彩花の騎士
ストーリー 14

昼休み・0時40分過ぎ。

「1時前にシミュレータールームの前に・・」というユミとの約束があるので
『騎士の館』に近い、裏庭のベンチにて1人昼食を取るコウ。

購買で買った、デラックスジャンボ7色クリームパンを開け
フルーツオレのパックにストローを挿す・・


 コウ「ムグムグ・・」
   (―――・・意外と裏庭でお昼ゴハン食べる娘って多いんだ〜・・)

春の風に揺れる小さな花々が、程よい心地良さを演出する・・
それを感じて何となく納得。



 コウ(・・・それにしても・・・・・
    う゛ぅ・・ちょっとコレは甘すぎるかも・・・・・(〜□〜;))

 コウ(7色混ざると・・もはや何味かわかんないし;)

口の中にしつこく残る、菓子パン特有の過剰な甘みと
それが延々と続くデラックスでジャンボな名に恥じないボリューム・・

フルーツオレで流し込むも
パンも飲料もミックス系のため、口の中は完全に味の大渋滞だ・・・。





・・・・・完食。

 コウ「・・よ、よしっ!」
   (なかなか手強い敵(パン)だったわ・・・次はもっと普通のにしよ・・)



・・・



気を取り直し・・
裏庭からすぐの裏門を抜け、『騎士の館』の敷地に入る・・。


 コウ(―――・・・よく考えたら・・パンなら
    騎士の館の休憩室で食べればよかったんじゃ・・・w)


 コウ(でも裏庭が良い感じの場所だったのは新発見かも♪♪・・
    ・・・え〜っと・・シミュレータールームは2階だっt・・)

ズドーンッ!・・

 コウ「!?!?・・な、何っ!???」

2階へ向おうと階段に足をかけた瞬間・・
何かを叩くような大きな音が耳に飛び込んで来た。

 コウ「ととっ・・;」
驚きのあまり階段を踏み外し・・メガネまでズレる。


ズドーンッ!・・ズドーンッ!・・


乾き、重たいその音の直後、ギシギシと鎖が揺れる音・・・



1階の一室からだ・・・

コウは2階に行くのを少し止め、
「何事か?」とメガネを掛け直し、音が聞こえるその部屋へ向う・・・・・



 コウ「・・・トレーニング・・ルーム?」
恐る恐る、ドアに付いた小窓から中の様子を覗う・・


ズドーンッ!・・ズドーンッ!・・


・・目に飛び込んで来たのは・・・
タンクトップ姿のトキエが、汗を飛び散らせながら
サンドバッグがくの字に曲がるほどの、凄まじい蹴りを何度も繰り出す姿・・・。

 コウ(さ、佐伯さん凄ぉぉぉぉぉーーー!?)(@□@;)あわわ


 トキエ「シッ!・・・シッ!!」


 コウ(さ、佐伯さん凄ぉぉぉぉぉーーー!?)(@□@;)2回目


トキエの凄まじい蹴りに驚きながら、視線は部屋の中のさらに奥へ・・・・・




続いて目に止まったのは・・
相当な重さであろう大きな鉄アレイを両手に持ち
表情一つ変えず、黙々と筋トレをする生徒・・・。

 コウ(・・!、あの“大きい娘”だっ!
    ってこっちも凄い事になってますけどーっ!?)ギャフン

 コウ(そんなデッカイやつを軽々とっ!?)(@□@;)あわわ


ストーリー上ではまだ登場していないが
“親睦会”等を経ているコウは、その鉄アレイの生徒に当然見覚えがある・・

いや、コウに限らず大抵の人は
彼女を一目見れば印象に残るだろう・・・。


『嵐 タツミ』。
歩兵(突撃班)所属。トキエの直系の後輩になった1年生。

齢15にして、身長180cmの少女(?)。

小麦色の肌と、鍛えられた筋肉質な肉体は・・
アスリート・・いや、“傭兵”のような風格である・・・。





 コウ(―――・・・き・・騎士様をするってこういう事?;)

トキエとタツミ・・・規格外の女子高生の姿に
コウは圧倒され、少々不安になる・・



しかし、そのインパクトに目が馴れていくにつれ・・・

 コウ(――・・でも2人共・・
    ・・・なんかカッコイイかもっ!!!)ムフー!=3

彼女達の真剣さが伝わり、思わず鼻息も荒くなる。



昼休みに自主錬に励む2人の姿に、
熱い妄想娘のコウが感化されないはずがない

これからシミュレータールームに向う自分と重ね・・・テンションは最高潮だ。






―――






・・・2階に上がると、直ぐにシミュレータールームがある。

ユミはまだ来ていない・・・。

 コウ「・・・・・」
   (ホッ・・・言い出しっぺの私が後じゃなくて良かった・・。
    ・・でも、佐伯さん達カッコ良かったな〜・・・・・!)

・・妙にソワソワウズウズしはじめるコウ。




そして通路に人気がない事を確認・・・

 コウ(フフフ・・・こーやって・・)


 コウ(・・っわちゃーっ!!!=3)
自分の中で勝手に上げ過ぎたテンションがピークに達し
思わず心の声で叫びながら、先程のトキエの蹴りの真似をしてみる。

 コウ(・・痛つつ・・・やっぱりダメか;w)
普段上げない高さに勢いで足を上げたため、
膝裏にピーンとした痛みが走り、1人苦笑いでそこを摩る・・




 ユミ「・・・・・・・・大丈夫?」
 コウ「!?!?!?」

言葉にならない声で驚き、音速の速さで振りかえると・・
ユミが何とも言えない表情でコウを見ている。

 コウ「あ、え・・いや、えっと・・・これはですね・・・ストレッチを・・ハハ;」

 ユミ「・・・・・?。まぁいいわ・・入りましょう」

 コウ「は、はい・・・」
顔を真っ赤にして下を向いたまま、ユミの後ろに続く・・・


 コウ(やっちゃったよ私ぃぃぃー!(恥)
    よりによってユミ先輩の前で暴走したぁー!!orz)



・・・



 ユミ「―――――・・コウ・・コウ・・・・・美里コウ!」

 コウ「っ!?!?」

 ユミ「大丈夫?」
 コウ「あ、はい!、すみませんっ!!」
 ユミ「人の話はしっかり聞くように」
 コウ「す、すみませんっ!」
   (そうだよ私!、何やってんの!!
    ユミ先輩だって昼休み割いて来てくれてるんだから!)

我に返り、『シミュレータールーム』内を見渡す・・




コンピューターが幾つか並ぶ。

ユミが馴れた手つきでその一つを操作すると・・
部屋の中が明るくなっていく・・・

暗く狭い機械だけの部屋だと思っていたが、
そのコンピューター部屋をガラスで隔てた先には

ある程度の人数がダンスの練習ぐらいはできるであろう
真っ白で何もない空間が広がっていた・・・

 コウ「わっ、広いんですね!」

 ユミ「フフ、そうね。
    あっちの広い場所では生身で戦うさいの訓練を・・
    こっちの・・」

ユミがコンピューター部屋の奥に視線を移すと、
人一人が入れそうな球体の装置が2台見える・・・

 ユミ「・・アレがディアースのシミュレーター。
    私達ディアース班は両方使うから・・
    必然的にここでの訓練が多くなるわ」
 コウ「はい!」
   (そ、そうだよね・・私みたいな
    体育の評価万年“並”の“並み 並み子さん”が
    佐伯さん達みたいな・・・あんな凄い事・・・・・)




コンコン・・


・・と、ドアをノックして見知った人物が2人、慌てて入って来た・・・

 イサミ「遅くなりました!!」
 チカ「ハァハァ・・!」

 ユミ「丁度これからよ」

 コウ「??」
 ユミ「せっかくだし、
    ディアース班で先に説明だけでも済ませておこうと思ってね(^^)」

 コウ「あ、なるほど・・」
   (はぅ!・・自分の事ばっかりで班の事、何も考えてなかったよ私・・・;)



イサミがチラリとコウを見る・・・
 イサミ(・・二階堂同様、間の抜けている人だと思ったが・・・
     まぁ時間厳守は当然か・・・。)


 コウ(・・そう考えたら下の佐伯さん達も突撃班同士・・
    確かにこれじゃ、桐原さんの言ってた“2年生”団員失格だorz)
そんな事を思いながら、今度はコウがイサミの方を見る・・


 イサミ「・・・」
瞬間、イサミの目線は室内に移り
偶然だが目を背けるかたちになる・・・。


 コウ(!?・・・な、なんか見透かされてるみたい・・・;)

 イサミ(・・それにしても・・・
     流石、三枝女子だな・・。機材が充実している)

2人の考えている事は全く噛み合っていない・・・。




 チカ「・・ハァハァ・・おえ゛ぇ〜・・!」

 コウ「!?」ビクッ!?
 ユミ「だ、大丈夫?」

 チカ「ハァハァ・・・だ、大丈夫っスb」キラーン☆

 イサミ「時間配分を考えずに、呑気に食べていた貴様が悪い」
 チカ「ムキー!」
 イサミ「そのせいで私まで遅れるとばっちりだ」

 コウ(でもその言い方だと、イサミちゃん・・
    チカちゃんの事待ってたか、連れて来たか・・・どっちにしても
    (何も聞かされてなかったとはいえ)一人で浮かれてた私より全然・・)

 ユミ「さぁさ、じゃあシミュレーターの説明をするから・・
    コウは白い部屋へ、イサミとチカは見学ね」
 3人「はい!」

 コウ(・・よ、よしっ!!、少しでもイサミちゃんとチカちゃんに
    解り易いお手本が出来るように・・・!!)





―――・・・





一方その頃、1階のトレーニングルームでは・・・。

 トキエ「―――・・・・・ふぃ〜・・イイ汗かいたな、タツミ」

鉄アレイを置き、無言で頷くタツミ


 トキエ「・・っお、そろそろだな」
首にかけたタオルで顔の汗を拭きながら、壁の時計を見る・・



ガララララ!



勢いよくトレーニングルームのドアが開く・・

と・・シュシュで髪をアップに束ねた、ソバカス顔の生徒が飛び込んで来た。

車両班所属の2年、『司馬 リサ』だ。


 リサ「お呼びとあらば即参上!、
    シバリサ特急便、たっだいま戻りましたぁーーー!!☆」
茶目っ気たっぷりの横ピースとウィンク。

なんとも騒がしいリサの手には、
“中野家”と書かれたビニール袋が握られている。


 トキエ「来た来た♪」
手渡されたビニール袋から、上機嫌で
どんぶり型の発泡スチロールの容器を2つ取り出す・・


 トキエ「やっぱコレだよな〜・・中野家の牛丼♪」
 リサ「まったくトッキーは・・・。
    あっしのステルス機能がなきゃ
    お昼にこんなホッカホカ食べれないよ〜?、解ってんの!、ん?」
 トキエ「へいへい、有り難いこったよ・・。
     んじゃカツカレー2枚な」

リサはトキエが差し出した“食券”を受け取りつつ・・
無駄に1回転してポーズを決める
 リサ「毎度あり〜ん☆」


 トキエ「・・ステルスだか何だか知んないけど・・
     校外への無断外出・・・毎度毎度どうやってんだか・・・。
     ほいタツミ・・食お〜ぜ」
そう言いながら、容器の上に割り箸と薬味の小袋を手際よくのせ
タツミに手渡す

 タツミ「・・・ありがとうございます。」

 リサ「それは旦那、企業秘密ですぜウッシッシ・・。
    ってちょい待ちぃー!」
 トキエ「あ?」

 リサ「ここで食べるとまたカナコっちに怒られるよぉ〜、YO〜」
 トキエ「“YO〜”ウザッ」
 リサ「YO〜YO〜YO〜」

 トキエ「ま〜そうだな・・・タツミ、基本ここでは飲物以外禁止な。
     五月蝿いのがいっからw」

無言で頷くタツミ

 リサ「スルーですか!。
    でも先輩してるね〜、トッキー♪、んん?」
 トキエ「も〜いいよ、さっさと食堂行け・・」

 リサ「連れないにゃ〜。
    じゃ、あっしも可愛い後輩ちゃんを愛でてくるとしますか!ガハハ」
 トキエ「そーしろそーしろ。牛丼サンキュな」
 リサ「はいはい〜♪、またのご利用お待ちしてま〜っす!」


 リサ「♪牛〜丼一筋800年〜・・♪」
“中野家”のテーマソングを歌いながら
トレーニングルームを去っていくリサ・・・まるで台風だ。




 トキエ「・・・・・あぁいうタイプ苦手か?」

無言で首を振るタツミ

 トキエ「そっか・・じゃ上行ってメシにすっか」

無言で頷くタツミ
その口元は少しやわらかい・・・

 トキエ(先輩・・ね。確かに悪くはないな・・・)



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by: へろ
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