彩花の騎士
ストーリー 56

『石橋 家:奥の部屋』


日中にも関わらず、ほのかに暗い和室特有の明るさ・・・

畳張りのその部屋に、大きな机越しに鎮座するは

イサミの父!。


整えられた紳士な髭が似合うダンディーな中年男性ではあるが

着ている羽織袴が、厳格さを際立たせ
腕を組み、目を瞑り眉間にしわを寄せるその姿は
凄い威圧感を相手に与える・・・。


そんなイサミ父の前に、机を挟んで正座する
イサミ、コウ、ヨシコ・・・・・

イサミとコウが2分するかたちで真正面に座り、
ヨシコは2人を見守るように、少し距離を置いて斜め後方に座る。



 イサミ父「―――――・・・・・成る程・・・。合宿か・・・・・・・」


 イサミ「・・・・・」
 コウ「・・・・・」ゴクリ・・・




この重苦しい空間に加え、言葉一つ一つになかなかの溜めを作るイサミ父に、
コウ達の緊張も上昇する一方だ・・・



 コウ(・・・た、確かにイサミちゃんも恐れるわけだ;)この威圧オーラ凄い!;




コウは少しでも緊張を和らげようと、
目を瞑っているイサミ父から視線を外す・・・





 コウ「・・・・・」

手を付けようにも付けれる空気ではない、机の上に置かれたお茶・・・

侍が鬼を一刀両断する様が画かれた掛け軸・・・

鹿の角らしきものに飾られた日本刀・・・

コウの視線が、部屋のあちこちを漂う。




・・・最後に、イサミ父の頭上に飾られた額縁に目を向ける・・・・・

達筆な四文字が掲げられている・・・・・“心頭滅却”。


 コウ(・・・ま、まさに今の私に向けなきゃな言葉だよ・・・!;)

そんな事を思い、改めてイサミ父に視線を戻す・・・・・



 コウ「っ!?!!!!!」ビクゥッ!?;

既に目を見開いていたイサミ父とドンピシャで目が合う・・・




 イサミ父「・・・・・・・美里くん・・・だったね?」ギンッ!
 コウ「は、ははい!!;」

 イサミ父「・・・キミは今、何を見ていた?」
 コウ「!、しっ、心頭滅却です!!(@□@;)」あたふた


 ヨシコ(コウのアホー!、なに言ってんのよー!!;)余所見を自白して

 イサミ(・・・・・;)
イサミの顔が更なる緊張に包まれる・・・




 イサミ父「・・・ほぉ・・・・・。
      今時の女子高生は漢字も読めないと聞いていたが・・・・・」

 コウ「・・・・・きょ、恐縮です(@@;)」←マンガで得た知識


 イサミ父「・・・では・・・・・その意味は分かるかね?」


 コウ「え、えっと;あの・・・
    こ、心を無にすれば・・だ、だいたい大丈夫・・とか・・・その・・・;」
 ヨシコ(端折りすぎよーーー!!)



 イサミ父「・・・・・フッ・・・・・・・だいたい・・・か・・・・・・」




 ヨシコ(これ怒りスイッチ押しちゃったんじゃないのっ!?;)
 コウ「・・・・・(@v@;)」


 イサミ「・・・・・」
目を瞑り、諦める覚悟に入ったイサミ・・・





 イサミ父「・・・・・フハハ、それは良い!」
 コウ&ヨシコ「!?」

 イサミ(ち、父上が笑った・・・!?)






 イサミ父「・・・では改めて聞こう・・・・・」


 イサミ父「・・・イサミよ、お前は何故に合宿へ行きたいのだ・・・?」

 イサミ「!?。は、はい!、己を鍛えるためであります!」

 イサミ父「・・・・・うむ。良い心掛けだ・・・」

その言葉に、イサミとコウの表情から緊張が消えかける・・・


 イサミ父「・・・それだけか?」
 イサミ「はいっ!!」
自信に満ちた返事





 イサミ父「・・・・・・・・・・不合格だ。」

 イサミ「ふ、ご・・・っ!?!!!!!!;」ガーーーン・・・(@△@川)
 コウ(えぇぇぇぇえっ!??!!!!!;)




イサミ父の視線が、イサミからコウへ変わる・・・




 イサミ父「・・・・・美里くん。キミは何故この話に・・・イサミに同行した?」
 コウ「!?。・・・わ、私を頼ってくれたからです!;」

 イサミ父「ほぉ・・・イサミがキミをかね?」失礼だが・・・

 コウ「は、はい!;」

 イサミ「・・・・・・・・」
顔面蒼白で話があまり耳に入ってこないイサミ・・・。






イサミ父は一度目を瞑り・・・・・・・・しばしして再び目を開ける・・・・・




 イサミ父「・・・・・美里くん。・・・キミは“縁”というものを信じるかね?」

 コウ「・・・・・円・・・・・お金、ですか・・・?」ニヤリ・・・

 イサミ父「ゴホッゴホッ;・・・・・い、いや、御縁や縁結びの方の縁だ」おもしろいねキミ;

 コウ「す、すみません;。
    ・・・・・私は・・・はい、信じます」
 ヨシコ(この状況でよくそんなリアルボケ出来るわね!;)逆に凄いわ!


 イサミ父「・・・そうか・・・・・。」



 イサミ父「・・・・・私にとってね、5月の2日とは特別な日なのだよ・・・」
 コウ「?」


 イサミ父「・・・キミは“大摩半島奪還戦”という戦いを知っているかね?」

 コウ「・・おおま・・・・・。は、はい・・・確か中学の授業で・・・」

 ヨシコ「・・・5月2日・・・・・・・そっか!」
話を聞いていたヨシコも入る

 イサミ父「・・・うむ。28年前の5月2日、
      ムゥリアンより我が国の南部を取り戻した日だ・・・」


 イサミ父「・・・私はあの作戦で、とても大切な縁を持つ事ができた・・・」
 コウ「・・・・・」


 イサミ父「その縁は今も続いている・・・・・」
 コウ「・・・・・」

 イサミ父「・・・毎年、その席に息子や娘を連れて行くのも
      そのような巡り合わせを確認するためなのだ・・・・・」

 コウ(そ、そ、そんなイサミちゃん家の大事な行事だったの!?!!;
    私なに説得お任せみたいな顔でノコノコと来ちゃったんだ!!!(@□@川)ひぃ)





 イサミ父「・・・・・美里くん・・・」
 コウ「っ!?、は、はい!!;」

 イサミ父「縁とは即ち、物事や人と人との関わり合いから生まれる不思議な力だ・・・」
 コウ「・・・」


 イサミ父「今まで私の言う事に従うだけであったイサミがキミを頼り、
      それに応えたキミと共にここにいる・・・これもまた・・・・・・・」
 コウ&イサミ「・・・」






 イサミ父「・・・・・・・・・・」







次の言葉が出ない事を不思議に思い、イサミ父の顔を見る3人・・・





 イサミ父「・・・・・・・・・・!!」(〒ム〒)ダァァァーーーーー!!!
目から滝のような涙を流しているイサミ父・・・






 コウ&イサミ&ヨシコ(なんでぇぇぇーーー!?!!!Σ(@□@川))


 イサミ父「・・・・・イサミよ!!、ついにお前にも出来たのだなっ!!!(〒□〒)」
 イサミ「えっ!?・・・・・?」

 イサミ父「私は嬉しいのだっ!!!。知り合いひと月としない相手に対し・・・
      その親に直接話し合いに来れるような・・・!
      ここまでやってくれる人がお前にも出来たとっ!!」(〒□〒)ダァーーー!!

 コウ&ヨシコ(まさかの感情のアクセル一気にフルスロットル!?;)

 イサミ「ち、父上・・・;」まず涙を・・・
思わずポケットからハンカチを取り出し、父に渡すイサミ




・・・




 イサミ父「・・・・・・・・お見苦しいところを御見せしたね・・・・・・・」
腕を組み、通常の威厳モードに戻ったイサミ父

 コウ&ヨシコ(いやホントですよ・・・;)ビックリです
 イサミ(あのような父上ははじめて見た・・・・・;)



 イサミ父「・・・・・イサミよ・・・」ゴホン・・・
 イサミ「っ!?、は、はい!!;」

 イサミ父「・・・お前は良き先輩と巡り合ったのだ・・・
      合宿に行き、少し学んで来なさい・・・・・。」



 コウ&イサミ(・・・・・?(・o・))
キョトンとする2人・・・



 イサミ「!・・・そ、それはもしや・・・合宿に行ってもよいと!?」

 イサミ父「・・・うむ・・・・・」
湯飲みをとり、渋くお茶を一口すする・・・



コウとイサミが顔を見合わせ、
言葉こそないものの、「やった!」という表情・・・



それを見終えたイサミ父は、湯飲みをゆっくり置き・・・

 イサミ父「・・・・・美里くん・・・」
 コウ「は、はい!」
慌ててイサミ父に向きを戻すコウとイサミ



 イサミ父「・・・・・不束な娘だが・・・どうぞ宜しく頼む。」
 コウ「!?えあ、は、はいっ!?;」

 ヨシコ(何で「娘さんを下さいお義父さん」みたいになってんのっ!?!!!(°□°;))




 イサミ(・・・・・あの父上を・・・・・!。
     美里先輩・・・やはりこの人は只者ではないのかっ!?!!)
イサミからの熱い視線・・・

 コウ(な、何だかよく分からないけど;・・・結果良ければ全て良し!だよね!?(@u@;))





 ヨシコ(・・・・・ハ、ハハ;・・・でも・・・そっか・・・・・
     答えはどんな言葉より、ここに来たっていう事だったのね・・・!)

コウの後ろ姿を見て、小さく微笑むヨシコ

 ヨシコ(お人好しで、変に真面目で責任感の強い性格・・・そこから生まれる行動力・・・)



ようやく机の上のお茶を飲んでもいい空気となり、それに手をつけるコウ・・・
 コウ(緊張で喉カラッカラだよ(@w@;))



 ヨシコ(アタフタしてるから隠れちゃってるけど・・・
     考えたら他人の親を説得に行くって・・・結構なハードルよね;)

 ヨシコ(・・・地味でも純粋に誰かのために・・・か。
     形違えどそれってまさに、ヒーロー(騎士様)の本質じゃない!w)

myメモ帳にペンを走らせるヨシコ・・・その手はとても軽快だ。




 イサミ父「・・・・・ふむ・・・では餞別代りに、2人に今から稽古をつけてあげよう・・・」
 イサミ「はいっ!!」


 コウ「・・・・・・・へ?(・▽・;)」






《 ヨシコ'sメモ【備考】 》
侍で軍人気質なイサミさんが、どうして大摩半島への旅行を拒むのか・・・
後でしつこくアタシの話術で本人から聞き出したところ
どうやら5月2日はご両親と、その友人の結婚記念日でもあるそうで
実のところ、そっちがメインらしいわ(←大体察した;)。
この話は、イサミさんやおじさんの名誉のため、アタシの胸に閉まっておこう・・・・・。



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by: へろ
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