彩花の騎士
ストーリー 10

放課後。

騎士の館・2階。


以前、コウや1年生達が入った「休憩室」の隣にある『作戦室』。


壁には大きめの電子黒板がかけられ、その前には教壇。

それらを見るように
横に3列、1つの列につき縦に4つ・・
計12の横長のテーブルが部屋に並べられ
1つのテーブルに対して、3つの席が備えられている。

左の通路側の列に1年生、中央に2年生、
右の窓側の列に3年生・・・

騎士様と呼ばれる三枝女子防衛団の少女達が座り、
教壇に立つ『進藤 アユミ』先生の話が始まるのを待つ・・・。



 アユミ「―――では、これより今年度の私立三枝女学園 防衛団の
     結成式を行なう」

その言葉に、室内の空気が引き締まる。




続けて、『三枝 シマ』校長がアユミ先生に代り、壇上で話をはじめる・・・。




この世界ではムゥリアンという外敵、
それに伴う避難義務・防衛義務が当たり前として存在するため

どんな言葉で戦う理由付けをしようとも
身に降る火の粉には、否応無しにその対処が求められる・・・

だからといって・・いや、だからこそ
戦いに志を持ってほしいと

適合者というだけで、勝手に選ばれた事を不服に思う者もいると思うが
「守れる力がある者が、力のないものを守る」という節理・・
人として行うべき正しい道を持ってほしい・・と。

そんな防衛団をやっていく上での心得や、
この経験が将来に必ず役立つであろう事などが、

自ら地球の騎士として、
それを実践してきた“生きる伝説「鋼の乙女」”の口から語られる・・・。

その説得力、言葉の力は絶大で、
この場にいる誰もが、改めて実感や責任感を確認する。






―――――






・・・10分弱の校長の話が終わると、
誰ともなく拍手が起こり・・室内に一体感と、程よい高揚感が生まれる・・。

それに微笑みで応えた校長は、最後に激励の言葉を残し
作戦室を後にした・・・。








・・・校長退室後、壇上に再びアユミ先生が上がり、次の目録に移る。


 アユミ「・・・では次に、君達をサポートして行く教員の紹介だが・・
     去年と変わらないので手短に・・・」

 アユミ「まず私、『進藤アユミ』。
     君達の指導及び、歩兵の支援・・
     それとこの団の大まかな代表を務める。
     ウチの防衛団は生徒の自主性を尊重するのがモットーなので
     代表ではあるが、今年度の団長のバックアップと考えてくれ。
     これから1年、宜しく頼む」

一定の拍手を得た後、
アユミ先生はドア近くに立つ2人の教員に目線を向ける・・


それを受けた一方の教員・・キリア先生が
白衣をヒラリと靡かせ、巨乳を上下に揺らしながら・・・教壇に立つ。

 キリア「整備班長の『浦沢 キリア』だ。
     毎回自分で言うのも何だが・・腕は確かだ
     整備に関しては安心して任せてくれ、以上」


次に、キリア先生と入れ替わるように
最後の1人の教師が教壇に向う・・・

その容姿は、先のアユミ先生やキリア先生の攻撃的な雰囲気とは対照的に、
見るからに温厚で包容力がにじみ出ている。

 教師「皆さんの怪我の治療や、カウンセリングを担当させてもらいます
    『齋藤 サナエ』です。
    校医もしているので、防衛団の事はもちろん
    普段でも何かあった時は、いつでも気軽に声をかけて下さい(^^)」





―――教師達の自己紹介が終わり・・

キリア先生とサナエ先生は用事があるとの事で、作戦室を退室する。






 アユミ「・・・続いて、今年度の団長及び副団長を発表する。
     去年の活動内容から決めたものだが・・・・・
     団長、『真矢 ユミ』」

 ユミ「はい!」
3年生の最前列の生徒が、その場で立ち上がり
一斉に注目を集める・・

 コウ(!?、キラキラのお姉様だ!!)

そう、今朝の登校時にコウが思わず目を奪われた
カチューシャロングヘアーの3年生である。


 アユミ「よし、今年1年宜しく頼むぞ」

ユミはアユミ先生に応えた後、くるりと1、2年生が座る方を向く・・

そして丁寧な言葉でありながら力強く、挨拶と意気込みを述べる。

堂々と、それでいて気品さも損なわない姿・・・


 コウ(・・・・・やっぱりカッコイイな〜・・
    私じゃ何度も噛みそうな言葉もスラスラ・・
    特にあのオーラみたいなのがもぉ・・騎士様って感じで!=3)

コウがそんなユミに改めて見惚れる中、
その後方で、同じ様に熱い視線を向ける1年生がいた・・・

始業式の下校時、コウに対して
注意をしてきたポニーテールの1年生・・・『石橋 イサミ』である。

 イサミ(・・・・・)









 アユミ「―――副団長、『風真 マキ』」

 マキ「・・はい」
次に、3年生の2列目の生徒が立ち上がる・・

御団子状に纏められた髪、薄い眉と切れ長の目の3年生だ。



ユミ同様、マキもアユミ先生に引き受ける意を示した後、
1、2年生に対して挨拶をする・・

 マキ「・・・若輩者だが宜しく頼む」


簡潔に一言・・


一見クールなのだが、
何故かそこから受ける雰囲気は、真逆の熱いものである。

どんな修羅場をくぐってきたら、女子高生がこのような空気を纏うのか・・
そんなものを感じさせる貫禄が、彼女からはにじみ出ていた。

例えるならそう、“武将”のそれである。


 コウ(・・・な、なんだろ・・・・・私と対極の位置にいそうな・・
    漫画で言えば“敵だと恐いけど味方だと心強い”・・
    ・・みたいな雰囲気の先輩だな〜・・・;)


そのオーラを感じ取ったコウは
マキに対して、若干距離を取る第一印象を持ってしまう。

しかしながら、体力自慢であろう何人かの1、2年生の表情を見れば、
風真マキという存在は
コウがユミに抱く“理想的憧れ”と同様の対象である事が判断できた。







―――







 アユミ「―――・・・では皆、一端立ってくれ」

そう促がされるまま、生徒達が席を立つ・・

 アユミ「これから今年度の“班分け”を行なうので
     呼ばれた者は左端・・君達から見たら右端か・・
     順番に席を移動してくれ」



三枝女子 防衛団では、より効率的に防衛できるよう、
担当する内容を絞った7つの班から構成されている。

『ディアース班』は、人型汎用兵器ディアースを駆使し、
『歩兵(突撃班)』は、最前線での戦闘を、
『歩兵(狙撃班)』は、後方からの戦闘を、
『歩兵(支援班)』は、それらのバックアップ、
『車両班』は、車を使って運搬などを、
『通信班』は、軍との連絡や、偵察カメラなどを使った情報サポート、
『整備班』は、ディアースや武具の整備を行なう。




 アユミ「2、3年は今の班を引き続き・・、
     1年は入試、既に取得している免許や資格、
     先日の体力・魔法力測定等々から出た結果で振り分けている・・。
     まずディアース班から・・・・・」


<ディアース班>
3年:真矢 ユミ(班長)
2年:美里 コウ
1年:石橋 イサミ、二階堂 チカ


 コウ(・・キターーー!!、騎士様!・・キラキラのユミ先輩と同じ班っ!)
思わず鼻息が荒くなってしまうコウ・・。

対照的に当然という表情を浮かべ、清ますイサミ。


 チカ「え!?、アタシ、ロボット乗れんのっ!?」

 アユミ「静かにしろ!、呼ばれた者は席を移動して班ごとに固まって座れ」
 チカ「!?、は、はい!」

 ユミ(フフ、去年はお姉様と私だけだったけど・・
    今年は4人、賑やかになるわね)



3年生達がいる列の席に、軽く会釈をしながら入って行くコウ

 シイナ「ウチの花形なんだから、頑張んなさいよ、コウ」
 コウ「あ、はい!、シーナ先輩!」

ユミの横にいたシイナが一声かけ、コウに席を譲る・・・。


緊張の中にも喜びが解るコウの表情・・
それを少し複雑な表情で見る生徒が1人いた・・・


 フミコ(・・・先輩とは違う班か・・・・・なんだろ・・
     今まで班とか係とかって、あんまり気にした事なかったのに・・・・・)

と、そんな視線に気付いたのか、偶然なのか
コウは座りながら、ふと1年生の方に目線を向ける・・・

 フミコ「!?」
 コウ「!」

一瞬目が合う・・・



小さく微笑んで返すコウだが
フミコは気付かないフリをして目線を外す・・

 コウ「・・・?」






 アユミ「では次、歩兵(突撃班)―――」

<歩兵(突撃班)>
3年:風真 マキ(班長)
2年:月見 ユエ、佐伯 トキエ
1年:嵐 タツミ


 コウ(タエチーから聞いてたけど、ユエちゃんも騎士様だったんだよね・・)


『月見 ユエ』
どこか和風の印象を思わせる、毛先を大雑把に揃えたショートカットの少女。
コウやスミ、タエコと同じ地元の小・中学校時代からの同級生である。
とはいえ、文化系のコウ達に対して、スポーツマンであったユエは
“学校では話すが、プライベートではそれほど付き合いがないクラスメイト”
・・という感じの仲であった・・・が。





―――アユミ先生に名を呼ばれた『歩兵(突撃班)』の面々が、
『ディアース班』の後ろの席に座る。


そして丁度コウの後ろにユエが座る形となり、
コウの肩を“ちょんちょん”と、ユエが叩く・・・。

 コウ(?)

振り向くと・・
ユエがニコリと笑い、小声で話しかけてくる・・・

 ユエ「(久しぶり)」
 コウ「(うん!)」

 ユエ「(帰って来てたのは知ってたけど、中々会う機会なくって・・)」
 コウ「(いいよ別にそんな・・)」

 ユエ「(でもホラ・・“あの時”からあんまり喋ってなかったから・・)」
 コウ「(!?・・・わ、私の方こそあの時はゴメンね・・)」

 ユエ「(?)」
 コウ「(お互い受験で大事な時期にあんな事言っちゃって・・・)」


つい先程まで騎士様だの、カッコイイ先輩だのと浮かれていたコウだったが
ユエの“あの時”という言葉をキッカケに、今それらの思考は全てストップし、
過去のとある出来事が一気に頭を埋め尽くす・・・・・。






明確に思い出される、初登校の日の朝に見た“あの夢”・・・・。


告白し、玉砕した・・・。


いやアレは夢などではない・・
中学3年の冬、コウとユエの間に起こった“現実”。






 ユエ「(―――・・んーん、今ならあの時コウが
     凄い勇気出してくれたの、少し解る気がするから・・)」


当時、玉砕こそすれ、
引っ越す前に告白をした事で、
心の整理、気持ちに一応の決着を付けたコウにとって

改めてユエの口からその話が出た事に
言いようのない気恥ずかしさが押し寄せる・・・。

それと同時に・・
根っからのスポーツマンであり、色恋沙汰に無頓着だったユエが
1年以上経つ今でも、“自分の告白”を気に留めていてくれた事に
何とも言えない嬉しさも覚える・・

そんな2つの感情が交ぜ合わさり、
コウの顔はみるみる赤くなり、勝手に涙が込み上げてくる・・・。




 アユミ「コラそこ!」


アユミ先生の一喝に、ハッとするコウとユエ・・・。


 ユエ「(ゴメン怒られちゃった;、また後でね・・)」
 コウ「(う、うん・・・)」


コウは目にゴミが入ったような素振りで、
その場であった事を回りに・・自分の表情をユエに対し、上手く誤魔化す・・



気が付けば、既に班分けの発表は終わっていた・・・。




<歩兵(狙撃班)>
3年:宝塚 カヲル(班長)
2年:桐原 カナコ
1年:富士原 フミコ

<歩兵(支援班)>
教員:進藤 アユミ(班長)
3年:岬 ナギサ
2年:−
1年:一条 イチル、此花 ミヨ

<車両班>
3年:海道 ケイ(班長)
2年:司馬 リサ
1年:米村 サチ

<通信班>
3年:日高 アリサ(班長)
2年:墨田 スミ、伊倉 タエコ
1年:鈴木 スズナ

<整備班>
教員:浦沢 キリア(班長)
3年:秋津 シイナ
2年:淡路 アカネ、小笠原 シノブ
1年:閃 モトコ


・・・以上。



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by: へろ
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