彩花の騎士
ストーリー 02

自転車を駐輪場に止め
コウはスミとタエコに連れられるまま、校舎の2階へ・・

 スミ「3人とも同じクラスだといいね」

そんな会話を交わしながら、
2年の教室前の廊下に貼り出されたクラス表で、自分達の名前を探す。

 タエコ「アタシC組だ」
 スミ「私も」
 コウ「私も!」
と同時に、3人で顔を合わせながらニンマリとする。

 タエコ「アッハッハッ!、これ出来すぎじゃない?」




――――――――――――




教室に入り、しばし雑談にふけっていると・・

・・ガラガラガラ・・


 コウ「っ!?」
一瞬言葉を失うコウ。

入って来たのは、バインボインのナイスバデーを
これでもかと主張するようなパッツンパッツンな服に、白衣を重ねた派手な女性。

 女性「好きなところでいいから適当に座れ〜」
登場するなり、生徒達にそう促がす女性。



――――――



その派手な女性は、
黒板に『浦沢 キリア』と自分の名前を雑に書き殴る。

 キリア「ま、2年なら『科学』の授業で知ってると思うが・・
     今日からこの2-Cの担任になった、浦沢だ。以上」

 コウ「・・・・・」
そんな淡々と進む状況に、呆気に取られているコウを
「ん?」という表情で見つめるキリア・・

 キリア「あ〜そうだった・・」
そう言いながら、コウに対して軽く手招きをする。



コウが恐る恐る教壇の横に行くと・・
キリアは彼女の肩に手を置き
 キリア「みんな、転校生の・・え〜っと・・・・・」
 コウ「・・・・・あ!、美里です。美里コウです」
 キリア「そう、美里だ。みんな仲良くな。
     学校の詳しい事は〜〜・・・・・・・・」
語尾を伸ばしながら、生徒達を見渡し
案内役の適任を探していると・・

スミが手を上げ、その任を買って出る。


そんなスミを見てコウは、小さく微笑む・・。

それは彼女が顔馴染だからという安心感とは少し違う。
スミという少女は、昔から面倒見が良く、しっかり者で、回りから頼られる・・
そう、“委員長体質”というやつであり
自分がもし旧友でなかったとしても、彼女は手を上げていたであろう・・
そんな「相変らずさ」に対して思わず出てしまった微笑みだ。


 キリア「お!、ウチのクラスには墨田がいたか!
     ラッキーラッキー♪」
 タエコ「ラッキーって先生、早くも面倒事任せる気満々じゃないですか」
 キリア「伊倉、減点1な」
 タエコ「はぁ!?」
 生徒一同「アハハハ・・」


 コウ(・・・ちょっと恐いと思ったけど、
    タエチーの感じからして、生徒受けは良さそうな先生かも・・・)






――――――――――――――






始業式。

体育館にズラリと並んだ全校生徒と教員。


壇上には深紅の髪を束ねた、凛とした女性が
新年度の心構えなどの話をしている。
この私立三枝女学園の設立者・・『三枝 シマ』校長だ。


実は彼女、ちょっとした有名人で・・

30年前のムゥリアン戦争のさい、
人型汎用兵器「ディアース」で始めて実戦を行なった
『10人の乙女達』(通称:鋼の乙女)の一人であり、
その後も最前線で数多くの勝利をもたらせた女傑なのである。

そんな校長に憧れ、この学校を選んだ教員や生徒もおり、
現役を退いて尚、そのカリスマ性は色褪せていない。

ゆえに本来なら苦痛の代表格ともいえる“校長の長話”でも
この学校ではダレる事もなく、引き締まった空気が体育館を支配していた・・・。



 コウ「ムフー!、ムフー!=3」
   (流石!、鋼の乙女ってところね!!)
本人は気付いていないが、興奮のあまり鼻息がかなり荒くなっているコウに
隣の生徒が下を向いて肩を震わせていた

 スミ「ちょっとコウ、鼻、鼻息・・!」
前列に立つスミが振り返り、小声でコウに注意する。
が・・

 コウ「?」
 女生徒「ぶふっ!」
天然のコウに、思わず吹き出してしまった隣の生徒を端に
回りの生徒達が連鎖的に、必死に声を殺して笑い出す。


 先生「そこ!、静かにしなさい!!」







――――――――――――――







始業式、終了後・・・・・

教室。


 コウ「あ゛ぁー!、恥ずかしい!!、もぉ死にたい!!!」

頭を抱え、机に塞ぎ込むコウだが
この鼻息事件(?)のお陰で、
クラスに自分という存在を印象付け、馴染む事が出来たのは確かである。



―――――――――



 キリア「―――じゃあ今日はこれで終わりだ。
     明日は身体測定をやるんで、
     体操服と筆記用具だけでいいからな。では解散」


各々席を立ち、帰り支度を始める生徒達。

コウの元には数名の女子達が集まってくる・・
 女子A「美里さん、これから校内回るんでしょ?。
     よかったらウチの部活も見ていかない?」
 女子B「運動部は2年からじゃ、ある程度経験ないとキツイわよ。
     それよりウチの天文部に・・」

まさに“転校生の初日”を実感しているコウであったが・・
ふと、教室の入口付近でキリアとスミ、タエコが話し込んでいるのに気付く。

そんなコウの目線に気が付いた、一人の女子が問う
 女子C「美里さんって『騎士様』の知り合いなの?。
     朝からずっと話してたみたいだったけど・・・?」
 コウ「騎士様?」
 女子D「あぁ騎士様って言うのはね・・
     学校案内のパンフにも書いてあったと思うけど、ウチの学校って
     ムゥリアンと戦う『防衛団』をやってるでしょ・・」

彼女の説明しようとしている事は既にコウも知っていた。



「防衛団」とは・・
月からのモンスター『ムゥリアン』が街に襲撃してきたさいに、
防衛や、円滑な避難誘導などを行なう組織の事であり、
その最大の特徴は、“民間で自発的に結成した組織”という点にある。

多くは、“自治会の「消防団」などが発展したようなもの”だが
学校や、学生が運営する防衛団も少なくはない。

私立三枝女学園もその一つだ。



『三枝女子 防衛団』。
三枝女子の全校生徒、約300名のうちから選抜された
20数名からなる防衛団。

地域柄それほど戦闘頻度は高くないとはいえ、
彩花街の安全のため、身を呈して戦う乙女達を、
皆は敬意をこめ『騎士様』と呼んでいる・・・。



・・・ここまでの事は、
この学校に入学する者、彩花街で暮らす者にとっては常識であり
コウの疑問はその事に対してではなかった・・。


何故、スミやタエコが“騎士様”と呼ばれているのか・・・・・?


 女子D「――――だからスミさんとタエコさんが・・」
 コウ(騎士様?、スミちゃんとタエチーが・・・???。え・・)
   「えぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!!!!」

大声と共に、机を叩きながら勢いよく立ち上がるコウに、
その場にいた全ての人間が、言葉も動きも止め、彼女に注目する。


コウが驚くのも無理はない・・
彼女にとって、この学校を希望した理由の一つに
その“騎士様”への憧れがあったからであり、
そんな憧れの対象に、旧友が知らない間になっていたと言うのだから・・・。


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by: へろ
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