス演劇されてたし・・」
コウ「うわー!それ見たかった!!」(>□<)ノ
ヨシコ「クライマックスのキスシーンなんて
黄色い声で体育館のガラス割れるんじゃないかと思ったわw」
コウ「な、なんかそういうの聞いてると・・
騎士様ファンの熱がたぎってくるよぉー!!=3」
ヨシコ「自分も騎士様でしょw」
コウ「それとこれとはまた違うの!」
ヨシコ「中と外じゃ感覚が違うってやつ?」
コウ「そうそれ!、だからヨッシーの話って凄く楽しい!!」(☆v☆)
ヨシコ「そりゃどうもw」
(・・・・・本音言うと、コウだけが騎士様だったの・・・悔しかった・・・・・)
コウは2つ目のパンを開け、もりもり食べる・・・
「ムフー!」っと鼻息は荒く、テンションが上がっているのが一目で解る。
そんなコウの横顔を見るヨシコ・・・
ヨシコ(・・なんだろね・・この娘は・・・w
アタシの話聞いて熱くなってくれちゃったりしてさ・・・)
その眼差しは、とても穏やかで暖かい・・・
コウ「・・・ん?、どしたの?」
ヨシコ「いんや・・」
コウ「?」
ヨシコ(・・・あの頃2人で憧れた騎士様・・・・・。
でも、新聞部としての楽しさもアタシは知った・・
こういう関わり方もあるんだって・・・・・)
コウ「ムグムグ・・」
ヨシコ(だから悔しいのと同じくらい・・いやそれ以上にワクワクもした。
コウが騎士様で、アタシがその記事を作る・・・
もぉ自分は新聞部として騎士様を見てるんだって理解できた)
コウ「モグモグ・・」
ヨシコ(「ヨッシーの話って凄く楽しい」・・・か
それ、今のアタシにとっちゃ最高の誉め言葉だw)
コウ「もぉ〜・・さっきから何で私の顔見てニヤニヤしてるの?;」
ヨシコ「口元ついてるよw」
そう言いながら、ヨシコは親指でコウの唇近くに付いたソースを拭う・・・
コウ「あ、ゴメっ・・!?」
そのまま指で拭ったソースを舐めるヨシコ・・・
コウ「よよよヨッシー!?!?」
ヨシコ「・・・さ・て・と・・」
何事もなかったかのように立ち上がり・・・背伸び
ヨシコ「他の騎士様の昼食メニューも覗いてきますか〜・・」
ポカ〜ンとヨシコを見上げるコウ・・
ヨシコは振り返り・・
ヨシコ「昼食情報って結構好評だからねw、
推してる人と同じメニュー食べたいって気持ち・・・コウなら解るでしょ?」
コウ「え・・・・・うん!」(^^)
ヨシコ「ハハw、じゃ〜またね!」
(・・・コロッケパン・・まだ残ってるかな・・・・・♪)
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