彩花の騎士
ストーリー 17

「騎士の館」の裏手には、『防衛団専用道路』という
格納庫の第2出入口から直通で、住宅街を突っ切れる道がある。

この道は、防衛団関係の車両、そしてディアースのみが通行可能だ。

騎士様一同はそこに集まり、各々腰を捻ったり、アキレス腱を伸ばしたりと
走る前の軽いストレッチを行なっている。


 ユミ「――・・各班単位で、20分を3本、間に5分休憩・・
    周回数やペースはそれぞれの班長に任せます」


基礎体力訓練メインメニュー『外周ランニング』。
専用道路の一部を含めた、「騎士の館」の敷地の回りを延々走る・・
地味なトレーニング。



準備が整った班から順にランニングを開始・・
いの一番で飛び出していったのは、やはり体力自慢の『歩兵(突撃班)』。

続いて前線組の狙撃班、支援班・・・・・



 ユミ「では、ディアース班も行きましょう」
 コウ&イサミ&チカ「はい!」







―――・・・・・







 コウ「ハァ・・ハァ・・・」
   (今何周目だろ・・・。うぅ・・お腹痛い・・・・・け、けど・・・!)

チラリと後ろを見ると、イサミもチカも疲労の色を見せずに走っている・・

文化系のコウにとって、ディアース班のランニングペースは予想以上に早い。

 ユミ「あと半周で休憩よ〜、しっかり〜!」
 コウ「は、はい・・!」
 イサミ&チカ「ハイ!」






・・・外周ランニング、1本目終了。
格納庫前に次々と戻ってくる各班。

そこには・・・

 サナエ「みんなご苦労様」

校医であり、防衛団のオアシス的なサナエ先生が
クーラーボックスとタオルを置いて待機していた。



 サナエ「はい。水分補給はこまめにね(^^)」
 コウ「ありがとうございます」

クーラーボックスから取り出し手渡された、ラベルのないペットボトル。

 コウ「ゴキュ・・ゴキュ・・・」
冷たすぎず、温すぎず・・絶妙な温度加減と
何やら不思議な味がほんのり付いたその水が、騎士様達の喉を潤す。

 チカ「・・くぅ〜!、何かおいしいッスね!この水!!」
 コウ「うん!」
 ユミ「サナエ先生特製のミネラルウォーターね」

 アカネ「ほんまコレ・・先生、金取れまっせ!!」
 シノブ「下品よ」

 サナエ「ふふふ(^^)。・・・・・それにしても・・・」キョロキョロ

 一同「?」

 サナエ「進藤先生達はどこに行ったのかしら・・・?」

 コウ(そういえばいつの間にかいなくなってる・・・。ま、まさか・・・・・)

一同の脳裏に、キリア先生とアユミ先生の取っ組み合いが浮かぶ・・・。




 シイナ「―――・・格納庫にはいないみたい・・」
格納庫内を軽く覗いたシイナが言う





と・・


 キリア「――・・アッハハハハハハ!!、そう落ち込むなアユミ!」
 アユミ「くっ・・生身ではこうはいきませんよ!」
 キリア「わかってるわかってる。
     ゴリラ女のお前に敵う奴なんてそうはいないよw」
 アユミ「ゴリっ!?、牛ちちのキリアさんに言われたくありませんっ!!」
 キリア「おぉ?、これが羨ましいか?、うりうり」
 アユミ「いりませんよそんな脂肪・・」

騎士の館2Fから騒がしく下りてくる2人・・


 コウ(・・仲直り・・・したのかな??)

その様子を、キョトンとした表情で見上げる生徒達・・。

そんな中・・サナエ先生が無言で、ズンズンと2人の元に早足で向う・・・





ザッ・・・!

 キリア&アユミ「?」

2人の前で立ち止まり、両手を腰に当てたサナエ先生が小さく一息・・・



 サナエ「・・何やってるのっ!!、二人ともっ!!!!!



 キリア&アユミ「っ!?!?!?」ビクゥッ!?

サナエ先生が大声で怒鳴り付けると
瞬間、キーーーンと一帯の空気が静寂と化す・・・。



 コウ(こ、恐ぁ・・)(@□@川)あわわ


 サナエ「汗を流して帰って来た生徒達の前で何っ!、みっともない!!」

 キリア&アユミ「す、すみません・・・;」


常に強気な印象があるキリア先生とアユミ先生が縮んで見える・・・。



 シイナ「3年目だけど、あんな先生達はじめて見たわね・・」
 ユミ「え、えぇ・・;」
 シイナ「今年は色々おもしろくなりそうね〜・・ムフフッ」(=ω=)☆
 ユミ「イイ趣味じゃないわよ」
 シイナ「ユミも内心思ってるんじゃないの〜?」
 ユミ「バカおっしゃい」

 アリサ「あぁ〜んサナエ先生素敵かも」
 カヲル「確かにあの2人を一喝できるのはスマートだね・・」
 アリサ「よね〜v」

そんな余裕のある話をする3年生とは対照的に・・

1、2年生達の脳内では、
ピラミッド序列の頂点に、サナエ先生の顔が浮かんでいた・・・。






―――・・・・・






『ロッカールーム』。

基礎体力訓練を終え、雑談をしながら制服に着替える騎士様達。


 カナコ「―――・・で、結局。先生達は何が原因でもめてたのよ?」
 トキエ「知らね」
 ユエ「キリア先生が整備の子、借りたいみたいな事言ってなかった?」

 アカネ「それホンマ?」
 ユエ「う〜ん・・たぶんだけど」
 アカネ「何や用あったらウチが手伝ったったのに・・」

 リサ「誰かにゃ〜?、サボれたのに・・って言ってる悪い子は〜?」
そう言いながらリサは、アカネの背中に人差指をぐりぐり当てる

 アカネ「バレたぁ〜?アハハー」
わざとらしく斜め上を見上げ、右手を後頭部に当てて笑うアカネ

 シノブ「白々しい」


 リサ「悪い子でぃ〜すねぇ〜」ぐりぐり
 アカネ「痛い痛い!、いつまでグリグリやっとんねんっ!!」


 シイナ「じゃあこの後、整備班は格納庫に集合してキリア先生の手伝いね」
 シノブ「分かりました」
 モトコ「はい」
 アカネ「ちょおシーナ先輩、せめて10分休憩下さい!」
 シイナ「そうね、じゃあ10分挟んで格納庫で」


そんな“この後の予定”会話が各班で交わされていく・・・。


ディアース班も10分の休憩を入れた後、シミュレータールームに集合だ。

 コウ(よしっ!、昼休みの汚名を返上しなくちゃ!!=3)

 タエコ「また鼻息荒くなってるわよ・・」
 コウ「あわわっ!?」
慌てて鼻を押さえるコウ


 カヲル「――・・ユミ、シミュレーターの基本説明をするのなら
     前線組の1年、合同でしないか?」
 ユミ「そうね・・。細かい内容は後日各班でやればいいし・・・。
    マキと『ナギサ』もそれでいい?」
 マキ「問題ない」

 ???「・・・いいわよ」
ワンテンポ間を置き、同じく賛同するのは・・

糸目に薄い眉毛、ワンレン風の艶のある黒髪ロングヘアーの3年生・・
『歩兵(支援班)』の班長代理(正式班長はアユミ先生)である『岬 ナギサ』だ。


 コウ(岬ナギサ先輩・・。
    確かスミちゃんが、凄い適合者ランクの人って言ってた気が・・・)

・・と、コウの目線に気付いたのか
ナギサがチラリとこちらを見、口元に小さな笑みを浮かべる・・・。

 コウ(っ!?)
思わず畏まって小さく会釈をしてしまうコウ

 コウ(な、何だろ・・一瞬ゾワゾワってなった(@@;))







―――・・・・・






『シミュレータールーム』。

シミュレーターの基本説明をするため
前線組・・「ディアース班」「突撃班」「狙撃班」「支援班」の
3年、1年、そして唯一の2年であるコウが集まっている。

突撃班のトキエとユエ、狙撃班のカナコ・・通称“前線組2年生トリオ”には
既に説明の必要がないため、この場にはいない。

 コウ(ほっ・・・)





・・・





ほんの少しさかのぼる事、数分前・・・『休憩室』。


ポスッ・・バララララ!・・・・・ジーコジーコジーコジーコジーコジーコ・・・

紙コップ型の自販機からジュースを取り出すコウ

 タエコ「Sサイズ!?、しょぼっ!」
 コウ「い、いいでしょ別に・・
    タエチーこそLサイズ2つとかおかしいよ!、頭おかしいよ!」
 タエコ「頭ってアンタ・・何故ジュースの量でそこまで;」

 スミ「まぁまぁ(^^;)」

 コウ&タエコ「安定のMサイズ!!」
 スミ「?」


そんなコウとタエコをサラッとかわし、
スミはソファーにポツリと座っているスズナの横に座る

 スミ「・・スズちゃんは飲まなくていいの?」
 スズナ「えっと・・今欲しい物があって節約中なんです・・・テヘヘ」

 スミ「・・・私の飲みかけだけど・・いる?」
 スズナ「え、でもぉ・・いいんですか?」

 スミ「スズちゃんが嫌じゃなかったら(^^)」
 スズナ「そんな、全然嫌じゃないですぅ」


 コウ「・・・うわ〜、やっぱりスミちゃんだな〜
    どこかのLサイズ2つも持ってる人とは大違い」
 タエコ「悪かったわね・・・;」


 スズナ(スミ先輩いい人だなぁ〜(=v=))



そんなやり取りの後・・
スミ、タエコ、スズナの通信班は、コウを残して退室。



コウがソファーでちびちび1人ジュースを飲んでいると・・

 チカ「・・コーラコーラっと♪」

休憩室に入って来るなり、自販機にコインを投入するチカ


ポスッ・・バララララ!・・・・・ジーコジーコジーコジーコジーコジーコ・・・


 ミヨ「この後の訓練でゲップとか出さないでよ」
 チカ「へいへ〜い」
いい加減な返事をしながら、ジュースが入る様をまじまじ見つめるチカ。


 コウ(ふふ・・やっぱりあの2人の感じ、他人とは思えないな〜(^^;))



続いて休憩室に入って来たのはフミコ。
その手には自前の水筒・・

 コウ「・・あ、フミコちゃん」
“こっちこっち”と言わんばかりに、思わず名を呼ぶと
フミコもそれを分かっているように、コウの隣に座る。

 コウ「水筒持ってきてるんだ」
 フミコ「はい」
 コウ「お茶?」
 フミコ「母がお茶パックを沢山送ってくるので・・」
 コウ「へぇ〜・・私も今度から水筒にしようかな・・・」
 フミコ「節約できますよ」
 コウ「やっぱりフミコちゃんしっかりしてるな〜」

 ミヨ「・・確かに毎日ジュースって訳にもいきませんよね」
と、コウとフミコの会話に、ジュース片手にミヨが入ってくる・・・。

 コウ「だよね〜(^^)」
 チカ「えぇー!水筒じゃ炭酸飲めないじゃん!!」

 フミコ「・・・」
 コウ「えっと・・2人はフミコちゃんとは違うクラス・・なのかな?」

 ミヨ「はい、私とバカチカはB組です」
 チカ「バカ言うなー!」(>□<)

 フミコ「私はC組です」

 チカ「あとカッチカチの石橋イサミもアタシんとこのクラスっスよ!」
 コウ「ハハ・・」
   (カッチカチ・・ね(^^;))

 コウ「でも3人ともアレだよね・・・前線組・・だっけ?」
 ミヨ「ですね」

 コウ「この後シミュレータールームだよね?・・って私もだけど(^^;)」
 ミヨ「基本的な説明とか・・」



 ???「――・・“1年生同士”仲がおよろしいわね〜」


と、聞き覚えのある声が休憩室に入って来る・・・

 コウ(桐原さん・・)

カナコ、トキエ、ユエの前線組2年生トリオだ。


 トキエ「お前ホント性格悪いな・・・;」
 ユエ「なんかカナコ、キャラ変わってない?」

 カナコ「うるっさいわね」


 カナコ「・・それより転校生!、首尾は上々かしらぁ?」

 コウ「だ、大丈夫だよ・・今からちゃんと教えてもらうから!」
   (昼休み大失敗したけど;)

 カナコ「そぉ、ならいいけど・・・。
     !?って姿が見えないと思ったら・・富士原フミコ!、貴方はまた!」

 フミコ「?」



 コウ「行こ」
 フミコ「あっ・・」
フミコの手を取り、席を立つコウ・・


 カナコ「あ、ちょっとっ!!」

そそくさと休憩室を後にするコウとフミコ。

カナコ達に軽くお辞儀をして、2人に付いていくミヨと、
状況が解らずとりあえずミヨに付いていくチカ・・・。



 カナコ「・・・・・」



 トキエ「アハハハハハ!、フラれたなぁーw」
 カナコ「ぐぬぬぬぬぬ・・おのれ転校生・・・!」

 ユエ「コウも大変ね・・(^^;)」




一方・・

 コウ(あぁ〜・・!心臓がまだバクバク鳴ってる・・(@w@;))



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by: へろ
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