彩花の騎士
ストーリー 05

長い一日が終り・・・翌日。





―――朝の教室。


身体測定のため、体操服に着替える生徒達。


 コウ「―――え?」
上着の裾を整えながら、不思議そうな顔で問う

 タエコ「手っ取り早いから“身体測定”って言ってるだけ」
 スミ「実際は身体測定、健康診断、体力測定、魔法力測定を纏めた・・」
 タエコ「測定祭w」
 コウ「うへ〜・・・」

 タエコ「実はコレ、“1年の新しい騎士様”選抜も兼ねてるのよ」
 コウ「っ!?」
 タエコ「どんな娘が騎士様になるのか気になるなら
     魔法力測定の時、ちょっと注意して見ててみ」
 コウ「・・?」
 タエコ「ウチの学校も世間一般の御多分にもれず
     騎士様・・つまり防衛団員は“魔法力の有無”が基本だから」
 コウ「う、う〜ん・・私その魔法力とかっていまいち疎いんだよね・・(^^;)」


そんなコウの言葉に、スミは黒板の端を使って説明する・・・




その内容を纏めると・・・



『魔法力』とは、特定の波長の“精神エネルギー”の事であり
これを持つ人間の事を『適合者』と呼ぶ。

基本、先天的な力であり、誰しもが持っているわけではない。

適合者の最大の特徴は、『ウルズマイト機関(エンジン)』と呼ばれる
機械装置を積んだ乗物や、兵器を扱う事ができ
それらの兵器は“ムゥリアンに対して圧倒的に有効”なのである。




 スミ「―――だから一般的に防衛団員は、
    適合者・・魔法力を持つ人が多いわけ」
 コウ「・・測定で魔法力の有無を見ていれば
    新しい騎士様が分かるって言うのは・・・」
 タエコ「そゆこと。測定器が薄っすら光ってる娘がいたら要チェックね」

 スミ「あ、でも誤解しないでほしいのは
    適合者が戦う道具みたいな解釈ね。
    昔はそういう差別もあったみたいだけど・・」
 タエコ「ま、さっきのスミの説明はあくまで戦闘向けに端折っただけだから」
 コウ「うん」
 タエコ「今じゃ科学も進んで
     二十歳過ぎれば手術で誰だって適合者になれるし
     その事でウルズマイト機関の需要は上がって、生活にも大分根付いてるっしょ?」
 コウ「・・そう・・だっけ?」
 スミ「一見すると分からないけど、
    車とかも魔法力が動力なの結構あるよ」
 タエコ「あと工事現場とかにあるロボット・・」
 コウ「ヘビーウォーカー・・だったよね?」
 タエコ「知ってんじゃん。アレも半分は魔法力が動力。
     んでもって、我が校の校長先生の武勇伝でお馴染み・・」
 コウ「ディアース!」
 タエコ「そ、アレはバリバリの魔法力可動。
     ちなみにこの学校にもディアースあるんだけどね、コレ自慢w」
 コウ「へ〜・・・」
 タエコ「こんな山奥の学校にディアースがあるなんて
     まさに鋼の乙女様様ね。使用頻度低いけど・・・w」


そんな会話をしている3人・・

気が付けば、教室中の生徒達が興味津々という顔で
コウ達の話に聞き入っていた・・・・・。






――――――――――






“測定祭”は、各自それぞれが自由に校内を移動し、
各所に設けられた測定・検査を好きな順に受ける・・という形式をとっている。

このスタンプラリーのようなやり方は、概ね生徒達から好評で
測定項目の多さを良い具合に緩和している。






―――――・・・・・






体育館。

 コウ「ふぎぃぃー!!」
 タエコ「アハハハハハ!」
 スミ「プフッ!」

握力測定にて、少しでも良い結果を出そうと力むコウ
その凄まじい形相を見て、大笑いするタエコと、吹き出すスミ






・・・そんなこんなで、次々と測定を消化していく3人・・・・・







残すは“魔法力測定”だけとなったところで・・

 タエコ「ほいじゃ、アタシ達は先に食堂で休憩してるから・・」
 コウ「うん!」


スミとタエコと別れ、
魔法力測定が行われている本校舎3階『多目的教室』へ1人で向うコウ・・・。









『魔法力』というものは、
心身の成長や鍛練といったもので上下する事はない。
まさに“天からの授かりもの”、そのものである。

現状では、後天的に“手術”で身に付けることや、強化する事ができるのだが・・
その手術は“20歳未満禁止”という世界規定が存在する。


そのため、“10代”で魔法力を持っているという事は
便利、不便、戦える、戦えない・・といった使用の有無に関係なく
ひとつの“タレント性”として扱われることが多い・・・


この彩花街・・特に三枝女学園内で
防衛団を『騎士様』と呼び、もて映やしている傾向は
ただ単に戦う乙女達への敬意だけではなく・・

タレント性を持つ者・・つまり“アイドル”
としての意味合いも多分に含まれているからだ。


年頃の少女達にとって、
アイドルという存在は“どんな形”であれ、必要不可欠である・・

“戦いが身近にある世界”だからこそ
その“戦える力”を持っているという事は、それだけで・・
スポーツや歌唱力等に秀でた・・いわゆる“学園のアイドル”と等しく・・
いや、それ以上のステータスがあると言ってもいい。


また、中には騎士様を“清らかな乙女のシンボル”のように見る
生徒(ファンを超えた信者)も存在している。

世の中に“後天適合者(魔法力を手術で得た大人)”が増えた事で、
10代の適合者は「体をいじっていない」「何も混ざっていない」「純粋な」
「そして儚い(大人になれば後天適合者と大差がなくなる)」・・といった
イメージが先行し、美化された結果なのだが・・

この学校では、そんな見方すら行き過ぎではないとされている。









―――――コウが本校舎3階に到着すると、そんな事を実証するように・・

『多目的教室』の前の廊下に
多くの生徒達が溢れかえっていた・・・。

まさにそれは、“騎士様をアイドル視”し、
“1年生の新しい騎士様”をいち早く見たい・・という生徒達(ファン)の集まりである。



スミやタエコがコウと別れたのは
“変動しない”魔法力の測定をパスする意味もあったが・・

このファンとの遭遇による、混乱を避けるためでもあった。

たとえスミやタエコに“その気”が全くなくとも
ファン達からすれば、2人は騎士様(アイドル)なのである。





―――と、ほどなくして・・

ファンの人だかりの最後尾で
多目的教室に入るタイミングを覗っているコウに・・


 ヨシコ「コウ!」

体操服姿にデジカメを首にかけ、メモを持ち、ペンを耳に引っ掛けたヨシコが
その人だかりを無理矢理かき分け、歩み寄って来た・・

 コウ(・・うわ〜・・流石ヨッシー・・・私じゃあんな強引な事できないや・・・)

 ヨシコ「ふぃ〜・・」
 コウ「だ、大丈夫?」
 ヨシコ「平気平気」
 コウ「・・にしても凄い格好だね・・・」
 ヨシコ「そぉ?」
 コウ「う、うん・・」
 ヨシコ「まーそれは置いといて・・・収獲あったよ」
 コウ「・・・もしかしてずっとここに?」
 ヨシコ「アハハ、まっさか。部員と交代でやってるわよ。
     ・・それより1年の騎士様候補見たくない?、見たいでしょ?」

ヨシコはコウの返事も聞かず
持っていたデジカメを慣れた指さばきで操作し、
画像の一覧データを見せてきた・・・


そこには5人ほどの1年生がピックアップされており・・

 ヨシコ「・・・どぉ?、アタシ的にはこの娘なんて・・」
 コウ「あ!、この子・・」

ほぼ同時に2人の視線がある写真の娘に向けられ、言葉が交差する・・

 ヨシコ「ん?、知ってる子?」
 コウ「あ、いや・・・知ってるというか・・」


その写真の娘とは・・
昨日、コウが下校直前に校門前で出会った・・というより怒られた
“鋭い目のポニーテール少女”である。


 ヨシコ「好みのタイプとか?w」
 コウ「じゃ、じゃなくって!」
 ヨシコ「アハハ、でもこの娘は要チェックよ」
 コウ「?」
 ヨシコ「絶対人気でるわね。
     容姿的には騎士様・・って言うより侍みたいだけど・・w
     この凛々しい感じがイイわ。
     なんていうか、オーラがブワァ〜っとね!」

その言葉にコウは、
予想が的中したような気分になり、小さな嬉しさを覚える・・


 ヨシコ「名前は『石橋 イサミ』・・1年B組。
     魔法力の高さ、運動神経・・共に申し分なし
     まさに超大型新人、期待の新星よ!。
     ・・・他にはね〜・・・・・」

ヨシコが言葉を続けようとした時・・


多目的教室から、教師の1人が出てくる・・。


教師は廊下に集まるファン達を散らせると同時に、
まだ魔法力測定を受けていない生徒の入室を促がす。



 コウ「―――あ、じゃあ私まだだから、先受けてくるね」
 ヨシコ「ほいほい」







――――――――――







その数分後・・
コウは普通の学生生活とおさらばする事となる・・・・・


 コウ「―――――・・・・・え!?・・・・私が・・・・・適・・合者?」



そう・・魔法力測定の結果、
自分が『適合者』である事が判明したのだ・・・。



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by: へろ
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