彩花の騎士
ストーリー 03

放課後。
と言っても始業式のみだったので、まだ正午前だが・・・。


廊下を歩くコウ、スミ、タエコ。
コウの学校案内中である。

 コウ「聞いてないよ!、二人が騎士様だったなんて!!」
 タエコ「顔近い顔近い」

 スミ「コウ引っ越す前に自分で言ったでしょ?
    “ここに帰ってくる楽しみを大きくしたいから”
    戻るまでは連絡は最小限に、学校の話題は禁止に・・って」

 コウ「うっ・・そ、それはそうだけど・・・。
    でもでも朝からだって教えてくれても・・
    私の騎士様愛知ってるでしょ!?」
 タエコ「だからこそ、あえてアンタの口からその話題が出るまで待ってたのよ」
 スミ「そうそう、私達から言うのも何だし・・・」

 コウ「そりゃ二人の気遣いは嬉しいし、
    自分でも騎士様の話はメインディッシュ的に今まで置いてたけど!。
    まさか当人になってるなんて一大事にも程がー・・!!!!!=3」
興奮のあまり感情の制御が出来ず
凄い形相でスミの両肩を持ってブンブン揺するコウ

 スミ「ま、まぁ・・落ち着いて・・・」(^^;)




――――――




 コウ「――でも二人が騎士様か〜」

 スミ「う〜ん・・騎士様って言っても、私達は適合者であれど
    魔法力は大してないから、バックアップの方で・・」
 タエコ「そうそう。
     アンタが憧れてた、ムゥリアンと戦うカッコイイ騎士様とは・・」
 コウ「それでも凄いよ〜。・・はぁ〜・・・・・・・」
お祈りをするように胸の前で手を組み、少し上を見ながら目を瞑るコウ

 タエコ「・・・お!。メルヘンモードのコウ、久々に見たわw」
 スミ「こうなるとしばらく私達の話聞いてないのよね・・」(^^;)

 タエコ「・・にしても、こんなに忙しい子だったっけ?」
 スミ「そりゃ1年間我慢してたんだし、今日ぐらいは・・・・・」







―――――――――――







そんなこんなで、学校案内は一通り終り―――。

裏門前。


 タエコ「ホラ、裏門出て、道路挟んだ先の建物が・・」
 コウ「“騎士の館”ね!!」
 スミ「そう。正しくは“三枝女子 防衛団 専用施設”。通称『騎士の館』」

眼前にある、校舎を一回り小さくしたような建物に
目を輝かせるコウであったが・・


 タエコ「じゃ、コウはここまでね」
 コウ「え?」
 スミ「ゴメンね・・騎士の館は武器とか色々あるから
    安全上、団員以外の生徒は入れないのよ・・」

 コウ「・・え、えぇぇぇーーーーー!?」

 タエコ「アタシ達、通信班だから
     これから夕方まで待機しとかなきゃなんないし・・」
 コウ「そ、そんなカッコイイ台詞・・・タエチーらしくないよ!!」
 タエコ「アタシのキャラは関係ないでしょーに」
 スミ「ハハ・・・あ、そうだ!。
    ヨッシーのところに行ったらどう?」

 コウ「ヨッシー・・・」
 スミ「そう。コウの昔近所だった、私達と仲良くなる前はよく遊んでたって・・」
 コウ「あのヨッシー!」
 スミ「そうそう」
 タエコ「今は新聞部で、
     校内新聞とは名ばかりの“騎士様情報誌”作ってるわよ」

 コウ「!?」
驚いた・・というよりも、何かを思い出したような顔をするコウ・・・








――――――――――――――








本校舎から渡り廊下で繋がった『別館』。
ここの『2階』は、文科系クラブの部室が集まるフロアだ。


コウはスミ達に言われ、このフロアにある“新聞部”を訪れていた。



 コウ「・・・失礼しま〜す・・・・・」
軽くノックをした後、恐る恐る扉を開く・・・

 ?「!?・・・コウじゃない!」
部室に唯一いた生徒は、コウが見知った人物だった・・。


活発さがにじみ出たような、サッパリとしたショートカットの少女。
名を『田所 ヨシコ』、通称『ヨッシー』。


コウにとっては、スミやタエコとは“また違う旧友”。

昔住んでいた家のご近所さんで、幼少時から登下校を共にした幼馴染・・・。
ではあるのだが・・・小・中学校と、クラスが一度も一緒にならなかった事もあり
年を重ねる毎に交流が少なくなっていった・・・という間柄の旧友である。



しかし、そんな2人の間にも、“大きな繋がり”があった・・・。



 ヨシコ「来ると思ってたわよ!、鼻息事件の犯人さん♪」
そう言いながら、持っていたペンを器用にクルッと回し、
そのペンでビシッ!とコウを指す。

 コウ「な、何故それを!?」
 ヨシコ「アタシの情報網を舐めないでよね〜♪」ニヤリ
 コウ「・・そ、そうだった・・・」
   (小さい頃から話のネタの9割はヨッシー発信だった・・・)
 ヨシコ「な〜んてね。お帰り、コウ」
 コウ「もぉ〜・・」



―――二人はほんの少しの間、思い出話に浸る。



その後、ヨシコは棚から一冊のファイルを取り出し、机に広げる。

 コウ「・・・『三枝の友』?」
 ヨシコ「6年半前の校内新聞よ」
 コウ「6年半前って言ったら・・・・・」
 ヨシコ「そ、アタシ達が三枝女子に憧れるキッカケになった・・」


校内新聞には、一面に当時の騎士様の活躍が書かれている。

“騎士様、避難遅れた2人の少女を救出!”

その見出しに、二人は顔を見合わせる・・

 コウ「この2人の少女って・・」
 ヨシコ「アタシ達w」
 コウ「・・・今でも覚えてるよ・・小4の秋・・・・・」
 ヨシコ「うん。で、コウはちゃんと三枝女子に来たし
     アタシは騎士様にはなれなかったけど、それを追いかける今の部にいる」
 コウ「なんかそういうのって素敵・・!」
また自分の世界にうっとりしそうなコウ・・

 ヨシコ「何ならこの記事、コピーしたげよっか?」
 コウ「ホント!?」


コピー機を操作しながら、ヨシコは話を続ける・・
 ヨシコ「・・そういえば過去の校内新聞見てると
     この号辺りから、騎士様関連の記事が一気に増えてるのよね〜」
 コウ「ふ〜ん・・」
半分返事でその他の校内新聞に目を通すコウ

 ヨシコ「最初の頃は、校内や彩花街の行事情報ばっかりだったのに・・
     年度を重ねる毎に騎士様度が濃くなって、
     今じゃ『三枝の友』イコール“騎士様情報誌”状態w」
 コウ「って、今はヨッシー達がその新聞作ってるんでしょ?」
 ヨシコ「アハハ、まーね。
     1っこ上の先輩が卒業したから、今年からアタシが部長。
     1年の新しい騎士様も今週中には決まるだろうから、色々大変よ〜」
 コウ「でも楽しそうだね」
 ヨシコ「わかる?」
 コウ「うんw。
    ・・・そういえば他の部員の人は・・・?」
 ヨシコ「新入生の勧誘。
     コウも特に入りたい部活がなかったら、ウチに来なさいな
     ビシビシ使ってあげるからw」
 コウ「ハハ・・考えとく・・・」








―――――――――――――――








その後、どんな部活があるのか・・程度の軽い学校散策を一人で済ませ

日が傾き出した頃。


帰路につこうと、駐輪場から自転車を取り出すコウ。






―――――校門前。

自転車のペダルに片足をかけ、助走を付けようとした瞬間・・

 ?「校門前からの下り坂を、自転車に乗って下りるのは校則違反ですよ!」

声のした方を振り向くと、
ポニーテールの女生徒が、左手を腰にあて
こちらを睨むような鋭い目で見ている・・・。

 コウ「えっと・・」
見ると女生徒の腕章の色は1年のものだ。


 1年生「後輩の手本となる先輩がそれでどうするんですか?」
 コウ「あ、ご、ゴメン・・」
   (そんな校則があるなんて全然知りませんでした・・)
 1年生「以後気を付けて下さい」
 コウ「は、はい・・・」

言う事だけ言った少女は、髪を靡かせながらくるりと回り
校内へ入っていった・・・・・



その時、一瞬強い風が吹き
少女の後ろ姿を、舞った桜の花びらが演出する・・・






 コウ「・・・・・・・」






コウは思わず少女に見とれていた・・・

その心に、“生意気だ”などという感情は微塵もなかった・・。

彼女の引き締まった容姿、凛としたオーラ・・
なにより、間違った事に対し、先輩にだろうと意見できるその姿勢には
軽い感動すら覚えていた・・・・・。


そんな中、ふとヨシコが言っていた
“1年の新しい騎士様”というフレーズが脳裏を過ぎる・・・・・。




 コウ(・・・・・・・・・・)




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by: へろ
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