彩花の騎士
ストーリー 19

放課後。

軽いランニングを終えたディアース班。

 コウ(・・・エアシップのお陰でだいぶ助かったけど・・・
    うぅ〜・・あと何日かはこの筋肉痛とお付き合いか〜・・・;)


『ロッカールーム』で軽く汗を拭いていると・・


ガチャ・・


 ナギサ「・・あら?」

支援班のナギサ、ミヨ、イチルの3人が
ジャージ姿で入って来た・・・


 チカ「ミヨじゃん!」
 ミヨ「あぁ〜チカ」

その格好と、ほんのり熱った様子からするに、
何かしらの運動メニューをこなした後だろう・・

 ユミ「支援班も上がり?」
 ナギサ「この後はシミュレーターね・・そっちは?」
 ユミ「同じくシミュレーターの予定だけど・・・」
 ナギサ「合同でいいかしら・・?」
 ユミ「そうね」

 ユミ「・・ディアース班は5分後、シミュレータールームに集合。
    着替えなくていいからね」

 コウ&イサミ&チカ「はい!」


 ナギサ「支援班も同じく・・・ね」

 ミヨ「はい!」
イチルはコクリと頷くのみ。




 コウ「・・・足、大丈夫だった?」(^^;)
朝の一件もあり、イチルに声をかけるコウ・・・

 イチル「忘却の彼方・・・」

 コウ「え、えっと・・;」

 ナギサ「・・・痛みは治まった・・・って」
 コウ「っ!?!?」(@@;)
突如、ナギサがコウの耳元で
イチルの訳を囁き、小さく息を吹きかける・・・

背筋に何とも言えないゾワゾワしたものが走り、一歩たじろぐコウ

 コウ「あ、ああ、そ、そうですか・・;」
   (な、なんか支援班の人・・違う意味でドキドキするんだけど・・・;)

 ユミ「ナギサ!」
 ナギサ「あらゴメンナサイ・・
     ついね、無垢そうな娘の首筋の・・
     汗ばんだ匂いを嗅ぎたくなっちゃって・・・」
 ユミ「ナギサ!」
 ナギサ「ハイハイ・・・ウフフ・・v」


 チカ「・・・ミヨのとこの班長さん・・・何て言うか・・・・・」
 ミヨ「皆まで言わなくても解ってる・・・」(==;)





・・・・・






騎士の館2F『シミュレータールーム』。

ヘルメットをかぶり、訓練用UEサブマシンガンを手に持ったコウと・・
特殊なグローブをはめた、支援班のミヨが

真っ白で何もない方の・・通称『大部屋』で待機している。


 ユミ「じゃあ、昨日のおさらいも兼ねて・・」
コンピューター部屋にいるユミが、マイク越しに2人に声をかける

 ユミ「コウ、バイザー画面の右下に表示されているゲージは?」
 コウ「あ、“UEチャージゲージ”です」

 ユミ「よろしい。私達、適合者がUE兵器を持つと
    自動でエネルギーはチャージされます・・
    それを視覚的に表したものが、UEチャージゲージです」

 ユミ「では試しに・・コウ、軽く前に向って撃ってみてちょうだい」


 コウ「は、はい!」
緊張した面持ちで、ゆっくりと引き鉄をひく・・・


ダダダダダダダ・・・!


エネルギー弾が連続発射される。
小さな反動はあるものの、思ったより簡単にそれは出る・・



しかし・・手にじっとりとかいた汗と、早い鼓動が
“撃つ”という行為の重さを実感させる。

シミュレーターとはいえ、訓練用とはいえ
使っているその銃は、実戦用と大差はない代物・・

たった一回引き鉄を引いただけなのに
今までに感じた事のない・・ドッという精神的な疲れが押し寄せる・・・。


 コウ「・・ハァ・・ハァ・・・」


 ユミ「・・・・・少し深呼吸しましょう。落ち着いて」

 コウ「・・・は、はい・・・・・。
    ス〜〜〜ハァ〜・・・ス〜〜〜ハァ〜・・・・・」

 ユミ「だいじょうぶ。貴方の感じ方が普通よ」

 コウ「は、はい・・」

いつになく真剣な空気は、シミュレータールーム内を包み
皆がコウのペースを静かに見守っている・・・。



・・・



 ユミ「・・・UE兵器を使うにおいて、重要なのは・・
    平常心と、冷静且つ臨機応変なイメージ力です」

 ユミ「ディアースの操縦はもちろん、UE兵器の出力量には
    イメージトレースと呼ばれる、とても感覚的な機能が使われています」

 ユミ「例えば・・」
と、ナギサの方を見る・・

ナギサは軽く頷き、マイクに向って話す・・
 ナギサ「・・ミヨ、シールド出してみなさい」


 ミヨ「あ、はい!」


そう言われたミヨは、
特殊なグローブをはめた右手を、前にかざす・・・


ブンッ・・・!


すると、グローブから3cmほど空けた先に・・
50cmぐらいはある青く透明な円・・大皿のようなモノが現れる

 チカ「ミヨすげー!」

 ユミ「これはUEシールドと言って、
    その名の通り、ウルズマイトエネルギーを防御に使うものです」

 ナギサ「発動条件は張るというイメージ・・」

 ユミ「そう、考えるイメージによって
    道具のON/OFFを切り替える・・
    イメージトレースとは、自分の考えた事を操作に用いる機能」

 ユミ「・・ミヨさん、UEチャージゲージは?」


 ミヨ「ほんの少し・・・ホントゆっくりですが減ってます」

ユミはコンピューターを操作し、ミヨのバイザー内と同じ表示を
コンピューター部屋のモニターにも映す

 ユミ「こういう感じね」
 イサミ(ふむ・・)

 ユミ「じゃあ少し出力を上げるイメージをしてみてくれるかしら
    強く念じる感じで」

 ミヨ(こ、こうか・・・な!!)


ブォン・・!!


50cmぐらいあった青く透明な大皿が、1m近くに広がる

 チカ「ミヨすげー!!」

 イサミ「ゲージの減りが少し早くなりましたね・・」

 ユミ「そういう事ね。
    ミヨさんありがとう、もういいわ」

 ミヨ「はい」
   (ホッ・・)
UEシールドを解く・・


 ユミ「こういう感じで、イメージによる出力量の調整、
    UEチャージゲージはその目安として使うわけね」

 イサミ「平常心と、冷静且つ臨機応変なイメージ力・・
     とは、この事を指してですね」
 ユミ「えぇ」


 ユミ「これはもちろん武器の出力・・威力にも当てはまるから・・・
    ・・コウ、出来るかしら?」


 コウ「は、はいっ!!」


 イサミ「・・・・・」
 チカ「・・・」

 ユミ「落ち着いて。強く撃ち出すイメージで・・・」




 コウ(・・しっかりしなきゃ!しっかりしなきゃ!!
    ・・強いイメージ・・・強いイメージ!・・・・強いっ!!!)


生唾を一口呑み、ゆっくりと引き鉄をひく・・


カチッ・・。



ドババババババババッッッ!!!!!



物凄い勢いで放たれる大玉のエネルギー弾達・・



 一同「っ!?!?!?」



シュ〜〜〜っと、撃たれた壁から煙が上がる・・

 コウ「あ、あわわわわわ・・」(((@□@;)))ドキドキ



 ユミ(訓練用でこの出力!?、この娘ひょっとして・・・)

 ナギサ「ウフフ・・・」
    (いいわ〜・・・あの娘v)
舌なめずりをした後、糸目が一瞬妖しく開く・・


 イサミ「・・・・・」
 チカ「お・・うぉぉぉー!!、コウ先輩すげー!!!」

 ユミ「グッド。コウ、良かったわよ」


 コウ「・・あ、ありがとうございます!」



 ユミ「では次はイサミね。その後はチカ・・」
 ナギサ「ミヨ、イチルと交代よ」






・・・・・






全員の“試し撃ち”が終了し・・・

コウ、イサミ、チカ、ミヨ、イチルの5人は
それぞれ訓練用UEサブマシンガンを持ち、『大部屋』に改めて入る・・・。


部屋を仕切る特殊ガラスにはスモークがはられ・・
独特な空間が作られる。


 チカ「エヘヘ〜・・修行部屋だ〜♪」
 ミヨ「何ニヤニヤしてるのよ・・・」


室内のスピーカーからユミの声が響く・・
 ユミ「・・じゃあみんな
    バイザーを下ろして、銃を構えてちょうだい」


それぞれが、ぎこちなく銃を構える中・・
イサミだけは何かしらの経験があるのか、キリッと様になった構えをする。


 ユミ「バイザー画面の中央に薄い灰色の円が見えるわね?」
 一同「はい」
 ユミ「それがロックオンマーカーよ」

 ユミ「今から的を出すから、それに向って銃口を向けて・・
    トリガーは引かなくていいから」
 一同「はい」


ピピッ!

と、機械的な音がしたと同時に
コウ達の視覚的には5mほど離れた感覚の距離に、的の立体映像が表示される・・


一同はそれに銃口を向け、赤い光・・レーザーポインターを重ねる


 ユミ「薄い灰色の円が、赤い二重円になったわね?」
 一同「はい」

 ユミ「それがロックオンモード。
    ではトリガーを引く!」


ダダダダダダ!、ダダダダダダ!、ダダダダダダ!


一同が一斉に的に向って発砲すると・・
真っ直ぐに飛ぶ弾もあれば、少しカーブしながら飛ぶ弾もある


 ユミ「曲がって飛んだ人はロックオンモードの恩恵です。
    武器の方で私達の至らない技術をカバーしてくれています」

 ユミ「銃口を的から外して」


 コウ(ふぅ〜・・・)
最初に比べれば全然マシになったが、やはり緊張は隠せないコウ


 ユミ「・・灰色の円に戻ったわね」
 一同「はい」

 ユミ「ロックオンをしてから・・赤い二重円になってから撃つ。
    これがUE兵器の銃を使った基本スタイルです」

 ユミ「尚、敵が遠くにいる状態でロックオンをすると・・・」

ナギサがコンピューターをいじって、
表示されていた的を小さくしていくと・・どんどん離れて行く感覚になる・・・。


 ユミ「ロックオンモード!」
 一同「はい!」

ババッと銃を構える一同

 コウ(ち、小さい・・というか遠い・・・;)
 チカ「うひー、ちっちゃー!;」

 ユミ「私語っ!!」

 チカ「は、はい!」ビクッ



 ユミ「・・オレンジの円が出たわね?」
 一同「はい」

 ユミ「それがロックオン状態だけど、
    銃の射程範囲外・・弾が届かない事を意味する表示です」

 ユミ「使う武器で射程距離も変わるので・・
    今後の訓練で、自分に合った装備を見つけて行きましょう・・・」

チラリと時計を見るユミ


 ナギサ「・・Eメニューを3本ってとこかしらね」
 ユミ「そうね」

 ユミ「では・・これから1人ずつ、3年の私達とペアを組み
    次々に表示される的を撃っていく訓練に入ります」








・・・・・―――――








午後5:50、『ロッカールーム』前。

制服に着替え終わり、身仕度が済んだディアース班。

 コウ&イサミ&チカ「お先に失礼します」
 ユミ「御疲れ様(^^)」

三枝女子防衛団は、6時の下校時間が迫ると
班ごとにそれぞれ点呼を取り、班長がアユミ先生に報告・・
そのまま各自下校となる。




 チカ「・・今日はキツかったっスね〜」
 コウ「だね〜」(^^;)

 イサミ「まだまだ本番はこれからです」

 コウ「ハ、ハハ・・;
    ・・・あ!、私自転車だからこっちか・・じゃあ2人共、また明日」

 イサミ「はい」
 チカ「また明日ッス!」


騎士の館から直接帰るイサミとチカ・・

校舎正門側の『駐輪場』へ向うため、
裏門から学校の敷地内に入って行くコウ・・・。


 コウ(ふ〜〜〜・・こうやって・・こう!・・ね)
1人、銃を構えて撃つ動作をしながら歩く・・



・・・と、薄暗い裏庭の方で、何か声が聞こえてくる・・・



 コウ(・・・ん?)
そちらに視線を向けると・・

身長差のある2人の女生徒が、何やら向かい合って話をしているようだ・・・。


 コウ(こんな時間にあんなところで何やってるんだろ・・・
    園芸部の人かな・・・・・?)





次の瞬間・・・





 コウ「っ!?!?!?!?!?」ドキィッ!?

陽も落ち、裏庭という場所柄・・光量も少なく
人物こそ特定はできないが・・

何をしているのかは理解できる・・・・・




長身の生徒が、もう一方の生徒のおでこに・・
キスをしているという事は・・・・・。




 コウ(ニャァァァーーーーーーーッ!?!?!?)

衝撃の光景を前に、思わず心の叫びが飛び出しそうになり
コウは慌てて口を押さえ、身近な物陰に身を隠す・・・




 コウ(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・)
しゃがみ込み、息を殺して激しい鼓動を押さえようとする・・

 コウ(び、ビックリしたーーー!!
    あ、あるんだ!、本当にこういう事って!?!?)






・・・・・少し落ち着いたところで、先程の2人を改めて見ようと
そ〜っと物陰から顔を出すコウ・・・


 コウ「!?」

コウの目の前には・・
細く、されど頼り無さなど皆無の、綺麗で長い足が・・・

 ???「覗きとは・・あまりスマートじゃないね・・・」

その足から徐々に視線を上げて行くと・・・


 コウ「わっ!?!?」Σ(@□@;)尻餅


見知った顔・・

狙撃班班長、宝塚カヲルである。



 カヲル「・・おや?、キミはユミのところの・・」
 コウ「み、美里コウです!!」

 カヲル「ハハ、覗きを咎められて
     いきなりフルネームを名乗るなんて・・なかなか面白いね」
 コウ「あぅ、えっと・・;」

 カヲル「でも助かったよ・・」
そう言って、カヲルはコウに手を差し出す・・

 コウ「・・え?」
よく解らないまま、カヲルの手を取り、引っ張り起こされる・・・



 カヲル「どうにも・・モテ過ぎるのも考え物でね・・・
     あまり軽はずみなキスは好きじゃないんだが・・・」
軽く髪をかき上げる・・

 コウ(ななな何言ってるの!?、この先輩!?!?)(@□@川)


 カヲル「キミが覗いてくれたお陰で、彼女も正気に戻ったようだ・・・フフッ」
人差指と中指をおでこに当て、小さく笑う・・

 コウ(今キラーン☆ってなった!?、キラーン☆ってなった!?;)


 カヲル「1年生は出待ち禁止のルールを知らない娘もいるからさ・・
     ・・と、キミに言う事でもなかったね」

 コウ(見える!、バックに薔薇が見えるっ!?)(眩□眩;)



 カヲル「じゃあ僕はアユミ先生に報告があるから、失礼するよ。
     覗きも程々にね、メガネがチャームな新人くん」

カヲルはポンポンッと、コウの頭を優しく2、3回たたく・・



 コウ「・・・・ハッ!?、ああどうも!;失礼しました!!」ペコリ
思わずカヲルのペースに呑まれて、呆気に取られていたコウ・・




カヲルが去った、薄暗い校舎裏にポツリ1人・・・

 コウ(・・・やっぱり3年生の先輩方は、
    種類は何であれ・・オーラが凄いな〜・・・・・・・種類は何であれ)



 校内アナウンス「―――・・・6時になりました。
         校内に残っている生徒は、速やかに下校して下さい・・・」


 コウ「わわっ!?、自転車自転車!;」



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by: へろ
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