彩花の騎士
ストーリー 15

『シミュレータールーム』

コンピューター部屋と、
真っ白で何もない教室大ほどの空間・・通称『大部屋』、
この2つからなる。



フルフェイス型のヘルメットをかぶり、大部屋の中央にポツリと立つコウ。

その手には、訓練用の『UEサブマシンガン』がぎこちなく握られている・・・。





「UE」とは、ウルズマイトエネルギーの略称である。
『ウルズマイト機関(エンジン)』を搭載、使用するモノの頭に付けられ
それを扱える者・・・つまり“適合者専用武器”という意味でもある。

UE兵器は従来の火器とは違い、エネルギーを発射・使用するため
エネルギー密度の調整が可能である。
これを絞れば、殺傷能力を消す事も出来る。

訓練用は、使う感覚には大差ないが
密度をフルにして当てても、せいぜい“痛い”程度の代物だ。





 コウ(・・べ、別に人に向って撃つわけじゃないけど・・・
    こういうの持つと凄く緊張するな〜・・・・・)ソワソワ


 ユミ「―――・・まずガラスにスモークを張るわね」
 コウ「あっ、はい!」
   (・・・スモーク??)

コンピューター部屋のユミがマイクで話すと、
スピーカーを通して大部屋全体に声が響く。

次の瞬間・・2つの部屋を区切っている特殊なガラスが真っ白になる。

 コウ「!?」

 ユミ「そちら側からこちらは見えなくなるけど、
    こちら側からはしっかり見えているから安心して」


 コウ(・・・うわ〜・・全面真っ白・・・
    何か小学校の頃やってたアニメの修行部屋みたい・・・;)


 ユミ「・・次にフィールドを表示します」

殺風景な空間に、ユミの声が響く・・

 コウ「お願いします!」

・・と、声を上げて応えるコウだが
実際は何の事だがいまいち分かっていない・・・。


ユミがモニターに表示されているメニューの一つを、人差指でタッチすると
それにあった立体映像が、大部屋全体に映し出される。

 チカ「おぉぉ!、ここアタシが学校来る時、前通る広い空地だっ!!」
コンピューター部屋で見学しているチカが
見覚えのある景色の立体映像に興奮し、思わず身を乗り出して大部屋を覗き込む

 イサミ「・・落ち着け」


 コウ(凄っ!)
そんなチカ以上に興奮しているのはコウである。
外部からの情報をほぼ遮断され、真っ白な空間に映し出された景色は
想像以上の臨場感である・・・。

 ユミ「コウ、ヘルメットの右耳の上辺りに小さなボタンがあるでしょ?」
 コウ「えっと・・・・・あ、はい」
 ユミ「それを押して、バイザーを下ろしてちょうだい」
 コウ「はい・・・・おぉぉ!!」

バイザーには3Dメガネのような効果が付いているようで、
部屋の中のフィールド映像がより立体的に、よりリアルに見える。

 コウ(ほ、ホントに外にいるみたい・・!?)




 ユミ「特殊な圧力スーツを着て入れば、今表示されているものに
    触った感触も再現できるわよ」
 コウ「す、凄いですね!!」
 ユミ「今日は時間がないから、またの機会ね」


 ユミ「・・じゃあ次、ターゲットとなるムゥリアンを出すから・・・」
 コウ「はいっ!」
同じ様に操作する・・


選択されたのは、最もポピュラーなムゥリアン『ゴブリ』。

その顔は、猿と豚を足して割り、それを叩き潰したようなグロテスクなもので
首はなく、ゴツイ胴に顔が付いたような異様な猫背・・。
ゴワゴワの茶色の体毛。両手には鋭く大きな爪。2足歩行で体長は約1.7m。

人間に近いサイズがゆえに、余計におぞましく見えてしまう・・・。


そんなものが、コウの目の前に突然現れる・・・。




 コウ「っわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!?!?


バーチャルながら、そのリアルすぎる立体映像に
思わず大声をあげ、見事すぎるV字開脚でひっくり返るコウ・・・


 コウ「ゲフッ!?」
勢いのまま後頭部をメットごしに強打。

と同時に、手にしていたUEサブマシンガンが数発、天井に向って暴発。











し〜〜〜ん・・・・・











 チカ「・・・え?;」
 イサミ(まったく、何をしているんだあの人は・・・・・)


 ユミ「・・・・・っ!!!」
   (・・わ、笑っちゃだめよ(((^^;))))




 ユミ(さ、流石にアレじゃコウが可哀相よね;)
   「・・・ゴ、ゴホン!・・。
    チカ、イサミ・・貴方達もこのゴーグルをかけて部屋に入ってみなさい」





・・・





結局、ムゥリアンのグロテスクさに(コウとチカが)大騒ぎしている内に
昼休みのタイムリミットを迎える事となった・・・・・。


 ユミ(・・・そうね、
    あの娘達はまずムゥリアンを見慣れるというところから始めないと・・
    ・・・・・・・それにしても・・・・)
   「・・・プフッ!!」

シミュレータールームで一人後片付けをするユミは
先程のコウのオーバーリアクションを思い出しながら
笑いを堪えるように屈み込んだ・・・・・。






一方、『騎士の館』を後にするコウ、イサミ、チカ・・・。

 チカ「―――・・マジ半端なかったっスね!、コウ先輩!!」
 コウ「そ、そうだね(^^;)ハハ」
 チカ「あんなの来たらアタシ本気でボッコボコにやってやりますよ!!
    やってやりますよアタシ!!!」

 イサミ「・・ならいいんだがな。フッ・・」

 チカ「あ!、今鼻で笑った!!」
 コウ「ま、まぁまぁチカちゃん・・」
 イサミ「美里先輩、貴方もです。むしろ心配なのは貴方です」

 コウ「うっ・・;。だ、大丈夫!、放課後はちゃんとするから!!」拳
   (嗚呼・・こんなはずじゃなかったのに・・・(T□T))

 チカ「アレはコウ先輩なりのユーモアなんだよ!!」

 コウ「ち、チカちゃん・・・・・」
   (そのフォローが今はとてつもなく痛いですorz)


 イサミ(やはりこの班は私とお姉様で担うしかないな・・・・・)




・・・・・




教室。5時間目前。

 スミ「―――――どうだった?、シミュレーターの感想は?」
 コウ「盛大に恥じかいた・・・」

机におでこをつけ、ズ〜ンと落ち込むコウ・・・。

 タエコ「アハハハ!、最初なんだし気にしない気にしない!!」
バシバシ!

 コウ「痛い・・」


 スミ「タエチーの言う通り、最初から上手く・・なんて思わない方がいいよ
    私達3人は地道派なんだからw」

コウはくるりと顔だけ横に向け、2人に目線を向ける・・

 コウ「・・・でもアレは我ながら酷かった・・・・・;」
 スミ「一体何を・・・(^^;)」




・・・説明中




 タエコ「アッハハハハハハハハハハ!!、コウ、アンタさいこー!!。
     あぁ〜アタシも現場にいれば良かった!!wヒィーwwフガッw」
 コウ&スミ「タエチー笑い過ぎ;」
      (引き笑いでブタ鼻なってるし・・・;)


 タエコ「・・・ハァハァ・・ヒィー・・・・・仕方ないな〜・・・」

笑い涙を人差指で拭いながら、タエコはポケットからケータイを取り出す・・


 タエコ「え〜っと・・コレか。・・ほい」
 コウ「?」

何かを操作し、コウにケータイを手渡す。

 タエコ「ムゥリアンの立体3D画像付きデータベース。
     放課後まで貸したげるから、しばらくコレ見て勉強するよーに!」
 コウ「ゴブリ・・・アイツだ・・・・・;」
 タエコ「アンタは昔から思い込みと勢いで行動する節があるけど
     そこに実が備わってない事が多いから
     少しは事前情報を集めるなりして、足場を固めてから動きなさい」
 コウ「耳がイタイです・・・・・」

 タエコ「授業中は見ちゃダメよ」
 コウ「わかってるよ」
 タエコ「教室でズッコケちゃ目も当てられn・・ブハハァー!!!ww」
 コウ「・・・・・」
 スミ「ツボ入っちゃったんだろうね・・・(^^;)」


 スミ「あ、そうそう
    今日の放課後はたぶん、シミュレーターあんまり出来ないかも・・・」
 コウ「え?・・・」






キーンコーンカーンコーン・・・。







放課後。
騎士の館、敷地入口。

ジャージ姿のアユミ先生が、竹刀を持って仁王立ちしている・・・。

 アユミ「ホラ1年、遅いぞ!!。
     ロッカールームに荷物を置いたら、
     ジャージに着替えて格納庫前に集合!」
 ミヨ「はい!!」




 リサ「・・・鬼だ・・鬼がいますぜ旦那」
 アカネ「あかんで〜アレは。今年も“鬼軍曹”気合入っとるわ」

学校の裏門の影に隠れ、
騎士の館の方を・・もとい、アユミ先生の様子を覗うリサとアカネ。


 シノブ「――・・2人共そんなところで何をコソコソと・・」

 アカネ「!?、アホ!静かにせぇっ!!」
 シノブ「あ、あああああアホっ!?!?、この私に向って!?!?
     アカネさん!!、貴方ねぇっ・・!」
 リサ「シノブっちシャラ〜ップ!!」


 アユミ「・・・ん?。淡路、小笠原、司馬ぁ!!
     そんな所で何を騒いでいる!、早く来いっ!!」
 アカネ「アカン・・・。またこのパターンや・・・・・」




・・・・・




騎士の館『ロッカールーム』。

団員に1つずつ割り振られたロッカーがズラリと並び、更衣室も兼ねている。



制服の腕章と同じ色のジャージに着替える面々・・・
(1年→青、2年→緑、3年→赤)

 コウ「―――・・放課後もシミュレーターできると思ってたら・・」
 スミ「こういうこと(^^;)。
    ムゥリアン予報が低くて訓練がフリーの時は、
    たまに後方組も全員引っ張り出して“基礎体力”させられるから」
 タエコ「鬼軍曹きついわ〜〜〜」

 コウ「鬼軍曹?」
 スミ「アユミ先生の事」


 カナコ「ま、無駄なお肉の付いた貴方にはキツイでしょうね」

着替え終わり、後ろ髪をファサ・・っと手で流しながら
一言残してロッカールームを後にするカナコ。

 タエコ「あんのツンツン女ぁ〜!!」ゴゴゴゴゴ・・
 コウ&スミ「(^_^;)」




ガチャ・・


 シイナ「お疲れ〜♪」
 アリサ「あ〜ん基礎体力めんどくさ〜いぃ〜」
 マキ「否・・・」

 フミコ「失礼します・・・」

 トキエ「ちぃーっス」
 タツミ「・・・・・」

そうこうしている内に、
次々と各学年の騎士様達がロッカールームに流れ込んでくる・・・。


 スミ「混んできたから先出るね」
 コウ「うん」
運動靴の紐を結びながら応える・・

 コウ(2人とも喋ってる割に意外と早いんだよな〜・・・)


 フミコ「――・・先輩」
 コウ「あ、フミコちゃん」
 フミコ「背中、出てますよ」
 コウ「ん?」
振り返って見ると、ジャージの下の体操服が腰からタレている・・

 コウ「・・・(==;)」

フミコはそれを無言で直してくれる

 コウ「ダメな先輩でゴメンよ〜;」
   (今日ずっと1年生の前で恥じかいてるな・・・私(T△T))

 フミコ「お尻少し上げて下さい」
 コウ「うん・・;」



 アリサ「あらあら、何だか微笑ましい事やってるわねw」
 シイナ「お隣さん同士のよしみにしちゃ、ちょっと怪しいわね〜w」

 コウ「か、からかわないで下さい!」
 フミコ「・・・・・」
フミコは無表情ながらも、少し動揺したのか・・


 コウ「はひゃっ!?!?」(@◇@;)
指がコウのお尻に絶妙な加減で当たる

 フミコ「す、すみません・・・・・・・ぷふっ!!」
昨日のシャワールームでの一件を彷彿とするようなコウのリアクションに
思わず小さく吹いてしまうフミコ・・・・・。

 アリサ&シイナ「アハハ!」
 トキエ「ちょっ、転校生・・なんだよその声w」




パタン・・。
我関せずで着替えを終え、ロッカーを閉めたマキが目を瞑り、一言・・・

 マキ「・・・・・感度、良好なり。」



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by: へろ
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