彩花の騎士
ストーリー 63
同日、夕方・・・
陽も傾き、少し薄暗くなってきた道を
てくてく一人歩くフミコ・・・
フミコ(―――――・・・・・意外と楽しかったな〜・・・・・・)
学校でのバードウォッチング【※59話】を終えた帰り道である。
フミコ(・・・桐原先輩(カナコ)は途中で野良猫ウォッチングに変わってたけど・・・;
あれも結構楽しそうかも・・・)
フミコ(・・・・・たぶん私って、観察自体が好きなのかな・・・?
先輩(コウ)とかも見てて飽きないし・・・・・(=v=))
そんな事を思いながら、
自分の今まで気付いていなかった一面を発見するフミコ。
それが狙撃手として優れた性質であるという自覚こそまだないが・・・。
・・・・・足を進め、自室のあるアパートが見えてきた時だ・・・
???「―――――・・・おぉ〜い、フミコちゃ〜ん!」
後方から聞き馴染みのある声が彼女を呼ぶ・・・
フミコ(・・・・・ん?、先輩?)
振り返り、こちらに駆け寄ってくる人影に目を凝らす・・・
空の明るさが落ち、シルエットでの認識だが
間違いなくそれはコウである
が・・・
フミコ「・・・!?ビクゥッ!?!!!」Σ(@_@川)ぎょっ
近づいて来たコウの姿に驚くフミコ
コウ「―――・・・今帰り?」
フミコ「・・・・・」
その問いに、唖然の表情で返す・・・
コウ「・・・?」
それもそのはず・・・
コウの左手に握り緊められたのは竹刀。右手には風呂敷。
眼差しはキリリッと濃く、眉毛はジャギジャギに太く勇ましくなり
鼻の頭にはバンソウコウ、頬にはバッテン傷・・・・・
まるでタイムスリップ上京して来た、昭和少年漫画の主人公のようになったコウの姿。
フミコ「・・・ど、どちら様ですか・・・???;(・q・川)」
コウ「やだな〜、私だよフミコちゃん(^▽^メ)」なに言ってんのw
フミコ「たった1日で何があったんですか先輩!?!;」
コウ「ちょっと剣の特訓をね・・・!。わかる?私のパワーアップb」ニッ
フミコ「・・・・・・・・;」
(・・・どんな特訓をすればそんな事に・・・・・;)
コウ「・・・あ、そうだ!(・0・)」
キュポン!=3、とガスが抜けたようにいつものコウの姿に戻る
フミコ(ホッ・・・。普段の先輩に戻った・・・;)何だったの今の?幻?;
コウ「さっきイサミちゃんのお母さんが、おかずいっぱいくれたんだ〜♪」
右手に持っていた風呂敷を前に出して見せる・・・
コウ「一緒に晩ご飯食べようよ(^^)」一人じゃ食べ切れない量だし
フミコ「は、はぁ・・・」
(・・イサミちゃん・・・。・・・石橋さんの・・お母さん・・・の事かな?;)
コウの唐突な状況&話に、とりあえず返事を合わせるフミコ・・・
・・・
【アパート:コウの部屋】
フミコ「―――――・・・そんな事があったんですね・・・」
イサミ宅にて剣術特訓を終えたコウは・・・
その後のちょっとした会話の流れで、「一人暮らしである」と話すと
イサミ母より沢山の夕飯のおかずを貰った。
・・・という経緯を話しながら
そのおかずをレンジでチンして器に盛っていくコウ、
それをテーブルに運ぶフミコ。
慣れた手際で夕飯の用意をしていく2人・・・
コウ「―――・・・合宿前にまた筋肉痛にならないか心配だよ(^^;)」
フミコ「流石にもう大丈夫じゃないでしょうか」日常的に運動もしてますし
コウ「だといいけどw」
ながら会話も、お互い今日の出来事が濃厚だったため
話題には事欠かない様子。
フミコ「・・・でも“さっき”の先輩、一体何事かと思いましたよ;」
コウ「そ、そんなに・・・?(・o・;)」
フミコ「はい。あのまま行ったら・・・
制服の袖がギザギザに引き千切れて、つばの割れた学帽もかぶってましたね・・・」
コウ「それ騎士様通り過ぎて番長じゃんっ!!(>0<;)」レトロスタイルの
フミコ「クスクス・・・w。あと竹串も咥えて、下駄も履いて下さい」
コウ「もはや原形わかんないよっ!;」
そんなやり取りをしている間に、テーブルの上には
彩りの良い惣菜が並び、夕食の準備が完了する・・・。
コウ「―――じゃ、」
コウ&フミコ「・・・いただきまーす!」
フミコ「ムグムグ・・・この筑前煮、美味しいですね」
コウ「うん。・・・家族といる時は、筑前煮ってハズレメニューなイメージだったけど・・・
今食べると有り難味が分かるよね〜(TムT)モグモグ」
フミコ「フフ・・(^^)」
フミコ「・・・・・そういえば、風呂敷の底に
DVDみたいなのが一緒に入ってましたけど・・・映画でも借りてきたんですか?」
コウ「あ!、そうだった!」
フミコの言葉で思い出したように、それを持ってくる・・・
コウ「竹刀と一緒に、イサミちゃんのお父さんから貰ったんだ・・・」
そのDVDをフミコに手渡す
フミコ「ども・・・」
受け取り、パッケージを見ると・・・
達筆な文字で“剣術指南 序ノ巻”と書かれている
コウ「今日やったおさらいが出来るDVDだって(^^)」モグモグ
フミコ「・・・すべての剣士入門者に送る、ハウトゥーDVDの決定版・・・・・」
裏面に書かれた謳い文句を読む
フミコ「・・・先輩、近接戦闘に変更するんですか?;」
コウ「しないしない。・・・・・竹刀だけに」ニヤリ
フミコ「オヤジギャグ、減点1です」どや顔やめて下さい
コウ「アハハw。
ディアースに乗るなら役立つんだって、剣術の基礎って・・・」よく分かんないけど
フミコ「そうなんですね・・・」
コウ「うんうん」ムグムグ
話しながらも箸が進む2人・・・
フミコ(・・・・・やっぱり私は賑やかなのより、
先輩とこうしてまったりしてる方が合ってるな〜・・・(=v=))モグモグ
・・・・・
・・・その夜・・・
どこかの【旅館】の一室・・・。
スポーツブラ&ショーツ姿のアユミ先生が、
窓際の出っ張ったスペース・・広縁に置いてある
一人掛けソファーにあぐらで座り、腕を組んでいる・・・
アユミ「―――・・・・・う〜む・・・案の定欲しくなってしまった・・・・・;」
目線の先には、小さなテーブルの上に広げられた、
“ディアース”やその武装が載ったいくつかのカタログ。
・・・とそこに・・・
部屋の出入口の戸が開き閉まる音の後・・・
サナエ「・・・ふぅ〜・・・いいお湯でした(^^)」
浴衣姿のサナエ先生が登場。
普段きっちり纏めている髪を、大雑把に結い
湯上がりの熱りも合わさって、色っぽさが3倍増した姿で・・・
アユミ「ずいぶん長風呂だったな」
サナエ「貴方がカラスの行水なんでしょ(^^;)」
アユミ「昔の癖だw」
サナエ「せっかくの温泉なのに勿体無い・・・」
アユミ(・・・・・サナエがいたから早々にのぼせた・・・とは言えんな(=ム=;))
バッグにポーチをしまうサナエ先生の横顔を、目を細めて見る・・・
アユミ(・・・・・・・・・・・・・)
そのまま、サナエ先生が垂れてきた横髪を耳に掛け直す仕草に見惚れる・・・
サナエ「―――・・・で?、何見てたの?」
アユミ「ビクッ!?;」
サナエ先生は荷物を手短に整え、立ち上がり、
広縁のアユミ先生の元にやって来る・・・
アユミ「・・・ん?あ、あぁ・・・・・・・・ディアースのカタログ・・・;」ボソ・・・
サナエ「もぉ・・・;。まだ自分専用のが欲しいとか言ってるの・・・?」
呆れた表情
アユミ「い、いや、見てただけだ・・・;。見るのはタダだろ?」
サナエ「ならいいんですけど・・・」
アユミ「しかし大川中隊長が昔の好で軍の払い下げを格安で・・・」ボソボソ
サナエ「置く場所は?維持費は?」
アユミ「だ、だな・・・・・(=_=;)」
(うぅ・・・何も言い返せん;)
サナエ「・・・ハイ、この話はここで終わり。」
現実的なワードで、アユミ先生のささやかな盛り上がりをサクリと区切り
部屋の方に戻って行く・・・
アユミ「・・・;」
仕方ないという表情をしながら
テーブルの上の数冊のカタログを閉じ、纏めた後、それを持って立ち上がる。
一方、サナエ先生は備え付けの小さな冷蔵庫を開け、
冷やしておいた数本の缶飲料を選びながら・・・
サナエ「―――・・・ねぇ?
明日の午前中までは、私のワガママ・・・聞いてくれるんでしょ?」
アユミ「無論だ。
昨日からまる一日、私の訓練【※50話】に付き合ってもらったんだからな」
広縁から部屋に戻りながら答える
アユミ「・・・だが酒はなしだぞ。
昼過ぎにはアイツ等の合宿の前に街(彩花街)に戻るのだかr・・」
と言いながらサナエ先生の方を見ると・・・
サナエ「・・・ふぅ〜・・・♪」
可愛らしい大人ピンクの缶をゴクゴク飲み干して、満足の一息
アユミ「・・・・・時すでに遅し・・・か;」それ間違って買ったチューハイ・・・
サナエ「ん?、大丈夫よw
アルコール低いから明日には残らないもの(^^)」ウフフ
ほぼ空になった缶を小さく振って微笑むサナエ先生
アユミ「いや・・・そういう事ではなく・・・・・」
(・・・・・その笑顔・・・確信犯だな・・・;)酒を買物カゴに忍ばせた時点から・・・
・・・数分後・・・
部屋に散らかるカタログ・・・乱雑に脱ぎ捨てられた浴衣・・・
既に部屋に並べて敷かれていた2組の布団の上で、
一糸まとわぬ姿で熱く愛し合う二人・・・・・
アユミ(―――・・・この状況下でアルコールという後押しが入ったサナエは・・・)
アユミ「んっ・・・!、んんっっっ!?!/////」
サナエ「アラアラ、凄いわね・・・v」
アユミ(・・・わ、私を徹底的に骨抜きにするんだ・・・・・;)明日は寝不足だ・・な・・・(=▽=;)
・・・・・そんなオトナの時間はさておき・・・・・―――――――
・・・・・
フミコが帰った後の、【コウの部屋】。
お風呂にお湯をはっている待ち時間・・・
コウ「・・・見るだけでもイメージトレーニングになるって言ってたし・・・
おさらいおさらい・・っと」
イサミ父より貰った剣術指南DVDをプレーヤーに入れる
コウ(そういえば、イサミちゃんに帰り際・・・
このDVDは見ないで下さい!って、小声だけど鬼の形相で言われたけど・・・;)
そんな事を思い出している最中、オート再生で映像が流れ始める・・・
コウ「あ、はじまっちゃった;」まぁいっか
モノクロの時代劇映画のような渋カッコイイOPが30秒・・・
コウ「おぉ!!(☆▽☆)=3」
の後、画面が暗転して切り変わり・・・
道場のような場所に並んだ門下生役のキャスト達の前に現れたのは、
指導役・・・イサミ父、本人。
コウ「おぉぉ!!、おじさん主演!w」イサミちゃん、この事だったのか〜w
・・・が、しばらくしてコウのそれは少し外れる・・・・・
妙に饒舌に話し出すイサミ父、
選曲ミス全開の軽快でリズミカルなBGM・・・どこかで見た構図・・・・・
コウ「・・・・・・・(=v=;)」
イサミ父『―――いいぞ!その調子だ!!、避けて捌いて斬る!避けて捌いて斬る!』
♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪
コウ(・・・・・・・あ、あぁ・・・
ビ●ーズブートキャンプの影響、受けちゃったパターンですね・・・;)
コウ「これはイサミちゃんには見なかった・・って言っとこう・・・(=u=;)」
イサミ父『っせい!、っせい!、っせい!、っせい!、っせい!、っせい!』
♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪、♪ズズチャン♪
コウ(・・・・・それにしても、おじさん・・・ノリノリだな〜・・・・・;)別人だよ・・・
給湯器「―――――・・・お風呂が沸きました。」
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