彩花の騎士
ストーリー 12

騎士の館・1階『シャワールーム』。



サーーー――――――・・・



シルエットが確認できる程度の、半透明の囲いで区切られた、
8つのシャワー・・

内、入口から並んで3つが使用中である・・・。




 ???「―――・・まったく・・・とんだ災難だわ・・・・・」

その中の一番奥のシャワーを使う生徒が
茶髪のロングヘアーを洗いながらぼやく・・

気の強そうなパッチリとしたツリ目が印象的な
『歩兵(狙撃班)』の2年、『桐原 カナコ』である。



カナコの左隣にはフミコが、入口横のシャワーにはコウが・・
特にカナコの言葉に賛同することもなく、黙々と髪を洗う・・・。






事の経緯は数分前、親睦会にて・・

見るからにほわほわとしたイメージを受ける
『通信班』の1年、『鈴木 スズナ』が
両手にジュースを持ったまま、大転倒し・・

たまたまそこに居合わせた、カナコ、コウ、フミコに
ジュースを浴びせてしまった事にある・・・。







 スズナ「―――・・・あのぉ〜・・バスタオル・・
     入口のカゴのところに置いときますねぇ」

一通り洗い流したコウ達3人に向って
脱衣所の方から、おっとりとした口調の声が掛かる

 コウ「あ、うん・・ありがとう」

 スズナ「はい〜、どう致しまして」


 カナコ「ちょっと転校生!、アンタ馬鹿なの?」
 コウ「ばっ・・えぇ!?」

シャワーの個室から身を乗り出すカナコ

 カナコ「そもそもの原因にお礼なんて言わなくていいのよ!
     そこの1年も自分が悪いって自覚あるの!」

 スズナ「す、すみません〜」

スモークの掛かったドア越しに、ペコペコ謝るスズナ・・



 ???「ちょっとカナコ、
     ウチの子だって悪気があったんじゃないんだから
     そんなにキツく言わないでくれる」


脱衣所の奥から、聞き覚えのある声が割って入る・・
『通信班』でスズナの先輩にあたるタエコだ。



三枝女子 防衛団では、
『班』という枠組み内の繋がりを重視する傾向があるため
入ったばかりのコウや1年生はともかくとして
2年生以上は、自分の直系の後輩を“身内”に近い認識で見る事が多い。




 カナコ「甘やかすんじゃないわよ、タエコ!」


カナコは勇み足でシャワールームを出、
バスタオルを引っ手繰るように体に巻き
脱衣所でタエコと言い争いをはじめる・・・

直ぐさま、タエコに同行していたスミが
2人を止めに入るも、納まる気配はない・・・。




カナコの性格が解るようなその様を見たコウとフミコは
シャワールームから出るのを少し躊躇し、
出入口を前に、目を合わせて苦笑いする・・・。

 コウ「す、凄いね・・・;」
 フミコ「はい・・」



 フミコ「・・・・・・・」
 コウ「・・ん?、どうかした?」


 フミコ「!・・あ、いえ・・」
    (この前先輩の家に泊まっときはお風呂・・別々に済ませたけど・・)

目の前にある裸体のコウの背中・・後ろ髪の先からゆっくりと流れ落ちる滴・・・

 フミコ(・・・・・・・・どうして先輩って・・こんなに無防備なんだろう・・・)


 コウ「――じゃ、出よっか」
 フミコ「はい・・」

ドアに手をかけるコウ・・・



 フミコ「・・・・・・・」

すると何を思ったのか・・
フミコは突然、コウの背中を“ツツ・・”と人差指でなぞる・・・。


 コウ「っあひゃぁあっ!?!?!?」


と同時に、
これでもかと背中を仰け反らせ、凄いリアクションを見せるコウ。


 フミコ「・・ぷふっ!」
その反応に、思わず口を抑えて吹いてしまう



 コウ「えっ!?、ちょっ!、フミコちゃん!?!?(@□@;)」
状況が全く理解できないコウと

 フミコ「・・・・・・っ!!」
コウのリアクションがツボに入ってしまい、
声を殺し、下を向いて肩を震わせるフミコ・・



・・・



そんなまさかのフミコの悪ふざけに
コウも乗っかり、フミコをくすぐりに掛かる・・・。


シャワールーム内にキャッキャ、キャッキャと響く2人の少女が戯れる声・・


その声は、脱衣所まで聞こえ
カナコとタエコの言い争いを中断させるものとなったが・・

じゃれ合うコウ達がそれに気付く事はない・・・・・。



―――ガラガラガラッ・・!



 タエコ「・・・・・アンタ達・・素っ裸で何やってんの・・・?;」

 コウ「・・ぇ?」
 フミコ「・・・・・」








―――――・・・







・・・格納庫に戻る道中。

ジャージ姿のコウ、カナコ、フミコ。
他、付き添いのスミ、タエコ、スズナ。


 カナコ「―――随分と仲がお宜しい事で!」

 コウ「うん、私達アパートのお隣さん同士なんだ(^^)」
 カナコ「そういう事言ってるんじゃないのよ!」

 コウ「?」
 カナコ「馬鹿なの!」
 コウ「まっ、また!?」ガビーン

 カナコ「(まったく、皮肉も通じないの?)」ブツブツ


 カナコ「それと富士原フミコ!、貴方は今日から狙撃班なんだから
     まずは直系の先輩であるアタシと!・・その、アレよ!」
 フミコ「・・・?」

 カナコ「アタシを優先しなさいって事よ!」
 フミコ「?・・はぁ・・」


 タエコ「(妬いてる妬いてるw)」

 カナコ「ちょっと何か言った!」
 タエコ「べっつに〜」(・3・)〜♪


 タエコ「まぁそんなイライラしなさんな・・」ニヤニヤ
カナコの肩をポンポンと叩くタエコ・・

 カナコ「腹立つわね〜・・そのしてやったりみたいな顔・・・・・」




・・と、一同は格納庫入口付近に立つ、イサミの姿を見つける。


 コウ「あ、イサミちゃん!、わざわz・・」
 イサミ「勘違いしないで下さい。
     ユミお姉様に見てこいと言われたので来ただけです。
     あと先程も言いましたが、“ちゃん”付けは止めて下さい」

 コウ「うぅ・・」

 フミコ(この人が先輩の・・・)



 カナコ「あっらぁ〜?、人の班の後輩にちょっかい出してる割には
     自分のところの後輩とはあんまり上手くいってないみたいね〜?」

 タエコ「さっきから感じ悪いわよ、カナコ」
 カナコ「はぁ?、何が?」

 スミ「また2人とも!」


 コウ「・・そ、そうだよ。
    同じ防衛団なんだから仲良くやろうよ・・!」
 カナコ「は?、アンタがそれを言う?、入ったばっかりのアンタが?」

 コウ「・・っ」


 イサミ「・・・・・」


 カナコ「言っとくけどねぇ、アタシはまだアンタの事
     同じ2年生団員とは認めてないからね!、転校生!!」


瞬間、静まる・・
イサミも同調するかのように、鋭い眼差しでコウを見つめる・・・。


 コウ「・・・・・」


 スミ「・・・こ、コウ・・・?」
 タエコ「カナコ!、アンタッ・・!!」


 コウ「・・じゃあっ!!!」
タエコの次の言葉を止めるように、コウは声を上げる



 コウ「しょ、勝負しようよっ!!」
まさにそれは、カッとなって思わず出てしまった言葉。



 スミ「え?・・・・・コウ・・?」
 タエコ「ちょっとちょっと、急に何を・・」


 カナコ「いいわねそれ!、面白いじゃない!!」
タエコの次の言葉を止めるように、今度はカナコが声を上げる・・
それ以上のフォロー云々を言わせんとするかのように。



 タエコ「・・・あちゃ〜・・・・・」
 スミ「カナコさん、ああいう性格だけど・・」
 タエコ「口先だけじゃない、才能ある努力家なんだよね・・」
 スミ「うん・・・」



 カナコ「で!、何で勝負するの!
     体力勝負?、それともシミュレーター?
     なんなら取っ組み合いでもいいわよ?」
腰に手を当て、見下すかのような態度のカナコ

 コウ「しゅ、シュミレーター!!」

 スミ「シミュレーターね;」
 タエコ「アンタやった事ないでしょーに・・」



 カナコ「フフン、OK。
     アタシも鬼じゃないわ、1週間待ってあげる・・
     その間、せいぜい恥をかかない程度に努力なさい」

・・そう言い残し、髪を靡かせ格納庫に入っていくカナコ。
その口元は、不敵とも満足とも取れるような小さな笑みを浮かべて・・・。



 コウ「フー!フー!=3」

 タエコ「ホラホラ、鼻息鼻息。
     ・・まったくアンタは・・・変なところでややこしいんだから・・・」
 スミ「まんまと・・って感じね・・・」(^^;)







―――――・・・







そんなこんなで一同、格納庫に戻ると、
既に親睦会の片づけが始まっていた・・・。


 ユミ「―――コウ、イサミ、こっちよ」
 ???「フミコもだ」

手招きするユミ、その横には・・

長身で中性的な顔立ちの・・
男性のものとも、女性のものとも取れる独特な色気を纏うお姉様・・
『歩兵(狙撃班)』の3年・班長、『宝塚 カヲル』の姿と


 ???「ごめんね〜、ウチの子が迷惑かけちゃって」

口もとのホクロ、ウェーブのかかったロングヘアー・・
そしてボンッキュッボンッの3サイズ・・・見事なフェロモンを放つお姉様・・
『通信班』の3年・班長、『日高 アリサ』の姿があった。




・・・




各班の班長のもとに、シャワールームに行っていた面々がそれぞれ集まる。

 チカ「コウ先輩!、お菓子確保しておきましたよ!b」
親睦会で余ったお菓子を詰めたビニール袋を、得意げな顔で手渡すチカ

 コウ「あ、ありがとう・・;」
チカの大きな声に若干の恥ずかしさを覚えるものの
その心遣いは嬉しいものである。



 イサミ「・・・美里先輩」
 コウ「ん?」
 イサミ「・・もし、あのまま言い負かされて黙ってしまうようなら
     私は先輩を軽蔑していました。」
 コウ「・・・」
 イサミ「・・・その・・
     班の評判を落とさない程度には頑張って下さい」
若干頬を赤くし、一切目線を合わさないまま
イサミなりの不器用なエールを贈る・・。

 コウ「ありがとう!、私、頑張るから!!」


 ユミ(・・フフ・・・良い感じじゃない・・・)




多少のトラブルはあったものの、
各々が繋がりの種をまき、親睦会は終わりを迎えた・・・・・。



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by: へろ
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